ヨーロッパの中心に位置する永世中立国・スイス。
ハイジや高級時計といったイメージでお馴染みの同国ですが、実は教育レベルの高さでも有名です。日本ではあまり知られていないものの、スイスには世界ランキングで上位を獲得している大学や、その道で有名な教育機関が多く立地しています。
今回はそんなスイスが留学先としておすすめできる理由をご紹介します。
筆者が留学中に感じたメリットも織り交ぜつつご紹介します。
教育に対する評価が高い
人口当たりの大学ランキング上位の大学の割合が世界一
スイスは日本と比較すると非常に小さい国(面積は日本の9分の1&人口は日本の14分の1)ですが、ETH Zurich(7位)を筆頭に世界ランキング(総合)で100位に入る大学が3校もあります。
総合順位 | 大学名 | 所在地 |
---|---|---|
7 | ETH Zurich(連邦工科大学チューリヒ校) | チューリッヒ |
36 | École Polytechnique Fédérale de Lausanne(連邦工科大学ローザンヌ校) | ローザンヌ |
91 | University of Zurich(チューリッヒ大学) | チューリッヒ |
ちなみに同ランキングで総合100位以内にランクインした日本の大学は、東京大学(28位)、京都大学(46位)、大阪大学(80位)、東京工業大学(91位)の5校。スイスの規模を考えるとその凄さが分かると思います。
特定分野に強みを持つ教育機関も多い
スイスは国際機関のハブであると同時に、金融産業をはじめとするビジネスの集積地でもあります。
特定の学術分野に特化した教育機関はランキングでほぼ見かけることはありませんが、スイスにはその道のプロには非常に知名度が非常に高い機関がいくつもあるのが魅力。
教育機関名 | 強みを持つ分野 |
---|---|
The Graduate Institute of International and Development Studies (IHEID) | 国際関係学・開発学 |
Geneva Academy of International Humanitarian Law and Human Rights | 国際人道法 |
International Institute for Management Development (IMD) | ビジネス |
これらの教育機関は通常の大学ランキングではほぼ見かけませんが、専門性の高い分野別のランキングでは上位に現れることが多いです。
国際的な学習環境
留学生の割合が高い
スイスの教育機関の特徴は非常に国際的であること。
2021年のデータでは、OECD加盟国の中で5番目に高等教育の外国人学生の割合が多い(18%)という結果になりました。日本はOECD平均とほぼ同じ6%なので、両者を比較するとスイスの高等教育機関が非常にコスモポリタンであることが分かります。
国名 | 留学生の割合(%) |
---|---|
ルクセンブルク | 49 |
オーストラリア | 22 |
イギリス | 20 |
オーストリア | 19 |
スイス | 18 |
OECD平均 | 6 |
日本 | 6 |
この国際性の高さが人種や宗教などによる差別のない学習環境につながっていたり、アジアや中東、アフリカといった各地域の学生から成る団体が積極的に活動する土台を形成していたりします。
IHEIDの場合、入学前には教育現場で起きる差別への対応方法などに関するオンライン研修の受講が必須です。
また欧米ではアジア人差別がたびたび問題になりますが、ジュネーブではそのような差別を経験したことは(今のところ)ありません。
大学院レベルでは英語で学べるプログラムが充実
詳しくは後ほどご紹介しますが、スイスの公用語は4つ(ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語)。英語は含まれません。
そのため学部レベルではそれぞれの大学の立地するエリアの言語で提供されるプログラムが主ですが、大学院レベル(修士課程・博士課程)では一転して英語で提供されるプログラムがかなり多いです。もちろんエリアごとの主要言語で行われるプログラムやコースもあるので、そのあたりはお好みで!
以上の点から、大学院レベルの留学であればドイツ語やフランス語といった言語が使えなくても学位の取得が目指せます。
IHEIDのようにバイリンガリズム(2言語による教育)を掲げている場合は、指定された複数言語をある程度のレベルまで習得する必要がありますが、この例はちょっと特殊。
なお大学院では英語で済んでも、街中ではそうはいかない場面も(たまにですが)あります。せっかくの機会なので、スイス渡航前に現地語を一通り学んでおくのがおすすめです。
リーズナブルな学費
アメリカ・イギリスよりも安い
スイスの高等教育機関(大学)の学費は留学生に人気の高いアメリカやイギリスよりも一般的に割安。ランキング上位大学の外国人留学生向けの学費(修士課程、セメスターごと)の例は以下のとおりです。
大学名 | 外国人留学生の学費(セメスター) |
---|---|
ETH Zurich(連邦工科大学チューリヒ校) | 800 CHF(約14万円) |
École Polytechnique Fédérale de Lausanne(連邦工科大学ローザンヌ校) | 780 CHF(約13万円) |
University of Zurich(チューリッヒ大学) | 820~1,220 CHF(約14~21万円) |
学費は教育機関の形態(公立・私立)や専攻によって異なるものの、アメリカやイギリスのように年間500~1,000万円かかるということはほぼありません。
スイスの学費の安さを利用して学費の高い国に交換留学に行けば、かなりお得に授業を受けることができます。もし提携先にお金が理由で諦めた教育機関が入っていたらチャンス!
交換留学先の物価がスイスよりも安ければ、同時に生活費の節約もできます。
生活費の高さは知恵でカバーできる
スイスの物価は世界でも上位に入るほどの高さ。
ですが、固定費としてかかる学費以外の生活費であれば、工夫次第で節約&調節することが可能です。
- 学生であれば食料を無料でもらえるLa FARCE
- 廃棄予定の食品が格安で手に入るToo Good To Go
- スーパーマーケットやカフェの会員サービスを利用する
スイスの生活費節約方法についてはこちらの記事でまとめています。
キャリア・資産形成の面で有利
初任給&若手の給与水準は世界一
スイスでは初任給~若手の給与水準が非常に高いです。
ドイツのオンライン銀行N26が発表したThe Education Price IndexにおけるJunior Salary Level(初任給~若手の給与水準)のランキングでは、スイスが世界一になりました。
Junior Salary Levelは経験年数0~2年の年間給与(比重80%)と同2~5年の年間給与(比重20%)をもとに算出されています。つまりこのデータは初任給と若手時代の給与水準を示しています。
同ランキングにおけるその他の国の順位は以下のとおり。日本はトップ5には入っていませんが、比較のために数値を示します。
順位 | 国・地域 | 平均初任給(年間) |
---|---|---|
1 | スイス | 81,776ユーロ(約1,300万円) |
2 | アメリカ | 59,456ユーロ(約950万円) |
3 | デンマーク | 52,045ユーロ(約830万円) |
4 | オーストラリア | 51,048ユーロ(約820万円) |
5 | ベルギー | 50,651ユーロ(約810万円) |
参考 | 日本 | 37,963ユーロ(約607万円) |
このデータだと、スイスの若手の給与水準が非常に高く、日本の若手の2倍以上になるということが分かります。
最低賃金も非常に高い
EU圏外からの学生がスイスで職を見つけるのは非常に難しいですが、学生としてスイス国内でアルバイトして学費を工面をすることならできます。
アルバイトでお金を稼ぐ場合に気になるのが最低賃金ですが、こちらもスイスは非常に高いです。なおスイスでは国としての最低賃金は設定しておらず、州(カントン)によって異なります。
例えばジュネーブ州の時間あたり最低賃金は24.32CHF。これは2024年3月現在のレートで約4,000円にあたります。東京は1,113円なので、ジュネーブ州の最低賃金は東京の約4倍ということになります。
スイスでもジュネーブ州は最低賃金が高い方なので他の州の最低賃金はもう少し低いですが、それでも19CHF程度。日本とはかなり大きな開きがある事実は変わりません。
アルバイトであったとしても、何かしら職を見つけられればかなりの収入が見込めます。
インターンシップ・ネットワーキングの機会も多い
ジュネーブでは、国際機関や国際NGOでのインターンシップの機会が豊富。
IHEIDでは国連各機関が学生向けに説明会を開催したりします。
また学生でも参加可能なネットワーキングイベントや学生団体Student Initiativesによる学術イベントなどの機会を利用して、学生同士はもちろん他機関の職員へのネットワークも広げることが可能です。
スイスに銀行口座が持てる
スイスは銀行産業でも有名な国。
いわゆるプライベートバンクに口座を開設するのは非常にハードルが高いですが、普通の銀行口座であればスイスで銀行口座を開設することができるので、それだけでもスイスの銀行やスイスフランのメリットを享受することができます。
スイスに銀行口座を開く具体的なメリットとしては、以下の項目が挙げられます。
- スイスは永世中立国として信頼度が高い
- プライベートバンクでなくとも一定程度の口座の秘匿性が期待できる
- メインの取引通貨が値動きの少ない安全資産である「スイスフラン」である
以上の点から、資産の分散先として非常に優秀だと言えるでしょう。
留学先の資金管理場所としてUBSで口座を開設したときの体験談はこちらの記事で。
語学習得にも最適な環境
スイスではバイリンガル・マルチリンガルが当たり前
スイスの公用語は、ドイツ語(スイスドイツ語を含む)・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つ。そのため、多くのスイス人が2言語以上(一つの現地語と英語、もしくは複数の現地語と英語)を話すことができます。
母語とする現地語の割合は以下のとおり。
言語 | 割合 |
---|---|
ドイツ語・スイスドイツ語 | 60% |
フランス語 | 20% |
イタリア語 | 8% |
ロマンシュ語 | 1% |
上記の事情から、外国語学習者に対しては非常に寛容です。
特にフランス語についてはフランス語の本場であるフランスよりも若干ゆっくりめで、学習者が使うフランス語にも寛容です。間違えても問題ない環境が整っているので、挑戦しやすいと言えるでしょう。
フランス(特にパリ)で感じる「フランス語圏ではフランス語を話すべき!」という強迫観念のようなものは全くありません。
たどたどしいフランス語であってもパリのようにあからさまに不愉快な態度をとる人は(ほぼ)いないので、安心してチャレンジできます。
英語の通用度も非常に高い
スイスは英語を公用語に指定しているわけではありませんが、割と多くの人が英語を解します。またジュネーブ限定ではありますが、国際機関や関連する研究機関・教育機関が立地しているため英語を話す人がたくさんいるという側面も。
なお病院や行政機関にも英語話者がいるので、現地語が話せなくてもそこまで重大な問題にはならないことがほとんどです。(現地語が話せれば色々とスムーズに進むので理想的ではありますが…)
留学生が過ごしやすい環境
この項目は「ジュネーブの住みやすさ」の記事とかぶる部分が多いので、簡単に項目と説明を。
- 治安が非常に良い:(エリアにもよりますが)夜間に街を歩いてもそこまでの危険は感じません。
- 美しい町並み:歴史的な建造物と近代的な建造物が調和する景観が素敵。
- 人が優しくて親切:日本のようなサービス体験が可能。
- 食べ物がおいしい:ワインやチーズといったローカル生産品が豊富&おいしい。
- 水道水が飲める:日本のような感覚で水を飲んだり料理に使ったり。
各項目の詳細はこちらの記事で。
まとめ
本記事では、スイスが留学先としておすすめできる理由を6つご紹介しました。
まとめると以下のとおり。
- 教育に対する評価が高い
- 国際的な学習環境
- リーズナブルな学費
- キャリア・資産形成の面で有利
- 語学学習にも最適な環境
- 留学生が過ごしやすい環境
以上です。スイスへの留学を検討されている方の一助となれれば幸いです。
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