世銀奨学金(JJ/WBGSP)に合格するためのヒント&合格体験談

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最近の円安で、海外大学院留学はさらに遠い存在になってしまいました。
その一方で、近年の混沌とした国際情勢の中、開発分野を担う人材の育成はますます重要になっています。

とはいえ、採択人数が少なかったり、年齢制限があったりと、海外留学向け奨学金は狭き門…。

そんな中で日本人という強みを活かせる(&年齢制限がない)のが、世銀奨学金(JJ/WBGSP)の日本人向け募集枠です。

開発関連分野を志す若手実務者やミッドキャリアを対象としており、授業料だけでなく生活費まで支給される非常に手厚い制度となっています。筆者自身も、円安の嵐が吹き荒れる中でスイス留学をしていたため、この奨学金には本当に助けられました。

内容が手厚いだけに合格難易度は決して低くないと思われますが、条件を満たす方にはぜひ積極的にチャレンジしていただきたい制度です。

この記事では、筆者自身の体験をもとに、世銀奨学金の概要や応募時の状況、合格のヒント、実際の受給体験についてご紹介します。

特にこれまで国際機関の採用や英文応募書類に触れる機会が少なかった方に向けて、そうした「もったいない躓き」を少しでも減らせればと思いながら執筆しました。

少しでも参考になれば幸いです。

本記事の内容は筆者の申込時の体験及びウェブサイト情報をベースに執筆しています。応募要件や詳細な条件は毎年度変更される可能性がありますので、必ずご自身で最新の情報をご確認ください。

目次

世銀奨学金(JJ/WBGSP)とは?

まずは世銀奨学金の概要からご紹介します。

世銀奨学金の概要

日本/世界銀行共同大学院奨学金制度(Joint Japan/World Bank Graduate Scholarship Program:JJ/WBGSP)は、日本政府の拠出により運営されている世界銀行の奨学金制度です。

開発途上国の貧困削減や持続可能な発展に貢献する人材の育成を目的としており、開発分野に関心を持つ中堅実務家を対象に、海外大学院への進学を支援しています。支給内容は年度によって変更される可能性がありますが、一般的には学費、生活費、往復渡航費などが対象となります。

なお、世界銀行の奨学金制度には開発途上国出身者向けのプログラムと日本人向けの募集枠があり、応募資格や運用方法にも違いがあります(詳しくは後述)。

本記事で言う「世銀奨学金」は、主に日本/世界銀行共同大学院奨学金制度の日本人向けの募集枠を指します。ご了承ください。

日本人向けの募集枠

世銀奨学金には、日本国籍者を対象とした募集枠が設けられています。
応募要件や詳細な条件は毎年度変更になりますので、この項目では2025年度の内容をベースにご紹介します。

まず、主な応募要件は以下の通りです。

  • 日本国籍を有していること
  • 学士号取得後一定期間を経過していること
  • 開発関連分野における職務経験があること
  • 海外大学院(開発関連分野)への入学許可を得ている、または既に在籍していること
  • 募集期間の開始日またはそれ以降の募集期間中、日本政府やJICA等の機関に雇用されていないこと

また、選考では学歴や推薦状だけでなく、職歴や国際開発へのコミットメントが重視されており、特に「将来的に開発分野へどのように貢献していくか」が重要な評価要素となっています。

主な支給対象は、以下のとおり。受給期間は最長2年間です。

  • 大学院の授業料
  • 月額の生活費
  • 渡航費(往復航空券等)
  • 基本的な医療保険料

一方で、家族の帯同費用や追加の旅行費用、研究活動に伴う支出などは原則として支給対象外となっています。

開発学専攻じゃなくても応募を諦める必要はない

先述の通り、世銀奨学金は本来的に開発関連分野専攻で留学する人のための制度です。
これは開発関連職歴が要件にあり、さらに推奨大学院・プログラムのリストも用意されている点からも明らか。

つまり、理想的な候補者プロフィールは、専攻分野が開発学であったり、留学先が推奨する大学院のプログラムに進学する人、ということになります。

しかし、少なくとも筆者のケースでは、専攻分野は国際関係・政治学(開発学そのものではない)。さらに留学先の大学院はIHEID(推奨大学院・プログラムのリストには入っていない)、という少しズレたプロフィールでも合格しています。

つまり、少なくとも日本人向けの募集枠においては、専攻名や大学名というよりも、これまでの職歴や大学院での学習内容と開発分野の距離であったり、将来的にどのように開発分野へ貢献していくのかというポテンシャルが評価されているように感じます。

もちろん、応募要件や運用は年度によって変更される可能性があります。

しかし、「開発学専攻ではないから」「推奨大学院のリストに載っていないから」といった理由だけで応募を諦めてしまうのは、少しもったいないように思います。

【参考】私が合格した当時の状況

参考までに、筆者が世銀奨学金に出願した際の状況を簡単にご紹介します。

学歴・職歴など

奨学金合格時の筆者のプロフィールは以下の通りです。

  • 30代後半
  • 地方公務員経験10年超(ただしジョブローテで部署を転々としたため、分野一貫性は薄い)
  • シンガポール駐在経験あり
  • IHEID修士課程1年次在籍中

なお、筆者の専攻は国際関係・政治学であり、開発学ではありません。
また、国際協力・開発協力分野を専門とする職歴もありませんでした。

応募したタイミング

世銀奨学金に応募したのは、IHEID修士1年次在籍中。
つまり既に修士課程が始まっていた状態でした。

最大2年間学費・生活費等の支援が受けられる制度であるため、本来であれば修士課程開始前に受給できるのが理想でしたが、当時はまだ地方公務員としての身分を保有していたことから、応募を見送るという判断をしました。

ちなみに、修士1年目は自費で留学生活を送りました(円安フラン高が直撃して大変だったなぁ…)。

筆者が考える合格のヒント

ここでは、筆者が考える合格に向けて意識しておきたいポイントをまとめます。

大学院の進学理由と将来のビジョンを明確に言語化しておく

大学院の志望理由書にも似たような内容を書いていますが、それは「大学院で学びたい理由」が中心であり、世銀奨学金で求められる「大学院で学んだうえで途上国の開発課題にどう貢献していきたいか」とは必ずしも一致しません。

開発分野との関連性に関して言えば、留学前のバックグラウンドは比較的幅広く考えてもらえるようですが、それとは別に、中長期的に開発分野に関わることを念頭にロジックやストーリーを考えておく必要があるでしょう。

また、世銀奨学金の出願要件には職歴が含まれているため、職歴と将来のビジョンとのつながりを意識することも非常に重要です。開発分野ダイレクトの職歴がない場合は、ここの説得力が合否を分ける鍵になりそうです。

こうした職歴と将来のビジョンとのつながりは世銀のミッションにも深く関わる内容であるため、大学院の入試よりもシビアに見られると考えておく方が良いと思います。

エッセイは「求める人物像」を意識して書く

前の項目で言語化した内容を具体的に落とし込む場所がエッセイ。

ロジックやストーリーの整合性が様々な角度から検証される場なので、そこを完璧にしつつ、世銀のミッションに貢献できるようなキャリアの道筋を描くことが重要です。

これまで何を考えて職歴を積み、なぜ大学院が必要で、そこでの学びをどう途上国の開発や社会課題の解決に繋げていくのか、そして将来的にどのような自分になりたいか、とにかく具体的にイメージして文章に落とし込むのが重要。

さらに、応募書類は全て英語で書く必要があるので、成果などは嘘にならない程度にしっかりとアピールしないといけません。日本的な謙虚さはここでは全てマイナスになると考えた方が良いでしょう。

具体的なエピソードの論述方法については、STAR(状況、課題、行動、結果)法が参考になるでしょう。

数値で表現できるなら数値を入れる、active verbを使う、といった国際機関のお作法をある程度知っておくと、国際的に通用する(=将来的に世銀のミッションに貢献できる)人材であることをアピールすることができます。

CVは必要な職歴を抜き出してストーリーを見せる

職歴と推薦状が求められているため、職歴部分は厚めに。

その際、CVと推薦状双方の内容に齟齬が無いようにすることはもちろん、エッセイで取り上げた成果に関連する内容については、なるべく数値も含めて詳細に記述する必要があると思います。

なお、英文CVの各項目については箇条書きと文章にまとめる方法がありますが、筆者個人としては、重要項目を拾ってもらいやすいというメリットのある箇条書きを推奨します。

各項目の冒頭にはactive verbを意識的に使い、しっかりアピールしましょう。

職歴や書ける実績が多い場合は、エッセイで取り上げた内容については必須、その他については他の応募書類とのバランスを見て選ぶのがおすすめです。

推薦者にも成果やストーリーを共有し、負担を最小限に

世銀奨学金の応募にあたっては、推薦状が必須。
出身校からの推薦状と専門性に関する推薦状(主に職場の上司から)の両方が必要になります。

筆者個人としては、その中でも特に、専門性に関する推薦状が重要だと考えています。
理由としては、職歴が応募要件の一つであり、かつ、卒業後に世銀のミッションに貢献できるポテンシャルが選考プロセスにおいて審査されるためです。

もちろん例外はあるとは思いますが、大学教授は英文推薦状の執筆に慣れている可能性が高いものの、職場の上司などは必ずしもこのような文書の作成に慣れているとは限りませんし、仕事とは直接関係のないお願いに対して時間を割いてもらうことは、業務のスケジュールなどの都合で難しいかもしれません。

そのため、推薦状に書いてほしい内容をあらかじめ伝えておく、必要なら文案を作成するなど、応募者が適宜サポートする必要が出てきます。エッセイなどでアピールしたいストーリーや成果について事前に推薦者に伝えて、推薦状にある程度反映してもらえるようにしておくのも重要です!(直属の上司であってもあったことを全て覚えていることは少ないので…)

なお、推薦者には候補者の特筆すべき成果や奨学金受給に足る人格を有することなどを具体的に語ってもらう必要があるため、とにかく実務で関わった人(理想は直属の上司)にお願いするのがおすすめ。あくまで内容が重要なので、推薦者の人選にあたっては社会的な地位はあまり優先しない方が良いと思います。

世銀のキャリア関連資料にも目を通しておく

最後に、世銀奨学金の応募書類を作成するにあたっては、世界銀行が公開しているキャリア関連情報にも目を通しておくことをおすすめします。

世界銀行東京事務所では、世銀グループ各ポジションへの応募準備に関する情報を公開しており、履歴書の書き方や面接対策、世界銀行職員のキャリア事例などを知ることができます。

こちらで紹介されている情報は、あくまで世銀グループへの応募を検討している方向けの情報が中心であり、世銀奨学金そのものを対象としたものではありません。しかし、国際機関がどのような人材を求めているのかを理解するうえでは非常に参考になります。

また、CV作成の手引きや英文応募書類の考え方など、世銀奨学金の応募書類作成にも応用できる内容が含まれているため、一度目を通してみる価値はあると思います。

他にも日本人職員によるキャリア紹介記事やインタビューなども公開されているため、興味のある方はぜひ検索してみてください。

応募から受給までの流れ

ここでは筆者が具体的に応募したスケジュールをご紹介します。

実際の応募スケジュール

筆者は2月に申し込みました。

結果通知と受給開始のスケジュールについては公開されていませんが、筆者の場合は5月に合格通知を受け取り、翌セメスター(第3セメスター)から受給を開始しました。

ただし申込に向けた準備は(後述の通り)前年の12月頃には既に始めていました。

応募時に必要だったもの

応募時に用意したのは以下のものです。

  • 英文CV
  • 推薦状(アカデミックの推薦者とプロフェッショナルの推薦者)
  • 雇用履歴証明書
  • 卒業証明書(学部)

英文CVについては前述の内容に注意して作成しました。

推薦者については前年12月頃に推薦者にコンタクトを取り、調整を始めました。
雇用履歴の証明書については記憶が曖昧ですが、こちらも同時期にお願いしたと思います。

特にプロフェッショナルの推薦者が非常に忙しい方だったため、奨学金申請関連の連絡調整や具体的な推薦内容の作成にかなりの時間を使った記憶があります。

受給中に疑問に思ったこと

ビジネススクール(リヨン)への交換留学

前述の通り第3セメスターから受給を開始したわけですが、その時期に予定していた交換留学絡みの不安が…。
それは、交換留学先がビジネススクールだったことです。

開発学専攻をメインの対象に据えた奨学金を、おおよそ大義名分と関係なさそうなビジネススクールへの交換留学中に受給できるのか?当時かなり不安に感じていました。

しかし結論から言うと、交換留学は元の大学院に在籍したまま学ぶ制度であるため、特に問題はありませんでした。開発分野からさらに離れることになる学校ではありましたが、受講内容に制限がかかることもありませんでした。

大本の留学内容が国際開発に根差しているのであれば、どうやらそのあたりは柔軟みたいです(とはいえ、元々の関心に従った結果派遣元と似たような毛色の科目ばかり受講していましたが…)。

ただし、生活の基盤が一時的にジュネーヴからリヨンに移った関係で、このセメスター期間中は生活費(月額)が調整されました。

まとめ

本記事では、世銀奨学金(JJ/WBGSP)について、筆者の経験をもとにご紹介しました。

世銀奨学金は決して簡単に合格するものではありませんが、もし合格できれば留学生活をより有意義に活用することができるはず。もし将来的に開発分野を目指すなら、「自分には関係ない」と決めつけず、一度募集要項に目を通してみることをおすすめします。

この記事が、これから海外大学院留学を考えている方の参考になれば幸いです。

以上です。

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