これまでの投稿でも小出しにしてきた通り、留学後の現地就職は結局叶いませんでした。
実は学生ビザを延長してもう半年間ジュネーヴに滞在することもできたのですが、生活費の捻出が厳しいうえにキャリアが開ける兆しも全くなかったので、日本に戻ってキャリアを設計し直すことにしました。
この記事ではそんな留学後に日本で再就職するにあたって、日本の環境に改めて適応するために意識していたことや実際に行動したことをまとめました。
ミッドキャリア留学に限らず、長期の留学や海外滞在の後に再び日本で生活することになった方の参考になれば幸いです。
転職活動の準備を早めに始める
まずは帰国後にどんなことをするのか(したいのか)を考えておくことにしました。
筆者の場合はキャリア前提の留学でしたし、何より留学の成果をちゃんと活かしたいなら準備時間は必須です。
留学そのものがプラスになるとは限らない
まず考えたのはキャリアのために留学したとはいえ、それだけで自動的に評価されるわけではないということです。
もちろん専攻によってはダイレクトにプラスに働く場面もありますが、それがどのように評価されるのか、そもそも評価されるのかどうかは、結局のところ環境やタイミングに左右される部分が大きいと言えるでしょう。
正直、留学後一発目の転職だと、多かれ少なかれ「留学前の仕事に近い場所」に行くことになる、という覚悟は必要だと思います。留学は職歴としてカウントされない以上、それは仕方ないことなので…。
ただし「留学と全く関係のない場所」に行く可能性を考えると、たとえハードルが高くても「留学をどう次につなげるか」を常に考える必要がありました。
試行錯誤には時間が必要
「前職の経験が活かせてかつ留学で学んだことと何かしら関係のある領域」を探すとなると、どうしても試行錯誤は避けられません。
どの分野に進めるのか、どの程度通用するのか、どのような形で経験を伝えればいいのか。こうしたことは、頭の中で考えていてもなかなか分からず、実際に応募したり話を聞いたりする中で少しずつ見えてくるものだと感じました。
ただ、その試行錯誤にはどうしても時間がかかりますし、労力もかかります。
国を跨いで転職活動をするのはかなり気力も使いますし、日本の転職市場のロジックやナラティブは諸外国とかなり異なるため、留学先ではなかなか理解されずに孤独を味わったりもしました(ミッドキャリアは数も少ないので結構辛かったです)。
留学先と日本の労働環境を比較してしまい、非常にネガティブな気分になったことも数知れず。
それもない物ねだりなので仕方ないのですが。
そんな感じで悶々としながら取り組んでみたのですが、実際にポジションにアプライしたりする中で初めて分かることも多く、合わないと感じて方向を変えることも含めて、ある程度の(時間的・精神的な)余白が必要になる、ということを身に染みて感じました。
在学中からコツコツと
そう考えると、できることは在学中から少しずつ動いておいた方がいい、という結論になります。
特別なことをするというよりも、応募してみる、話を聞いてみる、書類を整える、といったことをコツコツと進めていくイメージです。このあたり、大学院のキャリアサポート窓口にはかなりお世話になりました。
比較的高齢のアジア人が少なかったこともあり、アドバイザーの方に顔を覚えてもらっていたのも心強かった記憶があります。CVを直してもらったり、カバーレターを添削してもらったり、と海外式の就活のノウハウは(切羽詰まってきたこともあって?)かなり身につけられたと思います。
結果がすぐに出るかどうかは分かりませんが、少なくともその過程で、自分の立ち位置や改善すべき点は見えてきます。何も動かないまま帰国するよりは、その分だけ次の選択肢を考えやすくなると思いました。
後述の転職エージェントも近いサービスを提供してくれますが、特定業界に送り込むようなノルマがない分、大学院の窓口の方がかなりメンタル的にも寄り添って聞いてくれる点も非常にありがたかったです。
実際日本に戻ってからもここで作成した書類が役立ったことがあり、どこでどう繋がるか分からないな、と改めて留学の意義深さを考えたりもしました。
日本の雇用市場も変化している
もう一つ感じていたのは、日本の雇用市場も固定されたものではないということです。以前の経験だけを頼りにしていても、そのまま通用するとは限りませんし、逆に海外での経験が思わぬ形で評価されることもあります。
実際、帰国後の転職活動ではそれまで知らなかった業界や業種を検討する機会が多くありましたし、リンクトインのようなサービスを活用することで、これまでのキャリアとは縁遠い業界でも親和性の高いポジションがあることが分かったりしました。
実際に面接まで漕ぎつけたことも何度かあり、留学中に学んだことやキャリアを整理したことが業界を超えて刺さるという、留学前には想像もしなかったことが起きたことは新たな発見でした。
結局のところ、どの業界や職種に可能性があるのかは、実際に動いてみないと分からない部分が多く、自分がどのあたりに位置づけられるのかも含めて、一度確かめておくのは非常に有用だと思います。
実際にやったこと
前述の通り、在学中は大学院のキャリアサービスを活用しながら、求人への応募や情報収集、書類のブラッシュアップを進めていました。具体的には、キャリアアドバイザーにCVやカバーレターを見てもらいながら、自分の経歴の見せ方を少しずつ整えていった感じです。
帰国後は、日本の転職エージェントに登録してしばらく活動してみました。ただ、実際に利用してみる中で、自分の希望や方向性とのズレを感じる場面もあり、全く合わない案件を紹介されたり、明後日の方向から方針転換を勧められたりしたこともあり、合わないと判断。途中からLinkedInを使った直接応募に切り替えています。
意外だったのが、在学中に時間をかけて書類を整えておいたことがそのまま日本での転職活動にも繋がることがあったこと。企業によっては和文の履歴書や職務経歴書が求められる場面も多かった一方で、応募経路によっては英文のままでも問題ないケースもあり、状況に応じて使い分けることができました。
個人的な感覚としては、和文の履歴書や職務経歴書を求められるときは通らないことが多く、英文CVを使えるときは選考が進むことが多かったように思います。
留学を経たことで日本の転職市場からは少しズレた存在になったのかもしれません。
そう考えると、早めに動いていたことで試行錯誤のプロセス自体を前倒しできたのは大きかったと思います。
このズレに気づいたのも、そのズレを受けて体制を立て直すことができたのも、やはりその余白があったからでしょう。
日本の情報に日常的に触れる習慣を作る
次にやったことは、日本的な思考法や振る舞いの再インストールです。
いわゆる「海外っぽさ」はときに誤解を招いたりしますし、職場でのコミュニケーションのズレにも繋がることがあるので、摩擦を最小限にすることを意識しました。
日本の感覚を取り戻す
留学のように多国籍で意見を求められる環境にいると、いわゆる空気を読むコミュニケーションや上下関係の力学が感覚から抜けていきます。
筆者はミッドキャリアで留学したため、あらかじめ日本で言うところの「社会人としてのマナー」は一通り身に着けていましたが、それが災いして留学当初になかなか周囲(若者)に馴染めなかったという反省があったため、中盤以降はとにかく思ったことを言うということを意識していました。
日本に戻るということはその逆をやるようなもなので、やはりトレーニング期間は必要です。
職場環境にもよりますが、やはり中途採用者は職場では一番後輩にあたるため、そのような意識は年齢関係なく求められるもの。あまり大っぴらに意見したりしないよう自分を少し抑える努力をしました。
就職試験などで求められる一般常識をアップデートしておくという意味でも、日本の情報を仕入れておくのは重要だと思います。

とはいえ、日本に染まり過ぎると海外で得たものが十分に発揮できなくなってしまいます。この塩梅の調整が非常に難しいと感じました。
具体的にやっていたこと
日本的な感覚を取り戻すためにやっていたのは、テレビ番組やラジオの視聴がメイン。
しばらく日本のメディアから遠ざかっていましたが、そこは母国語。感覚を取り戻すにはあまり時間はかかりませんでした。
先述の転職エージェントとの面談も、日本で働いていたころを思い出すのに一役買いました。
あえて外国人気分を残してみる
とはいえ、留学したこと自体が血肉になっていることは紛れもない事実ですし、留学前の自分とは少し違う自分になっていることも否定はできません。ですが、時間が経つと留学の感覚が薄れてしまうもの。
「海外から見た日本」という感覚は武器にもなるので、保つ努力は多少必要です。
おすすめは「外国人として日本を見る」ロールプレイ。
日本を面白がる感覚を忘れない
ヨーロッパと比較すると、日本はとにかく物に溢れています。
日本のモノやサービスの豊富さ・きめ細かさは、他の追随を許しません。本当にすごいと感心しきり。
これは、一度ジュネーヴという色々と最低限(&物価が非常に高い)の環境を経験してみると改めて感じるところです。同じアジアのシンガポールと比較しても、やっぱりレベルが違うと感じます。
特に外食も選択肢が非常に多く、物価もクオリティーに比べてかなり安いのが嬉しいところ。
スーパーマーケットのお惣菜も量が多くて美味しいのは、やっぱり日本の文化だと思います。
日本に戻ってきてからしばらく経ちますが、そんな新鮮な驚きを忘れないように日々色々なところに目を向けるようにしています。
最新スポットにとりあえず行ってみる
観光客のような気分で色々と歩き回ってみるのも一興です。
特に東京は近年再開発が目覚ましいので、留学前とは景色が一変していることもしばしば。

新宿や渋谷はもちろん、高輪ゲートウェイや大井町も再開発ラッシュですね。
留学先の感覚がある状態で最新スポットを訪問すると、その土地との違いが際立って非常に面白い体験ができます。
筆者個人としては、元地方公務員&留学中の専攻が政治学だったこともあってか、研究との繋がりを感じることもあって、別角度からの発見も多いと感じました。比較することで留学先やそこでの学びがより立体的になる、というメリットもあると思います(専攻にもよりますが…)。
日本のネガティブな部分は分析対象として扱う
留学は日本では学べないことを体験する貴重な場。
一方で、海外を見ることで日本がネガティブに映る場面もあるかもしれませんね。
数年前は「安いニッポン」が話題になりましたし、最近でも円安や移民問題など、日本を巡る課題は残念ながらまだまだ山積している状態です。国際情勢の不透明さも相まって、明るい話題の方が少ない印象もあるくらい。
海外でも、以前のように日本がもてはやされることはなくなりました。
もちろん海外には海外の問題もあるので一概に言えませんが、普段接するチャネルによっては日本絡みの話題について必然的に暗いものばかりが入ってくる状況になるので、日本に戻るのがちょっと嫌になることもあるかもしれません。
そこで、日本に戻ってから、留学で得た知識を活用したり留学中のように日本社会から(心理的に)距離を取って、「どうしてこうなるのかな?」「どうすればいいのかな?」と思索してみるのもおすすめ。
あえて分析側に回ることで、ネガティブな部分を客観視することができる可能性がありますし、その視点が何かしらキャリアにメリットをもたらすことも考えられます。
日本からの視点ではどうしても重くなってしまうような話でも、海外視点を取り入れることで少しだけ軽く考えられるようなことだってきっとあると思います。
現地の情報に触れ続ける
現地の感覚を忘れないためには、現地で見ていたテレビや聴いていたラジオなどのメディアに触れ続けるのも有用。
視野が固定されるのを防ぐことができます。
最近はYouTubeでライブ映像を観ることができる場合もあり、一昔前に比べると格段に現地を感じることが簡単になりました。Google Mapsでよく訪れていた場所を見るのも、当時の感覚を取り戻すのに一役買ってくれます。
なお、LinkedInも現地の友人の近況やポジション情報が流れてくるのでおすすめできますが、他人の成功体験も合わせて流れてくるので、精神状況によっては、日本への再適応を目指すフェーズでは頭が現地就職できなかった=失敗と捉えて辛くなる可能性もあるので要注意です。
SNSはほどほどに、周りと比較しない
先述のとおり、SNSは現地とのコネクションを維持したり、最新の情報をキャッチアップするためには非常に有用ですが、ノイズが入ってくるのはどうしても避けられません。
自分があまりうまくいっていない状況で、現地の友人の成功談や自分には当てはまらないキャリアアドバイス系の投稿に触れ続けていると、国籍や労働市場の環境など、自分ではコントロールできないことにまで思い悩むようになりかねません。
筆者自身も、現地の友人の活躍を目にすることで、心が苦しくなったり、焦燥感に駆られて明らかに合っていないような求人に応募してしまったり、といった経験があります。
SNSを利用する際は、プッシュ通知やメール通知の設定を調整して、ある程度情報量を制限しておくと良いかもしれません。
いずれまた海外に出ることを考えておく
少し逆説的ではありますが、いずれまた海外に出られるキャリアを構築するのも再適応の後押しになります。
具体的にできることとしては、先述のリンクトインを活用したり、語学力を維持したり、海外で活かせそうな仕事を選んだり…ということが考えられるでしょう。
もちろん留学までのキャリアに依存する面や国際情勢に左右される要素が大きいので、必ずまた海外で何かができるとは限りません。
ですが、具体的な行動を積み重ねることで少しずつ近づいていくことはできるかもしれません。
まとめ
母国に帰るという「再適応」は、考えてみれば知っている場所に戻るだけ。
実際はそこまで難しいことではないのかもしれません。
ですが、留学先での充実した生活や見据えていたキャリアプランなどを思い出すと、なかなかにしんどい状況に思えることもあると思います。
少なくとも筆者は、受け入れるまでに色々と思い悩みました。
もう二度と日本から出られないのでは?
留学はただの美しい思い出になってしまうのでは?
そんな風に悲観したことは数えきれません。
だからこそ、たとえ逆カルチャーショックに苦しむようなことにならなかったとしても再適応のプロセスを考えておくことは、そんな不安に対処する方法のひとつになるかもしれないと思うのです。
以上です。
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