筆者はスイス・ジュネーブのIHEID(国際・開発高等研究所)で学んでいます。
ジュネーブでの生活が始まってから2ヵ月ほどが経ったので、今感じているジュネーブの住みやすさ・住みにくさを留学生の視点からまとめたいと思います。
住みやすいと感じた点
治安はかなり良い
一般にロンドンやパリといったヨーロッパの大都市はが治安が悪いです。実際、筆者がそれらの都市を訪問した際は緊張する場面が多かった印象。ところが、ジュネーブは駅周辺も含めて治安が明らかに悪そうな感じは受けません。
物乞いは郵便局の入り口などにいるものの、他国で見かけるような怪しい集団はほぼ見かけません。落書きもロンドンやパリと比較すると少ないです。
公共の場所で音楽を聴きながらスマホをいじっても問題はなく、日本のように空席に荷物を置くのも普通。
今のところ夜でもそこまで危険な雰囲気は感じません。
とはいえ海外なので、日本と全く同じ感覚でいるのは危険!深夜の単独行動や薄暗い通りは避けた方が無難です。
また注意が必要なエリアもあります。(後述)
美しい景観
ジュネーブは歴史のある街なので建築も素敵。モダンな建物もうまく調和するようにデザインされており、整然とした街並みは一見の価値ありです。
またレマン湖のほとりや高台にある旧市街では「これぞヨーロッパ!」という風景が広がる一方、国際機関の集まる地区はメッセージ性を持った珍しい建築が目白押し。
街中を走るトラムも景観の一部として調和しています。
完全に気を抜くのはおすすめしませんが、のんびり景観を楽しむにはうってつけの街です。
人が優しくて親切
ジュネーブはいわゆる地方都市。何となく田舎のような雰囲気を感じます。そのためか、郵便局やレストランといった場所でちょっとした会話を交わす機会が意外とあり、他のヨーロッパの都市で感じた人の冷たさを感じたことはほとんどありません。
ヨーロッパの他国のレストランだとなかなかウェイターが注文を取りに来ない・そっけない対応をされるといった経験をすることもありますが、スイスのサービスは日本とかなり近いと思います。基本的に笑顔でテキパキとサービスを提供する(でも決してマニュアル的ではなく人間味がある)感じです。
また公共交通機関で席を譲る場面は当たり前に見ますし、街中で転んでしまった高齢の男性をみんなで協力して助ける場面に遭遇したこともあります。助け合いの精神がちゃんと育まれている感じ。
英語が広く通用。フランス語も比較的ゆっくり
スイスはいわゆる「英語圏」ではないものの、国際機関も多く所在するジュネーブでは広く英語が通用します。
公共機関では英語が通じない可能性もありますが、フランスで話されるフランス語よりもゆったりしているので比較的聴き取りやすかったりします。フランス語を学習したい人にはうってつけの環境です。
フランス語が多少話せると会話も弾みますし、もしつっかえても(パリのように)邪険に扱われたりしません。むしろ努力の姿勢を褒められたりすることもあります!笑
多少現地語の勉強が必要ではありますが、外国人にとっては暮らしやすい環境。
乳製品やワインが美味しい
スイスといえばやっぱりチーズ!種類も豊富でやっぱり美味しいです。物価が高いこともあり全部試すのは難しいですが、スーパーであれば比較的割安。
そして国外流通量が少ないスイスワインも、スイスにいれば普通に入手可能です。チーズフォンデュとのマリアージュも最高!
またあまり印象はないかもしれませんが、野菜も地場産がバラエティー豊かでなかなか美味しいです。日本で見かけない野菜を料理してみるのも面白いかも。
水道水が飲める
スイスは日本を含むごく少数の水道水が飲める国のひとつ。
そのまま飲用するほか、料理に使うのにも非常に便利です。
なおスイスを含むヨーロッパの水道水は硬水なので日本と同じではありませんが、飲用について今のところそこまでの違いは感じていません。
住みにくいと感じた点
物価がとにかく高い
既にいくつかの記事で触れていますが、スイスは本当に物価が高いです。
もちろん日本で買うよりも安い物もあります(日本がヨーロッパから輸入するような物はさすがにスイスのほうが安い)が、かなり稀。チーズやスイスワインくらいではないでしょうか。
特に高いのは外食費。人件費が高いため、まともな外食をしたいのであれば5,000円以上は覚悟しないといけません。そのため、日本を含むアジアのようにふらっと安い外食で済ませる、ということは不可能です。
マクドナルドのようなファストフード店でも2,000円はします。
スイスで働ければこの問題はクリアできそうですが、そうでない場合は安売りしているお店やお得なサービスを使って乗り切るしかありません。
スーパーマーケットごとの傾向をつかんで、使い分けてみたり。
正規価格よりも安く食べ物を入手する方法を試してみたり。
日本の水準には到底なりませんが(日本が安すぎるので)、多少マシにはなります。
また、学生やジュネーブ市民はスイスよりも物価の安いフランス領に買い出しに行くこともよくあります。
特定の大学・大学院の学生であれば食べ物が無料でもらえる仕組みも。
筆者はひたすら自炊をする日々ですが、この自炊生活にどこまで耐えられるかは未知数です…。
商店の営業時間が非常に短い。しかも日曜は休み
働く人の人権がきちんと守られるスイスでは、日本のような搾取的な長時間・深夜労働はありません。つまり、警察・消防などの緊急時に必要なサービスを除き、深夜まで長時間働くような人はかなり少ないということです。
これは商店の営業時間の短さに繋がっています。そして日曜日が休みなのはおそらく宗教由来の休日の概念。
働く人が自分や家族との時間を大切にできることは大変素晴らしく、さらに給与が低いわけではないので、働く人にとっては良い社会と言えるでしょう。
半面、消費者としてはサービスが受けたいときに利用可能とは限らないため、辛いものがあります。大規模ショッピングモールも非常に少なく、「ここに行けば何でもそろう!」というような場所は数か所あるくらい。
日本社会でも「休み方」や「長時間労働の是正」は働き方改革の肝ですが、このような状況をすんなり受け入れられる人は日本にどのくらい居るのでしょうか…。
また土日はバスも間引き運転になります。中心部から外れたところに住んでいると、ちょっと外出するのも一苦労。
観光名所や娯楽が少ない
ジュネーブは国際機関が集まっているため非常に国際的な環境ですが、規模的にはやはり地方都市。はっきり言って「田舎」です。大都市の便利さや華やかさは皆無と言って良いでしょう。
観光施設や観光名所が致命的に少ないです。各種博物館・美術館は数回行けば良いレベル。たとえお金をかけても娯楽の種類が少し増えるだけ。自然を楽しむアクティビティが多いみたいなので、自然が好きな人には良いかもしれません。
東京のような大都市を経験した人がジュネーブに来ると、刺激の少なさにゲンナリするかも。マジで何もありません。
筆者は東京とシンガポールを経験した後に来たので、この点に非常にフラストレーションを感じました…(シンガポールはつまらないとか言いつつマリーナベイサンズやらチャンギ空港やら世界的に有名なお出掛けスポットもあるし、外食文化が強くバリエーションが豊かだったので)。正直それだけでちょっとLSEを蹴ったのを後悔するくらいです(今の大学院に不満はないですが、ロンドン楽しそうだな…)。
勉強以外することがないので留学にはもってこいですが、「留学先での日常生活も(都会的に)思いっきり楽しみたい!」というタイプの人は病むかも。
日本ブランドの商品は入手困難
ヨーロッパの大都市には出店している「ユニクロ」のようなお店はジュネーブにはありません。日本の炊飯器もまず手に入らないと思った方が良いかも。(最寄りのユニクロはフランスのリヨンにあります。)
またスイスにはアマゾンがありません。みんなどこでオンラインショッピングしているのやら。
日本の商品は食料品を中心に流通してはいるものの、ヨーロッパまでの流通コストがかかるからか大変割高です。
欲しい物によって、現地のスーパーマーケット、日系のお店、その他のアジア食料品店などを使い分ける必要が出てきます。
ちなみに和食も非常に高価。ラーメン一杯5,000円はかかると思った方が良いです。
ジュネーブの要注意エリア
一番最初の項目で治安はヨーロッパにしては良好である旨をお伝えしましたが、もちろん治安が微妙なエリアも存在します。この手の話題でよく挙げられるのが「パキ」と「プランパレ」の2地区。
コルナヴァン駅の周辺も治安が微妙という情報も見かけましたが、個人的には特段危険な感じは受けませんでした。
パキ(Pâquis)
コルナヴァン駅に近いパキ(Pâquis)はいわゆる赤線地帯(歓楽街)として知られるエリア。またこのエリアは移民街でもあり、かなり雑多な雰囲気です。
周辺にはアジア食材店もいくつかあるので、昼間は買い物におすすめのエリアです。
歓楽街の中心はベルン通り(Rue de Berne)。夜間に通行する際には注意が必要です。
プレンパレ(Plainpalais)
プレンパレ(Plainpalais)は昼間は静かで平和なエリアですが、夜になると一帯のバーやレストランが若者で賑わいます。
かなり激しいノリの若者も多く、昼間の静かなジュネーブからは想像できないほど雑多な感じになります。若者同士のトラブルが起きることも…。
また若者に混じって怪しい人々が出没するという情報もあります。出掛ける際は周囲に用心を。
まとめ
以上、ジュネーブの住みやすさと住みにくさを在住2ヵ月目の感覚で書き綴ってみました。
何だか「住みにくい」の方に気合が入っているような…
まあ完璧な都市は存在しないので、ここで見つけられるものをこれからじっくりと探していきたいと思います。交通網を活用すれば他の大都市にアクセスすることも可能なので、ちょっと逃避することもあるかもしれません(そうしたらそれも記事にしたい)。
個人的な心のオアシスはフランスのリヨンです。2時間くらいで行けて物価が安い&食事が美味しいのが魅力!
以上です!ジュネーブに住みたい方&住む予定のある方の参考になれば幸いです。
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