旅行が大好きな私にとって「食」は旅の大きな楽しみの一つ。
今回久しぶりに渡航した香港はまさに「食」の宝庫。特に海鮮料理がおいしいことで有名ですよね。
ところが問題が…。私は甲殻類アレルギー持ちなのです。海老や蟹を食べると唇が腫れたり、体調が優れなくなったりすることがあります。大人になってから突然発症したもので、もともとは大好物だった甲殻類を避けなければならないのは正直なところかなりつらいです。
さらに香港では海鮮を隠し味的に使うことが多かったり、英語がいまいち通じづらい場合があることも懸念事項。
アレルギーを完全に避けるのは難しいかもしれない。それでも「ある程度制約があるのは承知のうえで、できる限り楽しみたい」という気持ちで出発しました。
この記事では、私が実際に体験した注意点や対策、安心して食べられたメニュー、避けるべき食材表現、そして「助かったお店」まで詳しくご紹介します。香港旅行を計画しているアレルギー持ちの方や、そのご家族・パートナーの参考になれば幸いです。
香港グルメの魅力とアレルギー的に注意すべき点
香港グルメの魅力といえばやはり豊富な海鮮料理。点心、炒め物、スープに至るまで、海老・蟹など甲殻類がふんだんに使われています。
メニューに甲殻類があれば避けることができますし、日本のようにアレルゲン表示がある程度浸透していれば問題ないと思いきや、メニューや店員の説明に甲殻類の存在が明記されていないことが多い点が厄介です。「実はXO醤に干し海老が入っていた」などのパターンも少なくありません。
また、点心やスープのように「見た目では判断できない」料理も多く、味付けに隠れて使われている甲殻類系の出汁やソースにまで気を配る必要があります。香港では海老味や蟹の旨味を重視する傾向が強いため、思わぬところにリスクが潜んでいます。

日本人旅行者も良く行くワゴン式飲茶は(場所にもよりますが)見た目による判断が求められるので、慣れないと正直ハードルが高いです。メニューをじっくり確認でき、質問もできるオーダー式の方が安全。
私自身、レストランのメニューに「海老」「蟹」などの表記がなく安心して注文したところ、ひと口目で「これは危ないかも」と違和感を覚えた経験も(後述)。幸い大事には至りませんでしたが、以降は慎重になりました。
旅先で実践したアレルギー対策とコミュニケーションの工夫
筆者は香港でアレルゲン物質を摂取しないよう、以下のような対策を取っていました。
コミュニケーションの手段を準備する
現地での外食を安全に楽しむために、いくつかの工夫を実践しました。
まず、英語で自分が甲殻類アレルギー持ちであることを伝えられるようにしました。
例えば以下のような表現を覚えておくと役に立ちます。
- I have a shellfish allergy.(甲殻類アレルギーがあります)
- Does this contain shrimp or crab?(これは海老や蟹が入っていますか?)
- Please don’t add any shrimp, crab, or shellfish.(海老や蟹、その他の甲殻類は入れないでください)
さらに、香港のメニューによく出てくる甲殻類関連の表現もチェックしておくと安心です。
- 蝦(虾)=エビ
- 蟹=カニ
- 蝦仁=むきエビ
- 蝦膏=エビの発酵ペースト
- 蝦子=エビの卵
- 蟹柳=カニカマ
- XO醤=エビやホタテの入った海鮮ソース
これらの単語を見かけた場合は、たとえメニュー全体が読めなくても警戒するべきサインになります。
そのうえで、中国語(普通話)での簡単なアレルギー表現を覚えておきました。広東語ができない場合でも、英語と中国語(普通話)を備えておけば、ほぼ確実にコミュニケーションを取ることが可能です。
- 我对虾过敏(私は海老アレルギーです)
- 请不要加虾或蟹(エビやカニは入れないでください)
これらの定型フレーズを使うことで、英語が通じにくい場面でもある程度意思を伝えることができました。
また、翻訳アプリの活用も大きな助けに。あらかじめ「これは入っていますか?」「出汁に海鮮は使われていますか?」などの文章を登録しておくとスムーズです。
アレルギーに関連するお店を避ける
もう一つ効果的だったのは、海鮮系のお店(なんとか海鮮酒家系)を避け、海鮮料理を扱っていなそうなジャンルのお店を選ぶこと。
香港料理であれば、チャーシューなどの焼味を扱うお店(店先にローストダックが吊るされているので分かる)や茶餐廳などであれば、海鮮系メニューが全くないもしくは非常に少ないので割と安全です。気が向いたらマクドナルドのようなファストフード店の香港限定メニューを試してみても。
飲茶の場合は、ガチローカルなお店は避けてなるべく小奇麗な感じのところへ。メニューもマーラーカオのようなスイーツ系であればまず大丈夫です。
海鮮料理以外の香港料理オプションを用意しておく
「海鮮を避ける=食の楽しみが減る」と思われがちですが、実際の香港にはそれ以外の魅力的な料理もたくさんあります。特にファストフードやスイーツのジャンルは、甲殻類アレルギーの私でも安心して選べる場面が多く、旅の食体験を広げてくれました。
たとえば、マクドナルドのような国際的チェーンはアレルゲン表記が明確で英語も通じやすく、予想外に快適でした。また、ローカルな「大家楽」などでは写真付きのメニューや定番のセットメニューのおかげである程度安心して注文できます。


さらに、茶餐廳(チャーチャンテン)で味わえるトーストやミルクティー、そして「満記甜品」や涼茶舗でのマンゴースイーツや亀ゼリーなど、甘味系の選択肢も豊富です。
海鮮を避けながらでも「おいしい!」と思える体験はたくさんあり、香港の食文化の懐の深さを実感しました。
実際に安心して食べられたお店【エリア別】
ここからは筆者が実際に訪問したお店をいくつかご紹介します。



ここでは筆者が甲殻類の存在を感じなかったお店を紹介していますが、絶対に甲殻類が使われていないという保証があるわけではありません。注意。
海鮮が少ない香港スタイルのお店
まずはメニューに甲殻類が少なく、海老・蟹に遭遇する可能性が低いジャンルのお店。
茶餐廳(チャーチャンテン)
朝から夜まで営業している香港ならではのカフェレストラン。
ミルクティー、トースト、マカロニスープ、スパムなどの軽食を中心に、海鮮を避けつつ組み合わせで楽しめる。出汁の効いた麺類や複雑な料理は避けるのが無難ですが、シンプルな定番セットであれば比較的安心です。


冰室(ビンサッ)
昔ながらのレトロな雰囲気を残す軽食店で、茶餐廳の前身であり簡素でパン類やスイーツ系が中心。パイナップルパンやエッグタルトなど、素材が明確で安心できるメニューが多いです。
英語はあまり通じませんが、ローカルな雰囲気を味わいたい人にはおすすめです。


焼味(シウメイ)専門店
焼き物系(チャーシュー、ローストダック、焼き鶏など)を提供する店。基本的に甲殻類は使われないため、アレルギー持ちでも安心して楽しめます。
ご飯と組み合わせた焼味飯は香港ローカルの定番で、ボリュームもあり満足度が高いです。肉の調理方法や種類のオプションが豊富なので、色々試してみると面白いです。
ソースの確認は必要ですが、海鮮リスクは比較的低めです。


お粥(コンジー)専門店
香港で定番の朝食メニューと言えばお粥!
魚介系のお粥も多いですが、豚肉やピータンなどを使ったシンプルなお粥も多く、注文時に具材を確認すればアレルギー対応がしやすいです。消化にも良いので、旅の疲れを癒すにはぴったり。チェーン店やローカルの専門店では、写真付きメニューがあることも多いです。


漢方系の涼茶舗
亀ゼリーや薬膳ドリンクなど、食文化を感じつつリスクの少ないジャンル。日本では見慣れないメニューが目白押しで香港らしさを存分に楽しむことができます。万人受けはしないので人を選ぶのが難点。
漢方薬のような効能が期待できるものが多いので、体調不良のときにも有用です。


九龍エリア
ここからは、私が実際に訪れた中で「安心して利用できたお店」と「避けたお店」をエリア別に簡単に紹介します。甲殻類アレルギー持ちの視点から、現地での体験がこれから訪れる方の参考になれば幸いです。まずは九龍半島側から。



順番に特段意味はありません。
袁記雲餃(支店多数)
緑の看板が目印のローカル餃子チェーン。店頭でワンタンを包む様子が見られライブ感が楽しい。
メニューには海老入りワンタンも多いが、それ以外のワンタンや餃子の選択肢が多いので海鮮を避けたい人でも安心して注文できます。市内に数多く支店があるのでファストフード感覚で手軽に立ち寄れる点も魅力。
価格設定はリーズナブル、味はまあまあといったところ。複数支店あり。


金飯館 2.0(油麻地)
進化系香港式ドリア(焗飯)が人気のお店。チャーハンの上にボロネーゼソースと目玉焼きを乗せたボリューム満点の焗飯は、海鮮を使っていない選択肢として安心して楽しめました。
若者に人気で行列必至ですが、その分活気があり香港らしさを堪能できます。少人数で行くとほぼ確実に相席になるのでそのつもりで。


大家楽(支店多数)
ローカルファストフードチェーンで写真付きメニューが豊富。焼味飯(ローストミート系)や朝食セットなど海鮮以外の選択肢が多く注文もしやすいです。
ファストフード店でありながら栄養バランスの良い食事ができる点も魅力的ですし、日本でお馴染みの中華料理もラインナップされているので、とりあえず取っつきやすいものを食べたい人にも。


鋿晶館(支店複数あり)
ローカル感たっぷりの飲茶店。早茶の時間帯に蒸し物と腸粉のセットメニューを注文し、分量もちょうどよく価格も良心的でした。雰囲気が温かく、相席した地元のおばあさんとの交流も印象に残りました。
英語の通用度はいまいち、現金のみの支払いスタイルです。


満記甜品(支店複数あり)
マンゴープリンや仙草ゼリーなど、果物系・豆乳系のスイーツが中心。甘味を安心して楽しめる貴重な店。香港島にも支店があります。


香港島エリア
続いて香港島エリアです。
パシフィックコーヒー(支店多数)
香港発のカフェチェーン。カフェとしての居心地が良く、スマホの充電やパソコン作業もできるので観光の合間の休憩に最適。
香港らしいメニューもあり、ちょっとした軽食や飲み物で安心して利用できる場所の一つです。


ノマドワーク作業場所の候補にも。


樂茶軒(中環)
人気急上昇中の歴史的建物「大館」の敷地内にあるベジタリアン飲茶店。
やや高めの価格設定ながら、甲殻類の心配がなく安心して飲茶を楽しめます。母体はお茶屋さんのため茶葉の種類が豊富で、お茶好きにはたまらない場所。
中環という立地も含め、雰囲気・味・安心感の三拍子が揃ったレストランです。


麥奀雲吞麵世家(支店複数あり)
ワンタンが有名なお店。名物のワンタン麺には海老が含まれるため残念ながら食べられませんでしたが、他にも和え麺や牛肉麺などの選択肢があり、注文時に内容を確認しながら選ぶことで安心して食べられました。
価格もリーズナブルで、気軽に香港らしい雰囲気を味わえる点が良かったです。九龍半島にも支店あり。


錦尚甜(支店複数あり)
広東スタイルのデザートショップ。北角にある支店は小さなお店ながらも深夜1時まで営業しており、夜遅くに甘いものが食べたくなった時の強い味方!
メニューは豊富で選ぶのに迷うほどです。


マクドナルド(支店多数)
お馴染みマクドナルド。注文が簡単でアレルゲン表記もあり、安心できるファストフードの代表格。日本にもあるお馴染みのメニューを頼めばリスクゼロ!
大抵の場所にあるのでとにかく気軽に利用できる点も良いです。


スマホの充電や無料wifiも利用できるので、休憩がてら充電などにも使えます。


美心MX(支店多数)
大家楽と並ぶ香港の代表的なチェーンレストランの一つで、朝食セットやお粥、焼味飯など手軽なローカルメニューが揃います。写真付きの注文パネルがあり比較的選びやすく、海鮮以外の選択肢も多い点が魅力。
特に朝食メニューはシンプルで、アレルギー持ちでも安心しやすい構成になっています。


喜運來點心專門店(支店複数あり)
清潔感のあるローカル系点心チェーンで明るく入りやすい雰囲気。朝は点心類が少し割引になってお得感があります。支払いは現金かオクトパスカードでどうぞ。


ヒヤリ体験談とそこから得た教訓
どれだけ準備をしても、海外では予期せぬことが起こります。
ここでは、私が香港滞在中に実際に「これはちょっと危なかったかも…」と感じた場面をいくつか紹介しながら、そこから得た気づきや対策の教訓を振り返ってみます。
名物ワンタン一本勝負のお店に注意
ワンタンが一種類しかないお店のワンタンは、ほぼ確実に海老たっぷりです。
例えば先ほど紹介した観光客にも大人気の「麥奀雲吞麵世家」では名物のワンタンは一種類しかありません。海老入りの名物ワンタン以外のワンタンはないため、他のメニュー(牛肉の和え麺)を選ぶことになりました。和え麺もおいしかったですが、本当はワンタンを食べたかったので若干消化不良な感じに。
その他にもローカルなワンタン屋さんを何か所かトライしましたが、ワンタンが一種類しかない場合はどうしても海老入りになってしまいます。



ワンタンといえば海老ワンタンですよね…。分かります。
どうしてもワンタンを食べたい場合は、海老以外の具材をフィーチャーしているお店(菜肉雲吞とか)か、ワンタンにバリエーションがあるお店を選ぶと、海老入りワンタンを避けられる可能性が高まります。


点心店での「なんとなく危険」な直感
ローカルな点心専門店ではアレルギー表示のメニューは置いていないことがほとんど。どのメニューにどのような食材が使われているかは常識のようで、詳細な具材の説明はなく、しかも英語も通じにくいことがよくあります。
筆者の場合、海老の文字のない蒸し餃子を注文し実際に入っていないようでしたが、食べているとほのかに海鮮の香りが…。後で確認したところ、いわゆる海老は入っていないものの、干し海老を刻んだものが入っていることが判明しました。
そのときは何もありませんでしたが、重い甲殻類アレルギー持ちだったら危険だったかもとヒヤリ。
翻訳アプリ頼みの限界
翻訳アプリはメニューの解読やコミュニケーションに確かに便利でしたが、複雑な料理名や調味料(XO醤や海鮮ソースなど)の完全なニュアンスまでは分かりません。単語が翻訳できても、文脈や調理法の中で何が使われているかは曖昧なままになるリスクもあります。
点心店での一件もあり、「翻訳アプリはあくまで補助。100%信じ切らず、自分の判断軸を持つことが大切」と実感しました。
おわりに:制約があっても、旅を楽しむことはできる
甲殻類アレルギーという制約を抱えながらの香港旅行は、正直に言って楽なものではありません。名物料理や美味しい物を我慢しなければならないのは結構つらいです。
けれどもその分、観光客はあまり行かないようなローカルチェーン店やベジタリアン飲茶、小さなスイーツショップとの出会いがありました。そして何より、同じテーブルに相席した香港人との会話や、翻訳アプリを通じて伝えたひとことへの反応など、一期一会の交流が深く記憶に残っています。



香港のローカルなお店の相席文化は楽しいですが、一方でそのローカル感がアレルギー持ちにとって不安材料になることは認識しておいたほうが良いかも。
「食べられないものがあるから旅をあきらめる」のではなく、「どうすれば安心して楽しめるか?」を考えることで、自分にとって本当に大切なものが見えてくるのかもしれません。香港の魅力が食にあるのは確かですが、逆に言えば食が全てというわけでもないので、多角的に楽しむ準備が必須です。
この記事が、アレルギーを持ちながらも旅をあきらめない誰かの後押しになれば幸いです。
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