筆者はこれまで20年近く、中国大陸・台湾・東南アジアの中国語曲を聴いてきました。
その中でも特に心をつかまれたのが、台湾を代表するロックバンド 五月天(Mayday, メイデイ)。
五月天の魅力は、耳に残るメロディーと人生に寄り添う歌詞。
外国のバンドながら、日本人にも共感しやすい感覚があります。
歌詞の多くは中国語(一部は台湾語)なので、中国語学習の題材としても人気です。
なかでも「夢を見る勇気」「行動することの大切さ」「自分にとって大切なものを見極めること」を歌った曲は、聴く人の背中をそっと押してくれます。
今回はその中から、前向きになれる・元気が出るおすすめ曲4選 を紹介します。
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第二人生
楽曲について
2011年にリリースされたアルバム『第二人生』の表題曲。
このアルバムは「末日版」と「明日版」という2種類のパッケージで発売され、未来に対する異なる視点を提示しました。五月天らしい大きなテーマ性と、ロックバンドとしての王道サウンドが融合した楽曲です。
歌詞の主題
歌詞は、疲れ切った朝の描写から始まります。
你聽到鬧鐘聲 你推開了抱枕 你醒在 無盡的 疲倦的人生
(目覚ましの音、抱き枕を押しのけ、果てしなく疲れた人生に目覚める)
英雄も奇跡も現れず、人生を変えるのは自分しかいない。
「期待一趟旅程 精采萬分 你卻還在等(素晴らしい旅を期待しながら、まだ待っている)」というフレーズが繰り返し、行動しないまま時間を浪費する危うさを突きつけます。
そして歌詞の中盤では人生を旅路に例えます。
第一站叫天真 第二站叫青春 下一站 的名字 等你去確認
(最初の駅は「天真」、次の駅は「青春」、その次の駅の名前は、あなた自身が決める)
ここで「第二人生」というタイトルが真の意味を持ちます。
次の駅に名前を与えるのは自分自身。つまり「人生を新しく始め直す権利は、誰にでもある」という強いメッセージです。
私自身にとっては、この「第二人生」という言葉が、大学院留学の挑戦そのもの。安定を続ける道もありましたが、この曲に背中を押され「次の人生のタイトルは自分で決める」と思えました。新しい挑戦に迷うとき、この曲が力をくれるのはきっと私だけではないと思います。
聴くたびに「今こそ行動しよう」と気持ちを奮い立たせてくれる、特別な一曲です。
MVについて
MVでは、俳優の邱彦翔が警察官・医師・不動産セールスマンなど、異なる職業の人物を次々と演じています。いずれの役でも表情はどこか疲れていて、単調な日々に閉じ込められているよう。
自らは動かず“きっかけ”を待ち続けています。
中盤、五月天の歌詞が背中を押すかのように、ついに彼らは行動を起こします。その瞬間、映像の色彩や表情が変わり、曲のテーマが鮮やかに浮かび上がります。
主演は台湾の俳優・邱彦翔(チウ・イェンシャン)。
スーパーマーケット「全聯福利中心」のイメージキャラクターとして「全聯先生」と呼ばれる一方、映画『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』(2011年)ではヒロインの結婚相手役を演じています。
👉 映画『あの頃、君を追いかけた』については、こちらの記事で紹介しています:

頑固
楽曲について
2016年にリリースされたアルバム『自傳』に収録。
タイトルの「頑固」は、意地を張るというより「信念を貫く強さ」を表しています。力強いロックサウンドとともに、“たとえ理解されなくても自分の夢を守り抜く”というテーマをストレートに歌い上げる楽曲です。
歌詞の主題
歌詞は、過去の自分と今の自分が向き合うように進みます。
我身在 當時你 幻想的 未來裡
(いまの自分は、あの頃の君が夢見た未来にいる)
夢を追う衝動が冷めてしまった現在に問いかけます。
「譲ってばかりの自分に後悔はないのか? 何を決して手放さないのか?」
そしてサビでは、たとえ傷ついても立ち上がる強さが歌われます。
一次一次你 吞下了淚滴 一次一次 拼回破碎自己
(何度も涙を飲み込み、何度も砕けた自分をつなぎ合わせる)
この「頑固」は、意地ではなく“信念を守り抜く強さ”。
私にとっても、この曲は大きな問いかけを突きつけてきました。
10年近くキャリアを積んできて「本当にこのままでいいのか?」と自分に問うようになった時期、特に強く心に響きました。それまでも英語・フランス語・中国語を細々と学び続けてきたけれど、本当の気持ちから目を背けていないか? 自分の価値観から逃げていないか?
―そんな葛藤に重なるように、この曲が「心の奥にいる頑固な自分」を呼び覚ましてくれたのです。
そして「頑固」は、単なる自己主張ではなく、誰にでもある“譲れないもの”をどう守るかを問いかける曲だと思います。自分の夢や信念に迷いが生じたとき、この歌は世代や立場を超えて響くはずです。
MVについて
MVの主人公は、大人になってもなおロケットを飛ばすという夢を追い続ける男性です。生活は苦しく、コンビニで弁当と雑誌を前に迷う場面もあります。選んでいるのは「宇宙雑誌」。一瞬のシーンですが、主人公の夢を象徴する重要な小道具になっています。
どんなに厳しい現実があっても彼は夢を諦めません。そのひたむきさはやがて周囲の人々に伝わり、彼を応援する輪が広がっていきます。そして彼らもまた、それぞれの「子供の頃になりたかった自分」を思い出していくのです。
物語の核心は、主人公のそばで共に夢を追いかける“宇宙服の人物”。その正体はMVの終盤で明かされます。実はそれは子供の頃の自分。夢を見ていたあの頃の自分が、いまの自分を励まし、背中を押してくれる―ラストシーンは歌詞の「心の奥にいる頑固な自分」と呼応するように描かれています。
主人公を演じたのは香港を代表する名優・梁家輝(レオン・カーフェイ)。
また、映画『我的少女時代(私の少女時代)』で知られる宋芸樺(ビビアン・ソン)をはじめ、台湾の実力派俳優たちが多数出演しており、豪華キャストでも話題となったMVです。
👉 映画『私の少女時代』については、こちらで紹介しています:

有些事現在不做 一輩子都不會做了
楽曲について
2011年にリリースされたアルバム『第二人生』に収録。三商美邦人壽(台湾の保険会社)のCMソングとして起用され、広く知られるようになりました。
タイトルの「有些事現在不做,一輩子都不會做了(今やらなければ、一生やらないままになる)」というフレーズ自体が強烈なメッセージとなっており、五月天の“行動を後押しする歌”を象徴する楽曲のひとつです。
歌詞の主題
歌詞はまず、時間が止まらないことを突きつけます。
就算暫停全世界的鐘 也停不了 一秒鐘
(世界中の時計を止めても、一秒は止まらない)
そして挑戦の痛みと後悔の痛みを並べて問いかけます。
跌倒以後有痛 後悔以後有痛 問你最痛會是哪一種
(転んだ痛みも、後悔の痛みもある。どちらが一番痛い?)
ラストでは「今やらなければ一生やらない」と迫るフレーズで締めくくられます。
每個渺小的理由 都困住自由 有些事情還不做 你的理由會是什麼?
(小さな理由が自由を縛る。今やらないなら、やらない理由は何だ?)
私自身も、この曲に何度も背中を押されました。
「やる後悔より、やらない後悔の方が残る」―そんな感覚を強く意識させられた時期があります。10年以上キャリアを積んで「人生は意外と短いのかもしれない」と気づいたとき、この曲の問いかけがまっすぐ胸に迫ってきました。
一度やらなかったことって、結局そのまま忘れてしまったり、一生手をつけないままになったりする。そう思うともったいないですよね。だからこそ「思い立ったが吉日」という考え方は、実はすごく大事なんだと思います。
言い訳はいくらでも思いつくけれど、今ここで動くかどうかが未来を決める。
この曲は、その決断の瞬間を思い出させてくれる大切な一曲です。
MVについて
この曲のMVでは、五月天のメンバーが保険会社のサラリーマンに扮しています。顧客のもとを訪ね、営業をしたり、地域の人々の生活に関わったりする姿がコミカルに描かれています。
保険会社(三商美邦人壽)とのタイアップらしい演出ですが、単なる宣伝映像にとどまらず、「平凡な日常を送る人々にも、それぞれの夢や挑戦がある」というメッセージが込められています。
印象的なのは、怪獣(阿信)が台湾の農村に営業に行き、転んでしまう場面。ささいな失敗ですが、その姿は“挑戦すればつまずくこともある”という現実を象徴しているように見えます。さらにその後、農家さんと一緒にとうもろこしを食べながら交流するシーンでは、人との温かいつながりが描かれます。
仕事の延長線上であっても、そこにあるのは「人と人とが支え合う関係」。コミカルで親しみやすい描写の裏に、「やらない理由を探すのではなく、まず動くこと」が新しい出会いや関係を生む、というメッセージが映し出されています。
將軍令
楽曲について
2014年にシングルとして発表され、映画『ライズ・オブ・ザ・レジェンド~炎虎乱舞~』の主題歌に起用された楽曲。
清末民初の武術家・黄飛鴻を題材にした作品にふさわしく、時代劇を意識した東洋的な旋律と勇壮なロックサウンドが融合しています。
まるで戦場に立つ将軍のように「戦いに挑む覚悟」を鼓舞する、力強いナンバーです。
歌詞の主題
この曲は、私にとって“戦闘モード”のテーマ曲でした。
留学やキャリアの挑戦といった大きな勝負どきはもちろん、日常でも「絶対に負けない」と心に火をつけたい瞬間に必ず聴いていた一曲です。
仕事で理不尽なことを言われたとき。語学試験の直前で気持ちを高めたいとき。
「くっそー!見返してやる!」と闘志を燃え上がらせたい場面で、この曲はブースターのように背中を押してくれました。
特に響くのがこの一節。
此生到盡頭 你是誰 曾怎麼活 他們說 就讓他們去說
生命如長風 吹過誰 的心頭
你想被記住 的那個名字 將會是什麼
(この命尽きるまで―お前は誰で、どう生き抜いたのか?奴らの言葉など放っておけ。
生命は長い風のように過ぎ去っていく。お前の名は、どう刻まれる?)
誰に何を言われても、自分の信念を貫く。その決意を胸に刻ませてくれるフレーズです。
さらに、
蒼空盼飛鴻 蒼生等英雄 我們顛沛千年依然還在等候
失去了土地 失去了天空 自問 不能失去什麼
(蒼空は大鵬の飛翔を待ち、蒼生は英雄を待ち望む。
千年の苦難を経てもなお、我らは立ち続けてきた。
土地を失い、天空を奪われても―自らに突きつける。
決して失うわけにはいかないものは、何か?)
という歌詞は、自分にとって絶対に譲れないものは何かを問い直してくれる。だからこそ聴くたびに闘志が燃え上がり、挑戦に向かう勇気が湧いてきました。
「將軍令」は、人生の将軍は自分自身だと教えてくれる曲。挑戦の場に立つとき、胸の奥から「まだ戦える!」と叫ばせてくれる、まさに“戦う応援歌”です。
MVについて
この曲には2種類のMVがあります。ひとつは映画『ライズ・オブ・ザ・レジェンド~炎虎乱舞~』の映像を使ったタイアップ版。そしてもうひとつが、台北の街中を舞台にしたパルクール版です。
パルクール版は、モノクロに近い薄暗い映像のなかで、街に造られた構造物を縦横無尽に跳び越えていく様子が描かれます。決められたルールや道筋に縛られず、障害物を突破していく姿は、曲のテーマである「自分の人生を自分で切り開く」ことを象徴しているように感じられるMVです。
日本語版について
この楽曲には、日本語版『YOUR LEGEND ~燃ゆる命~』(2015年6月17日に日本でデジタルシングルとしてリリース)が存在します。
五月天の楽曲としては珍しく日本語で制作された一曲で、いしわたり淳治氏が作詞を手がけました。
泥臭さを感じるほどリアルに「命を賭けた闘い」を歌い上げる原曲とは打って変わって、日本語版は「愛する人」「心で」「風となれ」といったフレーズが印象的。
熱量を持ちながらもより叙情的で希望を感じさせる表現になっています。
日本語版から入ってもよし、原曲と聴き比べてもよし。ぜひ両方を聴いて、自分に一番響く「將軍令」を見つけてみてください。
おわりに
今回は、聴くと行動へのモチベーションが上がる五月天の楽曲として、
「第二人生」「頑固」「有些事現在不做一輩子都不會做了」「將軍令」の4曲を紹介しました。
どの曲も、それぞれのタイミングで背中を押してくれる“応援歌”のような存在です。
聴くたびに「もう一歩踏み出そう」と思えるのが、五月天のすごさだと感じています。
もちろん、ここで紹介したのはほんの一部。五月天にはまだまだ名曲がたくさんあります。
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