海外大学院の出願時に必ずと言っていいほど求められるのが、CV(英文履歴書)です。
CVはいわゆる「英語版の履歴書」ですが、日本の履歴書と異なるところが多いのでどう書いたら良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の履歴書とCVの違い、記載すべき内容、フォーマットのルール等について、実例を引きながらご紹介します。
筆者は2023年9月からジュネーブの大学院に留学予定。他にもLSEを始めとする大学院に合格をいただいています。筆者も最初は作成方法が分からず悩みました。
CV(英文履歴書)の考え方
日本の履歴書との違い
まず日本の履歴書とCVの違いについて簡単に触れます。
「履歴書」というよりは「職務経歴書」に近いイメージです。
項目 | 日本の履歴書 | CV(英文履歴書) |
---|---|---|
フォーマット | 定型 | 自由(A4用紙裏表1枚程度) ※国により異なる |
写真 | 必要 | 不要 |
現住所・連絡先(電話番号&メールアドレス) | 必要 | 必要 |
生年月日・年齢・性別 その他学歴・職歴に直接関係のない個人情報 | 必要 | 不要 |
学歴 | ・学校名/学科名 ・入学年/卒業年 | ・学校名/学科名 ・入学年/卒業年 ・学習内容の詳細 |
職歴 | ・勤務先名 ・部署名 ・役職名 ・任期情報 | ・勤務先名 ・部署名 ・役職名 ・任期情報 ・各職歴で成し遂げたこと ・関わったプロジェクト |
免許・資格 | 必要 | 必要 |
趣味・特技等 | 必要 | 必要 |
志望動機・自己PR | 必要 | 不要(カバーレターに書く) |
経歴の記載順序 | 過去から最新に向かって書いていく | 最新から過去に向かって書いていく |
手書き or PC使用 | 手書き | PC使用 |
日本の履歴書とCVの最も大きな違いは定型の有無です。
またCVには作成者の実績をより詳細を記載する点や、差別につながる恐れがあるため現住所や連絡先以外の個人情報(年齢・性別・家族関係に関するもの)について記載しない点も特徴的。
以上の点から、日本語の履歴書を英訳しただけではCVとして認められるかたちにはなりません。
定型がないことから、海外ではウェブ上のテンプレートを使用してオシャレなCVを作成することも多いようです。例えばこのサイトで作れます。
ヨーロッパの大学院出願では「CV」と「レジュメ」はほぼ同じ意味合いで使用されるため、用語の違いはそこまで気にしなくても大丈夫です。大学院のウェブサイトに記載すべき内容が書いてある場合はそれに従えばOK。
CV(英文履歴書)のフォーマットと実例
CVには3つのフォーマットがある
CVには日本のような定型はないものの、書き方のセオリーはあります。
ポピュラーなのは「クロノロジカル」「ファンクショナル」「コンビネーション」の3種類。筆者のおすすめは「クロノロジカル」と「コンビネーション」のメリットを併せ持つ「コンビネーション」です。
クロノロジカル(Chronological Resume)
最新の職歴から順に時系列を遡って記載していく形式。逆編年体式とも。
直近の業績やスキルを目立たさせつつ、職歴・学歴の全体像を示すのに有効です。
過去の業績にも注目してもらいたい業績がある場合、そちらを目立たせるのは厳しいという側面もあります。
ファンクショナル(Functional Resume)
注目してもらいたいスキルや経験に絞って記載する形式。キャリア式とも。
時系列に縛られずにキャリア上のハイライトを示すのに有効です。またキャリアにブランクがある場合や、強調したい関連経験・スキルがあるときにも効果的。
一方で記載内容のピックアップ方法についてその意図を勘ぐられたり、誠実でない印象を与える場合も。
コンビネーション(Combination Resume)
注目してもらいたいスキルや経験を最上部に記載し、それ以外の職歴や学歴を最新のものから時系列を遡って記載していく形式。
クロノロジカルの網羅性とファンクショナルのアピール性の両方のメリットを併せ持つ形式で、キャリア上のハイライトを示しつつ、時系列で職歴・学歴の全体情報も伝えることが可能です。
他の2つの形式と比較して盛り込む内容が多くなるので、冗長にならないよう簡潔に必要事項をまとめるテクニックが必要です。
CVの実例とパートごとの説明
こちらが一番シンプルなCVのサンプルです。
大学院出願用なので教育(Education)を最上部に配置しています。
地の文は文字サイズ11pt(ポイント)、フォントはTimes New Romanを使用しています。
個人情報
最上部には個人情報(Personal information)を記載します。
氏名は少し大きめの24ptで目立たせました。
現住所は「番地→市町村名→都道府県名」の順番で、細かい要素から大きな要素を順に並べます。「県(-ken)」「市(-shi)」といった部分は省いてもOK。
電話番号は国際電話番号の形式で書きます。具体的には、市外局番の「0」を取って国番号(日本なら+81)を付けます。
学歴(Education)
大学院出願用のCVなので、職歴よりも上に持ってきて学術的な経験・業績を強調しました(順番はお好みで)。
「学位→大学名→大学の所在地」の順番で大枠を示した後、学習・研究内容の詳細と成績(GPA)を書きます。
学部卒業の場合、高校の内容は記載不要です。
また、受賞歴や出版歴のようにアピールできる業績があったら是非ここに記載しましょう。
受賞歴(Awards)や出版歴(Publications)については、別に項目を設けてそちらに書く方法もあります。
職歴(Work experience)
勤務先の情報(ポジション、勤務先名、勤務期間)を最新のものから時系列に記載します。
携わったプロジェクトや仕事上の功績について簡潔にまとめます。
リーダー経験と課外活動(Leadership and extracurricular activities)
リーダーシップを発揮した経験や課外活動、ボランティア経験など、選考にプラスになりそうな事項があれば記載します。役付きであれば、ぜひ役職名を必ず書きましょう。
この項目は必須ではありませんが、大学院留学は各国からのハイスペック受験生と競うことになるので、なるべく何かしら記載しておくことをおすすめします。
すぐに思いつくことがない場合でも、頑張って記憶を掘り起こしましょう。
スキル・技能(Skills)
学業や職務で身につけた技能、資格といった内容を記載します。
プログラムとの親和性が高ければなお可。
基本的には名詞を使いますが、個人の素質に関する内容はing形で書くのもOKです。
その他追加できる項目
職歴や学歴以外の項目は、出願者の実績に応じてカスタマイズが可能です。
実例にはない項目として、例えば以下のようなものが追加できます。
- Awards and honors(受賞歴)
- Publications(出版歴)
- Research(研究歴)
- Hobbies and interests(興味・関心)
CV(英文履歴書)作成のコツ/避けた方が良いこと
CV作成のコツ
CVに記載する各項目は、基本的に箇条書きにします。
各項目は第三者が見てもすぐに理解できるよう要点のみを簡潔にまとめます。強調したい成果を適切な動詞・形容詞で演出しましょう。業績は可能であれば数値で表現し、客観的に判断が可能な状態にします。
また動作の主がCVの人物であることが明確なので、主語のIは省いて動詞の過去形(場合により名詞)を頭にもってきます。
なお書き終わったら、文法・語法・スペルの誤りがないか、フォントサイズやインデントは適切か、必ず確認しましょう。Grammarlyのようなチェックツールや校正サービスを使うと、間違いを確実に発見できるとともにこなれた表現を取り入れることができます。
避けた方が良いこと
出願先のカラーにもよりますが、クリエイティブさを求められる場合以外は、基本的に黒単色で作成するのがベター。強調したい要点は文字色ではなく太字で目立たせましょう。
数字はアラビア数字で統一して、必要がない限りローマ数字等を混ぜない方が良いです。
単語や表現も平易なものを使用するようにし、複雑な構文は避けた方が無難。
また必要以上に細かい事柄を書かないよう注意。全体のボリュームや出願先にもよりますが、出願するプログラムに一切関係しない事項も、できれば書かない方がマイナスの印象を与えなくて済みます。
大学院留学用CVと海外就職・転職用CVの違い
ここで参考までに、大学院留学用のCVと海外就職・転職用のCVの違いについて簡単に触れます。
主な違いは以下のとおり。
- 強調すべき内容が異なる
- 希望職務や志望目的(Objective)の要・不要が異なる
それぞれ次の項目にてご紹介します。
強調すべき内容が異なる
大学院の入学審査では、(MBAのような専門職プログラムを除いて)学術的な業績が最重要視されます。
そのため、大学院留学の出願用のCVでは学術的業績を上部に掲載してアピールすることもテクニックの一つとして使えます。もちろん逆時系列方式で職歴の下に持ってくるのも可。
一方、海外就職・転職の場合、仕事面での業績やインターン経験等が重視されるため、学歴を職歴よりも先に記載することは一般的ではありません。
希望職務や志望目的(Objective)の要・不要が異なる
海外就職・転職用CVでは、応募するポストやポジションの条件(Objective)を個人情報の次に記載します。
一方、大学院留学用CVでは別に志望理由書の提出も求められておりObjectiveは明確。そのため、この項目は特段設けなくても差し支えありません。
まとめ
今回は海外大学院出願用のCVの書き方をご紹介しました。
CVは志望理由書や推薦状といった他の書類と比較すると若干重要度が下がりますが、志望理由書と同様に出願者の足跡を示す書類ですので、上手く使えばお互いに情報を補い合うことが可能です。
ぜひ戦略的に使いましょう!
以上です。
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