長期留学をするにあたって重要なのが、海外で体調を崩したりけがをした場合の医療費をどうするか問題。
長期留学生の医療保険の取り扱いは国によってまちまちですが、フランスの場合、長期留学生(VLS-TSビザかVLS-Tビザの保有者)であれば公的な医療保険制度であるセキュリテ・ソシアル(Sécurité Sociale)に加入することで医療費の負担をある程度軽減することができます。
この記事では、セキュリテ・ソシアルの必要書類や申請方法、さらに補完的な保険であるミュチュエルについてもご紹介します。
セキュリテ・ソシアルとは
フランスの公的医療保険制度
セキュリテ・ソシアルは、フランスの公的医療保険制度であり、国内の医療費を大幅にカバーする仕組みです。診察や薬の費用の大部分が補助され、フランスに住むほとんどの人が対象になります。
日本と異なりフランスでは医療費が高額になりがちですが、セキュリテ・ソシアルのおかげで自己負担が少なくなります。
セキュリテ・ソシアルの健康保険証であるカルト・ヴィタル(Carte Vitale)を取得すると、フランス国内の医療機関での医療費や薬代が一部カバーされるようになり、長期滞在の安心材料となります。
キャンパスフランスのウェブサイトでは「加入できる」という表現ですが、留学先の学校からは「加入は義務」という説明をされました。加入しないことによるペナルティーは無さそうですが、入れるなら入っておいた方が何かと便利だと思います。
自己負担分をカバーする保険もある
セキュリテ・ソシアルでは医療費の約70%がカバーされますが、残りの30%は自己負担となります。
この自己負担分をカバーするためにあるのがミュチュエル(Mutuelle)という相互保険です。詳細は後述します。
海外旅行保険との併用がおすすめ
フランス長期留学生はセキュリテ・ソシアルによる医療費負担軽減に加え格安でミュチュエルに加入することができます。
ただし滞在期間やスケジュールにもよりますが、諸々の手続きにかかる時間を考慮すると日本の海外旅行保険も利用するのが理想的です。
日本の海外旅行保険に加入しておけばセキュリテ・ソシアルやミュチュエルの準備が整う前に医療費の支払いが発生しても対応することができますし、何かあったときも日本語による対応が期待できます。
フランス生活に慣れる前の留学初期にそれらの安心が得られるのは非常に大きいと思います。
加入申請に必要な書類
準備する書類の一覧
セキュリテ・ソシアルの加入申請には以下の書類が必要です。
それぞれセキュリテ・ソシアルのウェブサイトでアップロードする必要があるので、加入申請をする前に手元に揃えておきましょう!
必要書類 | 説明 | 発行元(入手先) |
---|---|---|
フランス高等教育機関の登録証明 | フランスの高等教育機関に登録していることが証明できる書類。(Certificat de scolaritéなど) | 教育機関 |
身分証明 | パスポートの写真付きページ。 | 日本政府 |
学生ビザ | パスポートに貼られた学生ビザ。 | フランス大使館・領事館 |
民法上の身分関係を証明する書類 | 出生証明書や婚姻関係を示す書類など。 ※出生証明書の取得方法についてはこちらの記事で解説しています。 | 本籍地の地方自治体・在外公館 |
居住許可証 | 学生ビザを有効化した際に発行された書類(Confirmation de la validation de l’enregistrement de votre visa long séjour valant titre de séjour)を添付すればOK。 | フランス大使館・領事館 |
RIB | セキュリテ・ソシアルの医療費払い戻しに使用するフランスの銀行口座情報。 ※フランスの銀行口座の開設体験談についてはこちらの記事で紹介しています。 | フランスの銀行 |
e-photoの認識番号 | 電子申請用の認識番号発行に対応している証明写真機を利用して写真を撮影すると入手できます。(後述) | 対応証明写真機、アプリ |
出生証明書は紙媒体ですが、家にスキャナーがなくてもスマホの機能を使えばアップロード可能なPDF形式に変換することができます。
e-photoについて
フランスでは、写真付きの公的書類をオンラインで申請する際、証明写真に紐づけられた識別番号を当局に送付する必要があります。セキュリテ・ソシアルの場合、識別番号を入力する欄があります。
識別番号を入手する方法は以下の2つ。
- 識別番号の発行に対応した証明写真機を使用して証明写真を撮る。
- 専用のアプリを利用する。
証明写真機の検索はこちらのサイト(Géolocaliser les photographes habilités à la photo-signature)から可能。都市名や郵便番号といった情報で絞り込んで探せます。
アプリを利用する方はこちらから。2024年11月現在日本の環境で入手可能なのはアンドロイド版のみです。
申請手続きについて
申請はオンラインで完結
セキュリテ・ソシアルはオンラインでの申請が可能です。
フランスの健康保険機関CPAMのサイトでアカウントを作成し、必要書類をデジタルでアップロードします。手続きは英語で可能ですが所々フランス語が混じるため、不安な場合は学校の国際課にサポートを依頼するのも手です。
まずは外国人学生専用の健康保険サイトhttps://etudiant-etranger.ameli.fr/#/にアクセスし、加入要件を満たすかチェックします。
加入要件を満たしている場合はアカウントの作成手続きに移るので、メールアドレスなどを登録してアカウント作成を完了させます。
作成したアカウントでシステムにログインし、フランスでの滞在先などの個人情報の入力と前述の必要書類のアップロードを行います。
なおアップロードした書類が受理されたかどうかはMy space内のMy documentsから確認が可能。Processing status欄がValidatedとなっていれば受理されたということです。
手続が無事完了すると、ID番号が記載された仮証明Provisional attestation of entitlementsが発行されます。
カルト・ヴィタルが郵送されるので、受け取り後にwww.ameli.frでアカウントを作成します。実際に受け取るまでにはかなり時間がかかるようです。
提出書類が要件を満たさない場合の対応
書類が不備だったり要件を満たさない場合、CPAMから追加書類の提出や書類の修正が求められることがあります。こうした通知があった場合は、指示に従い早めに再提出することが大切です。
書類の再提出や修正については2度まで督促が行われますが、それまでに再提出等の対応を取らないとその手続きが無効になってしまうので注意。
【補足】セキュリテ・ソシアルを補完する保険:ミュチュエル
ミュチュエルについて
セキュリテ・ソシアルは医療費の全額を補償するわけではないため、自己負担分を補完するミュチュエル(Mutuelle)と呼ばれる相互保険が提供されています。特に学生向けには手頃なプランが用意されており、医療費の負担軽減に役立ちます。
学生向けには学生用相互保険(Les mutuelles étudiantes)があり、滞在中に不安なく医療を受けられるようにしています。
ミュチュエルに加入することでセキュリテ・ソシアルでカバーされない費用も負担が軽減され、安心して医療サービスを利用できる環境が整います。
ミュチュエルの加入は任意。キャンパスフランスのウェブサイトでは加入が推奨されています。
ミュチュエルの加入方法
ミュチュエルの加入手続きは学生用相互保険を扱う事業所の他、保険会社や銀行などで可能です。
いずれの場合もカバー内容や加入条件をよく吟味する必要があります。
学校における活動はもちろん、アルバイトやフィールドワークなども含め、ご自身の行動範囲に合った補償内容を選ぶのがカギです。
まとめ
今回はセキュリテ・ソシアルやミュチュエルについてご紹介しました。
フランスは学生向けのサポートが手厚くて嬉しい限りですが、手続きにはかなり時間がかかるので、フランスの制度頼みになるのは少々危険。
公的医療保険や補完的保険、海外旅行傷害保険などを上手く併用しつつ、留学生活をエンジョイしましょう!
以上です。
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