IELTSスピーキングテストは「インタビュー」「スピーチ」「ディスカッション」の3パートに分かれていますが、タスク毎に評価されるライティングとは異なり、スピーキングテストの評価はパート全体の出来を総合的に評価されます。
最初にネガティブな印象を与えてしまうと後半でイメージを覆すのは難しいので、パート1でも油断大敵です(パート1の印象で受験生の英語レベルと大体のバンドスコアの推定が行われるという噂もあるくらいです)。
本記事ではパート別の対策法とスピーキングテストで目標スコアを取得するためのトレーニング方法をご紹介します。
パート1:自己紹介とインタビュー(4~5分)
パート1は自己紹介とインタビューです。所要時間は4~5分程度で、受験生の身近なテーマに関する一般的な質問に答えます。
試験官の自己紹介と受験生の本人確認
試験が始まると、まず試験官の自己紹介と受験生の本人確認が行われます。ID(パスポート)を渡すよう指示されるので、渡しましょう。
なお国によっては、このタイミングで試験官が受験生に「どう呼ばれたいか?」と聞くことがあります。もし聞かれたら、呼ばれたい名前(特段決まりはありませんが、ファーストネームが無難かも)を答えます。
まず試験官に自信があるように見せましょう。笑顔!
パート1で聞かれるトピック
パート1で聞かれるのは、至ってシンプルな身の回りの事柄に関する質問です。トピックのジャンルは多岐にわたりますが、答えるべき内容は受験生本人のことや出身国(質問によっては居住国)のことです。
代表的なトピックは以下の4つ。それぞれ聞かれたらどう答えるかテンプレを作っておくと安心です。
- 仕事(work)※働いている場合
- 勉強(study)※学生の場合
- 出身地(hometown)
- 家(home)
おススメの回答の型(パート1)
かたまり | 内容 | 例)あなたは学生ですか?働いていますか? |
---|---|---|
1 | 質問に対するメイン回答 | 学生です。 |
2 | 回答内容の補足情報 | 大学院で物理学を専攻しています。 |
回答は簡潔に、「メインの回答+補足情報」程度に留めましょう。このパートでは長文の回答は求められていませんので話しすぎには注意!
またパート1はカジュアルな会話なので、硬すぎる表現は避けた方が良い印象を与えられます。
パート2:スピーチ(3~4分)
パート2では、指定されたタスクカード(cue card)に基づいて受験生が1分間で準備した後、2分間でプレゼンテーションを行います。その後内容につき何問か質問に答えます。
タスクカードに書かれていること
パート2が始まると、試験官からタスクカード・メモ用紙・鉛筆が手渡されます。
タスクカードは大きく3つのパートに分かれており、上段にはメイントピック、中段にはメイントピックについて言及すべき項目(3~4項目)、下段には上段・中段の内容を踏まえて受験生がどう思うか?といった内容が書かれています。受験生は1分間かけて話す内容を準備します。
- Describe~(メイントピック) 例:印象に残る旅先について
- You should say: what/when/who/how~(大トピックに関する具体的な質問が3個ほど。中黒で示される) 例:それはどこ?行ったのはいつ?誰と行った?
- and explain~(上記の回答の理由や根拠に関する説明を求める質問) 例:なぜ印象に残っている?
上の例の場合、「印象に残る旅先」について、受験生が「どこ」に「いつ」「誰と」行き、「なぜ印象に残ったか」について説明することになります。
スピーチ内容の準備(1分間)
メモ用紙の使い方
個別情報に対応する内容をメモ用紙に書き出します。回答内容だけだと何を聞かれているか分からなくなる恐れがあるので、質問内容も簡単に書きます。
例えば以下のような感じです。あくまでメモなので文法は重視せず、シンプルに!
- where? India, Mumbai
- when? University 2nd year
- went with? with close friends
- why impressive? delicious curry, new culture, very hot weather
必ずしもタスクカードに記載された順番に論を展開する必要はありませんが、戦略やこだわりが無い限り、順番は変えない方が賢明です。スピーチではタスクカードとメモを両方参照することが出来ますが、そこで順番がそれぞれ違うと混乱が生じる可能性があるためです。
使いたい連続詞や談話標識も合わせて書く(できれば)
話し出し用のフレーズやスピーチ中に使いたい連続詞・談話標識(評価基準を参照)も合わせて書いておくと、忘れてしまったときに助けになります。書かなくても言えればOKですが、保険として。
何も思いつかないときはマインドマップを活用する
トピックが馴染みのないもので全く考えが浮かばない場合、マインドマップを活用するのも手です。メイントピックから想像できる事柄を出来るだけ多く紙に書きます。
スピーチ内容の発表(2分間)
おススメ時間配分は、中黒ポイントの個別情報に前半1分&理由・根拠に後半1分
中黒で示されている時間や場所といった個別の情報は前半1分間で話し切ってしまい、最後の「理由や根拠」について後半1分間で話すのがおススメです。「理由や根拠」は情報を追加しやすいため、持ち時間を有効に活用できるからです。
落ち着いて話し出す
Today I’d like to talk about~のように、どのようなトピックでも使えるフレーズを話し出し用として覚えておくと便利です。
メモ用紙を見てもOK、ただ見過ぎないように注意
スピーチ中にメモ用紙を見ることは可能です。ただ見過ぎて読み上げているようになってしまうと減点になるので注意。
なるべく止められるまで話し続ける!
トピックによっては早々に話すべきことを話し切ってしまうことがあるかもしれません。その場合は全て話し終わった旨を試験官に伝えて次のパートに移ることができます。
しかしながら、もし話し切ったのが1分未満であったり、話した内容の論理構成や文法、構文の質に少しでも不安要素がある場合は、出来るだけ情報を追加しつつ試験官に止められるまで話し続けることをお勧めします。パート2ではどれだけ長い文章を話せるかもポイントになるからです。
全ての項目に言及すべき?
パート2では言及すべき項目がタスクカードで示されているので、スピーチでは基本的に全ての項目に言及するようにしましょう。(一部項目に言及し忘れても減点されないという言説も聞いたことがありますが、検証できないため個人的にはなるべく全ての項目をカバーすることをおすすめします。)
パート3:ディスカッション(4~5分)
パート3では、パート2の内容に関連するさらに曖昧であったり受験生の見解を問う質問に答えます。例えばパート2の内容が「尊敬できる友人」だった場合、「友情」「愛情」「人間関係」といった内容についてディスカッションする可能性があります。
質問は一般的な内容について問うものなので、自分や家族のことではなく社会一般に関する内容を回答します。
おススメの回答の型(パート3)
かたまり | 内容 | 例)デパートの無料レジ袋配布についてどう思いますか? |
---|---|---|
1 | 簡潔に質問に対するメイン回答 | 良くないと思います。 |
2 | 回答内容の説明 | プラスチックごみを増やすことに繋がるからです。 |
3 | 回答内容をサポートする事例 | 毎年プラスチックごみが原因で多くの海洋生物が命を落としています。(例えばウミガメが…と事例を補足しても良い) |
4 | 改めて質問に対するメイン回答 | この理由により、私は反対です。 |
質問内容によっては「Yes」「No」で回答できてしまうかもしれませんが、それでは完全な回答とは言えません。どのような回答内容だとしても、必ず根拠と事例を加えて補強することが必要です。
意識すべきことは概説編に記載の内容と同じです。
おすすめトレーニング方法
語学学校のIELTS対策講座を利用する
IELTSスピーキングテストに特化していることから採点基準やテクニックを知ることが出来る点で有用だと思いますが、やはり費用が高め。グループレッスンであればトレーニングの機会というよりもテクニックを学ぶ場だと割り切って、他でトレーニングを重ねましょう。
なお個人レッスンであればそれなりの練習機会になると思いますが、かなりの費用が掛かることや語学学校の個人レッスン以外にもトレーニング方法は存在することから、そこそこに留めることをお勧めします。
英会話学校を利用する(パート1・パート3対策)
まず英語を話すことに慣れるという意味で、英会話学校も効果があると思います。先生にもよりますが、可能であればIELTSの質問内容を使ってインタビューやディスカッションの練習をするのも悪くないのでは。
ただパート2のスピーチは形式が独特なので英会話学校のレッスンには向かないかもしれません。
参考書を利用する(主にパート2対策)
スピーキングテスト対策の参考書がいくつか出ていますので、比較的安価に語彙や表現を学ぶにはちょうど良いです。パート2は時間感覚が問われるため、同じ問題を繰り返し練習して時間内に収まるように研究しましょう。
なおちょっと恥ずかしいですが、問題を解く際はぜひ自分の声を録音してみてください!スコアを上げるには自分の回答を分析するのがなんだかんだ言って一番効果的だったりします。
目標のスコアがなかなか出ない場合
再採点を依頼してみる
目標スコアにあと少し(0.5)届かない場合は、再採点を依頼してみても良いかもしれません。
別の受験方式(対面・リモート)を試してみる
IELTSのスピーキングテストは、通常の対面の実施と画面越しの実施(ビデオコール・スピーキングテスト)の二形態があります。人によって向き不向きがあるので、別の受験方式で試してみると違った結果が得られるかもしれません。
まとめ
スピーキングテストで高いスコアを獲得するためには、基礎的な英語力の向上と試験用のテクニックの積み重ねを両方行う必要があり、なかなか一筋縄ではいきません。
パートごとの文章の型をまとめます。
- パート1では、「メイン回答+補足情報」程度で簡潔に答える。
- パート2では、「個別情報」を前半1分にまとめ、「理由・根拠」を後半1分で話す。
- パート3では、「メイン回答」「説明」「根拠」「メイン回答繰り返し」で答える。
少しずつ解法を習得していけば必ず一定のレベルには達します。焦らず対策していきましょう。
IELTSスピーキングテストでOKなこととNGなことについてはこちらの記事でまとめています。
以上です。
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