実はアラビア語に関心のあった筆者。
今回色々な偶然が重なり、オマーンでアラビア語を勉強する機会を得ることができました。
この記事では、備忘録も兼ねてそのときに学んだ内容のアウトプットと、この機会を得て何を学び何が出来るようになったのかについてまとめたいと思います。
結論から言うと、1ヵ月間という短期間でしたが基本的なことがかなり分かるようになりました。
筆者の通ったアラビア語学校Noor Majan Instituteの体験記はこちらからどうぞ!
筆者のアラビア語能力(渡航前)
まず簡単に筆者のアラビア語のスペックから。
リーディング・リスニング
アラビア語の文字の種類は知っているが、記憶には定着していない。それぞれの形や音については参考書を見ないと分からないレベル。文章は基本的に読めない。日常的な挨拶程度であれば聞いて理解できるが、それ以上の内容になると全く分からない。
ライティング・スピーキング
まず文字を理解していないので書くのは無理(自分の名前も書けない)。スピーキングは定型文のみ可能で、最初の挨拶が終わったらもう何も話せないレベル。
1ヵ月で学んだアラビア語の基礎まとめ
筆者が学んだアラビア語の種類
アラビア語は文語と口語が全く異なる言語です。今回学んだのは、標準語とも言える「フスハー」。学校の所在地及び滞在地はオマーンのマスカットでしたが、オマーン方言を含む各種の方言は全く学んでいません。
読み方のルール
本格的に文字を学習する前に取り組んだのが、読み方のルール(長母音や短母音等を示す発音記号)を覚えることです。ルールはかなりシステマティック。
例えば以下のようなことを学びました。
形 | 名称 | 読み方※ | 説明 |
---|---|---|---|
َ | fatHa | ファトハ | 横棒のような形の記号。 文字の上につけて短母音(a)を表す。 |
ُ | Damma | ダンマ | 9のような形の記号。 文字の上につけて短母音(u)を表す。 |
ِ | kasra | カスラ | 横棒のような形の記号。 文字の下につけて短母音(i)を表す。 |
ً | tanwiin al-fatH | タンウィーン・ファトハ | 二重線のような形の記号。 文字の上につけて短母音(a)+詰まった音(n)=an(アン)の音を表す。「ا」(アリフ)とセットで用いる。 |
ٌ | tanwiin aD-Damm | タンウィーン・ダンマ | 9が伸びたような形の記号。 文字の上につけて短母音(u)+詰まった音(n)=un(ウン)の音を表す。「و」(ワーウ)とセットで用いる。 |
ٍ | tanwiin al-kasr | タンウィーン・カスラ | 二重線のような形の記号。 文字の下につけて短母音(i)+詰まった音(n)=in(イン)の音を表す。「ي」(ヤー)とセットで用いる。 |
ْ | Sukuun | スクーン | 丸のような形の記号。文字の上に付けて詰まった音(n)を表す。 |
ّ | shadda | シャッダ | wのような形の記号。上述の短母音3種と組み合わせて使用され、詰まった音(n)+対応する短母音(a,u,i)を表す。 |
日常生活で目にするアラビア語では以上のような記号は省略されていることも多いですが、まずはルールが分からないと話になりません。基本的にはこれらの記号がないと発音できませんが、単語を学ぶうち、次第に記号が振られていなくても読めることが増えてきました。
また長母音を示す発音記号は以下のとおりです。
文字と同じように単語に割り込んでいますが、文字ではない点に注意が必要です。
形 | 読み方 | 説明 |
---|---|---|
ا | aa | いわゆるアリフと同じ形の記号で、aの長母音を表す。 |
و | uu | いわゆるワーウと同じ形の記号で、uの長母音を表す。 |
ي | ii | いわゆるヤーと同じ形の記号で、iの長母音を表す。 |
こちらは普通の文字と発音用の記号を見分けるのが難しいですが、だんだん分かるようになってきました。
これらを理解することで、ようやくアラビア語が少しずつ読めるようになってきました。小学生が振り仮名なしで漢字を読めるようになるのと同じようなイメージかも…。
文字と発音
次に、アラビア語の文字とそれぞれに対応する音を学習しました。日本語の文字に比べると数は多くない(28文字)ですが、文頭・文中・文末で形が異なったり、接続する・しないの区別があったりして意外と複雑なので少しずつ学びました。
新しい文字を学ぶごとに行った内容は以下のとおりです。
- 文字の独立形・文頭形・文中形・文末形を学ぶ
- 短母音・長母音・タンウィーンをつけたときの読み方を実際に読んでみる
- 実際の単語を使用して、正しい形を書いてみる訓練を行う
この作業を文字ごとに繰り返していたので、発音記号も合わせて学ぶことができました。
なお、アラビア語の文字には太陽文字(حروف شمسية:ハルフ・シャムシーヤ)と月文字(حروف قمرية:ハルフ・カマリーヤ)があり、定冠詞(الアリフとラーム:アルと発音)をつけたときに異なる発音(太陽文字だと「アッ」、月文字だと「アル」となる。ل(ラーム:Lの音)が聴こえるかの違い)をします。
どの文字が太陽文字(もしくは月文字)に属するかは覚えるしかないので、定冠詞付きの単語が出てくるたびに確認をしていました。
まとめると以下のようになります。
☀太陽文字(حروف شمسية) | ☽月文字(حروف قمرية) | ||||
---|---|---|---|---|---|
文字(独立形) | 文字の読み方 | 対応する音 | 文字(独立形) | 文字の読み方 | 対応する音 |
ت | taa | t | أ | hamza | a |
ث | thaa | th | ب | baa | b |
د | daal | d | ج | jiim/giim | j |
ذ | dhaal | dh | ح | Haa | ḥ |
ر | raa | r | خ | khaa | kh |
ز | zaay | z | ع | cayn | ʻ |
س | siin | s | غ | ghayn | gh |
ش | shiin | sh | ف | faa | f |
ص | Saad | ṣ | ق | qaaf | q |
ض | Daad | ḍ | ك | kaaf | k |
ط | Taa | ṭ | م | miim | m |
ظ | DHaa | ẓ | ه | haa | h |
ل | laam | l | و | waaw | w |
ن | nuun | n | ي | yaa | y |
アラビア語の数字
また数字も学びました。アラビア語ではアラビア数字(算用数字)ではなく、インド数字が使用されます。
アラビア数字 | インド数字(アラビア語)表記 | アラビア語表記 | 読み | 日本語読み※ |
---|---|---|---|---|
0 | ٠ | صفر | Sifr | シフル |
1 | ١ | واحد | waaHid | ワーヘド |
2 | ٢ | إثنان | ithnayn | イスナーン |
3 | ٣ | ثلاثة | thalaatha | サマーニーヤ |
4 | ٤ | أربعة | arbaca | アルバァ |
5 | ٥ | خمسة | khamsa | ハムザ |
6 | ٦ | ستة | sitta | スィッタ |
7 | ٧ | سبعة | sabca | サバァ |
8 | ٨ | ثمانية | thamaaniya | サマーニーヤ |
9 | ٩ | تسعة | tisca | ティサア |
10 | ١٠ | عشرة | cashara | アシャラ |
性別の概念がある
文字と並行して、基本的な語彙を学びました。種類としては、最初はまず挨拶やコミュニケーションに用いる表現(まずは書くというより覚えて話すイメージ)から、そして少しずつ身の回りの物品や一般的な事柄に広がっていきました。
テキスト2冊目(スキット中心)に移ってからは、そのストーリーに関連した語彙を増やしていきました。
アラビア語の名詞には男性・女性の区別があります。
例えばこんな感じです。
男性名詞※ | 女性名詞※ |
---|---|
شباك シュッバーク(窓) | سيارة サイヤーラ(車、自動車) |
كرسي コルシー(椅子) | ساعة サーア(腕時計、掛け時計、時間) |
語尾で区別可能なことが多く、「ة」(ター・マルブータ)があれば大体女性です。
なお形容詞にも性別がありますが、男性形・女性形でほぼ同じ形のことが多く、その場合は男性形に「ة」をつければ女性形に変えられます。
形容詞(男性形)※ | 形容詞(女性形)※ | 意味 |
---|---|---|
صغير サリール | صغيرة サリーラ | 小さい、若い |
كبير カビール | كبيرة カビーラ | 大きい、(年齢が)高い |
さらに誰かの帰属(国籍等)について述べる場合も、その事項をその人の性別に応じた形に変える必要があります。
帰属(基本形) | 男性形 | 女性形 | 意味 |
---|---|---|---|
اليابان (al-Yābān) | ياباني (Yābānī) | يابانية (Yābāniyah) | 日本・日本人(男性)・日本人(女性) |
動詞は主語に合わせて活用する
基本的な動詞の活用についても学びました。
活用形は特定の文字を前後に付けると作れます。
主語(日本語) | 主語(英語) | アラビア語 | |
---|---|---|---|
私 | I | أعمل a’mal | |
あなた(男性) | You | تعمل ta’mal | |
あなた(女性) | You | تعملين ta’malīn | |
彼 | He | يعمل ya’mal | |
彼女 | She | تعمل ta’mal | |
私たち | We | نعمل na’mal | |
あなたたち | You | تعملون ta’malūn | |
彼ら(男性のみ・男女混合) | They | يعملون ya’malūn | |
彼女たち(女性のみ) | They | يعملن ya’malna |
複数形の作り方は大きく分けて3種類
アラビア語は、英語のように文字を追加するだけでは複数形は作ることができません。数文字加わるだけならまだマシで、場合によっては単語の形が全く変わってしまいます。そういった不規則変化は覚えるしかないという鬼畜仕様です(まあ語学あるあるですが)。
具体的には、まずアラビア語の複数形には大きく分けて3種類の類型があります(男性複数語尾、女性複数語尾、不規則形)。
最初の2つはまだシステマティックなので慣れればそこまで難しくないですが、最後の類型(不規則形)はパターンはあるものの例外が多く、結局は覚えるしかありません。
また、単語ごとに複数形が「2つ」「3つ以上」の2種類存在します。
まずは「男性複数語尾」(جمع مذكر)と「女性複数語尾」(جمع مونت)から。「男性複数語尾」は人間を表す単語にのみ使用し、「女性複数語尾」は人間を表す単語と人間以外を表す単語の両方に使用します。
類型名 | 意味 | 単数 | 2つ | 3つ以上※ |
---|---|---|---|---|
男性複数語尾(جمع مذكر) | 選手 | لاعب | لاعبان | لاعبات)لاعبون) |
女性複数語尾(جمع مونت) | スピーカー | سماعة | سماعتان | سماعات |
「男性複数語尾」は語尾に文字を足し、「女性複数語尾」は3つ以上の場合「ة」を削除してから語尾に文字を足します。
続いて「不規則形」(جمع التكسير)です。複数形になると途中に文字が挟まったり全く異なる形に変化するため英語ではBroken Pluralsと呼ばれます(アラビア語も同じ意味)。ここでは筆者が学んだ2パターンのみを挙げます。
パターン | 単数 | 2つ | 3つ以上 | 意味 |
---|---|---|---|---|
أَفْعَالٌ | وَلَد (walad) | وَلَدَان (waladān) | أَوْلاد (awlād) | 少年 |
فُعُولٌ | بَيْت (bayt) | بَيْتَان (baytān) | بُيُوت (buyūt) | 家 |
複数形の作り方については、時間の制約もあって全てのパターンを学ぶことはできませんでした。これについてはこれから少しずつ積み上げていきます。
所有格は語尾につく
アラビア語の所有格(英語で言うmy, your等)は単語の後ろにつき、対応する主語に応じて異なる形になります。また名詞のように機能する動詞?も同じように主語に対応した形に変化させます。
例えばこんな感じ。
所有格(日本語) | 例 | 語尾 | 主語 |
---|---|---|---|
私の | 私の本: كِتَابِي (kitābī) | ـي (-ī) | أنا(アナ) |
あなた(男性)の | あなたの車: سَيَّارَتُكَ (sayyāratuka) | ـكَ (-ka) | انتَ(アンタ) |
あなた(女性)の | あなたの車: سَيَّارَتُكِ (sayyāratuki) | ـكِ (-ki) | انتِ(アンティ) |
彼の | 彼の家: بَيْتُهُ (baytuhu) | ـهُ (-hu) | هو(フワ) |
彼女の | 彼女の友達: صَدِيقَتُهَا (ṣadīqatuhā) | ـها (-hā) | هي(ヒヤ) |
私たちの | 私たちの家: بُيُوتُنَا (buyūtunā) | ـنَا (-nā) | نحن(ナハヌ) |
あなたたちの | あなたたちの車(男性): سَيَّارَاتُكُمْ (sayyārātukum) | ـكُمْ (-kum) | أنتم(アントゥム) |
彼らの | 彼らの本: كُتُبُهُمْ (kutubuhum) | ـهُمْ (-hum) | هم(フム) |
彼女たちの | 彼女らの友達: صَدِيقَاتُهُنَّ (ṣadīqātuhunna) | ـهُنَّ (-hunna) | هن(フナ) |
基本的な疑問形
代表的な疑問詞についても学習しました。
例えば以下のような感じです。
疑問詞 | 意味(英語) | 使い方 |
---|---|---|
ما(mā) | What (+ without verbs)? | ما هذا؟ 「これは何ですか?」 |
ماذا(mādhā) | What (+ verbs)? | ماذا تفعل؟ 「何をしていますか?」 |
أي(ay) | Which? | أي كتاب تقرأ؟「どの本を読んでいますか?」 |
من(man) | Who? | من جاء؟ 「 誰が来ましたか?」 |
أين(ayna) | Where? | أين تعيش؟ 「どこに住んでいますか?」 |
كيف(kayfa) | How? | كيف حالك؟「お元気ですか?」 |
هل(hal) | (introduces yes/no question) | هل تحب السفر؟「旅行が好きですか?」 |
هتى(matā) | When? | متى تأتي؟ 「いつ来ますか?」 |
كم(kam) | How many?/How much? | كم عمرك؟ 「何歳ですか?」 |
لماذا (limādhā) | Why? | لماذا لم تذهب؟ 「なぜ行かなかったのですか?」 |
渡航前と比較してできるようになったこと
以上のことを学び、渡航前と比較して以下のようなことができるようになりました。
結論、かなり進歩した気がします!
リーディング・リスニング
アラビア語の文字の種類は知っているが、記憶には定着していない。それぞれの形や音については参考書を見ないと分からないレベル。文章は基本的に読めない。日常的な挨拶程度であれば聞いて理解できるが、それ以上の内容になると全く分からない。
→アラビア語の文字が全て認識可能。時間はかかるものの、基本的な疑問詞や知っている単語が含まれる文章であれば読んで理解ができるようになった。街中の看板や標識が読めるようになった。
ライティング・スピーキング
まず文字を理解していないので書くのは無理(自分の名前も書けない)。スピーキングは定型文のみ可能で、最初の挨拶が終わったらもう何も話せないレベル。
→基本的な情報(氏名・年齢・出身等)をアラビア語で書けるようになった。また定型文の挨拶を超えて簡単な文章の発話と質問・応答ができるようになった。
まとめ
1ヵ月という短期間ではありましたが、基礎からかなり本格的に知識を身につけられたと思います。先生に感謝!
渡航前はこんな風にブログ記事にまとめられる状態までいけるとは思っていませんでした!
これから身につけた語学力をもっと伸ばしていけるよう頑張ります。
以上です。
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