【授業の雰囲気は?学生生活は?】フランスの商業系グランゼコール・EMリヨンビジネススクールの紹介

当ページのリンクには広告が含まれています。

日本で有名なフランスのビジネススクールといえば、HEC ParisINSEADESSECなどパリにある学校の名前が挙がります。しかしパリ以外の地方にも高評価のビジネススクールが意外とあることは知られていません。

例えば現在筆者が交換留学中のEMリヨンビジネススクール(EM Lyon Busines School)は、実はフランスの中でもトップクラスのビジネススクールの一つに数えられています。

本記事では、そんなEMリヨンビジネススクールの概要、学生生活、キャンパスの設備、そしてなぜ分野の異なるIHEIDと提携しているのかといった事項について、筆者の体験談を交えながらご紹介します。

正規留学や交換留学の候補選びに役立てていただけると幸いです。

まさか自分がビジネススクールで勉強することになるとは思ってもみませんでした…。分野の垣根を超えて勉強するのは非常に刺激的です!

目次

EMリヨンビジネススクールの概要

まずは学校自体の紹介から!

商業系グランゼコールのひとつ

EMリヨンビジネススクールはグランゼコールに分類される高等教育機関。特に商業系に特化した教育を提供しています。

グランゼコールとは?

専用の準備学級を経て選抜試験を通過した学生のみが入学できるフランス独自の高等教育機関で、教育の質・学生の質ともに非常に高いのが特徴です。

EMリヨンビジネススクールは1872年にリヨン高等商業学校(Ecole Supérieure de Commerce de Lyon)の名称でスタートし、リヨン商工会議所と強い結びつきがあります。

地域の産業界との結びつきを強めることで、ハイレベルな教育機関で学ぶ有為の人材を他の地域に取られないような仕組みになっています。

学校の教育理念(ミッションステートメント)は「より公平で、他者への連帯を示し、地球を尊重する社会を築くために組織を効果的に変革する賢明な人々に、生涯にわたるトレーニングとサポートを提供する」ことであり、社会を変革する起業家精神の醸成を旨とするプログラムを多数提供しています。

フランス国内外で高評価を得ている

EMリヨンビジネススクールはフランス国内で高い評価を得ているビジネススクールの一つです。

フランスメディアのビジネススクールランキングでは常に上位に位置しており、Challenges、L’Étudiant、Le Figaro、Le Pointなどのメディアではマネジメントや経営学のプログラムがフランス国内トップ5にランクインしています。

またEMリヨンビジネススクールは、国際的なランキングでも高評価を得ています。

学校単位ではフィナンシャルタイムズのビジネススクールランキング(2023年)でヨーロッパ第10位に、プログラム単位では経営学修士プログラムが同社実施の分野別ランキングでフランス第4位世界第8位にランクインするなど、色々なランキングでかなり良い成績を挙げています。

なおEMリヨンビジネススクールはAACSB(アメリカ)、EQUIS(ヨーロッパ)、AMBA(イギリス)の3つ認証(アクレディテーション)を取得している、いわゆるトリプルクラウン校。これらの認証は学校の教育の質を保証するものであり、学生が受ける教育が世界基準であることを証明しています。

トリプルクラウンが得られるのは世界の全ビジネススクール(約1,500校)のうちわずか1%程度(約100校)だそうです。すごー。

ビジネス全般に関する設置プログラムがある

EMリヨンビジネススクールの設置プログラムは以下のとおり。

スクロールできます
プログラム名学習年限課程指導言語主要キャンパス
Global BBA4年間学士英・仏リヨン
Master in Management – Grande Ecole Program2年間修士英・仏リヨン
Master in Digital Marketing & Data Analytics1年間・2年間修士パリ
Master in Data Science & Artificial Intelligence Strategy1年間・2年間修士パリ
Master in Strategy & Consulting1年間・2年間修士パリ
Master in Finance1年間・2年間修士リヨン
MSc in Leading Sustainable Transformations18ヵ月修士パリ・ロンドン
MSc in Management of Energy Transitions1年間・2年間修士パリ・上海
MSc in Financial & Business Performance1年間・2年間修士リヨン
MSc in Sports, Entertainment & Lifestyle1年間・2年間修士パリ・ケベック
MSc in Healthcare Innovation and Data Science1年間・2年間修士リヨン・上海
MSc in International Hospitality Management18ヵ月修士リヨン・パリ
MSc in Luxury Management & Marketing18ヵ月修士パリ・ニューヨーク・ロンドン・ローマ
MSc in Global Innovation & Entrepreneurship18ヵ月修士リヨン・フィンランド・ベトナム
MSc in International Marketing & Business Development18ヵ月修士リヨン
MSc in Global Sales Excellence18ヵ月修士リヨン
MSc in Supply Chain & Operations Management1年間・2年間修士リヨン
Executive MBA11~24ヵ月修士リヨンかオンライン
International MBA11~24ヵ月修士リヨンかオンライン
※プログラムは一例です。

BBA、修士課程(MasterとMSc)、MBA、Executive educationなど幅広いコースが開講されており、コースによって主要キャンパスの場所も様々で非常にバラエティーに富んでいます。

学費についてはプログラム間の違いの他年次の違いもあるので、詳細は公式ウェブサイトをご確認ください。

強みを持つ分野

EMリヨンビジネススクールは、特に以下の分野において強みを持っています。

まずマネジメントや経営学に関するプログラムは特に多くの実践的なプロジェクトが組まれており、学生は実際のビジネスケースに基づいた学びを得ることができます。

加えて起業家精神を育成するためのプログラムも充実しており、自らビジネスを立ち上げることを目指す学生にとっても魅力的な環境です。

さらに、持続可能なビジネスの視点を取り入れた教育も行われており、環境への配慮や社会的責任を持ったビジネスのあり方を学ぶことができる点も大きな特徴です。

サステナビリティに関する授業が結構多い印象です。

Early Makersというスローガンについて

EMリヨンビジネススクールのスローガンである「Early Makers」は、未来のビジネスリーダーを育成することを意味しています。学校のプログラムはこのスローガンに基づいて組まれており、学生たちが早い段階から実践的なスキルを身につけビジネスの世界での影響力を発揮することを意図しています。

授業では座学中心というよりも学生が早い段階からさまざまなプロジェクトに取り組む機会を与えられ、それにより学生は自分のアイディアを実現する力と起業家精神(アントレプレナーシップ)を育んでいきます。

学生生活はどんな感じ?

学校の紹介の次は、キャンパスや授業スケジュールなどをご紹介します。

リヨン中心部に新しいキャンパスがオープン!

EMリヨンビジネススクールのキャンパスは長らくリヨン中心部から少し離れたエキュリ(Écully)にありましたが、2024年9月にリヨンの中心部に新しいキャンパスをオープンしました。

新しいキャンパスはメトロB線沿いにあり、学生にとって非常に便利なロケーション!リヨンの文化やビジネスの中心地に位置しているのも学習環境として最高です。

ちょうど筆者が交換留学するタイミングでリヨン中心部にキャンパスが移転したことになります。ラッキー!

ガラス張りのキャンパス内は非常に開放的な雰囲気で、教室や多目的ホールでは授業の他さまざまなイベントや講演会が開催されています。Maker’s Labをはじめとする学生同士の交流やプロジェクトのコラボレーションが促進するスペースが用意されているのも特徴的。

新しいキャンパスの使い勝手については後述します。

学期はサイクル制、授業は3時間、満点は20点

EMリヨンビジネススクールでは、各セメスター(学期)が複数のサイクルに分かれています。

これにより学生はさまざまな分野の知識を短期間で学習することができます。一方で腰を据えて学習するのが難しいという側面も…。なお1コースあたりの単位数は大体5ECTSです。

1サイクルだけで帰国する交換留学生もいました。

また授業は一コマ3時間(途中15分休憩あり)あります。これはスイスでは一コマ2時間弱よりかなり長いのでビックリしました。これはグランゼコールだとどこでも同じらしいです。

なお基本的に各コース週1回授業がありますが、授業の日が祝日などと重なると曜日が移動して週2回同じコースの授業を受けることになることもあります。

さらに評価方法は20点満点で10点を下回ると不可になります。詳しい評点は以下のとおり。

点数評価(ECTS)評点
15~20点AExcellent
14点BVery good
12~13点CGood
11点DSatisfactory
10点ESufficient
8~9点FXFail
7点以下FFail
※学校によって評価は微妙に異なるようです。

19点以上の点数は滅多にないらしいです。

遅刻・欠席に厳しい校風

EMリヨンビジネススクールの授業は遅刻や欠席にかなり厳しいです。

授業にもよりますが3回の欠席で自動的に単位を落とすことになる場合もありますし、15分以上の遅刻を認めない(教室に入れない)ことをシラバスで明示していることもあります。

出席管理はEdusignという専用のアプリを使って行うことになっており、教授が授業冒頭に表示するQRコードを読み込むことで出席登録が完了するため、学生は教授によくQRコードの確認をしています。

フランスの学校は一般に時間にはそこまで厳しくないらしいので、この厳しさはEMリヨンビジネススクールの校風と言えそうです。

使い捨てカップが使用禁止

EMリヨンビジネススクールでは環境に配慮した取り組みが多数行われており、特に使い捨てカップの使用禁止がその一例。

キャンパス内の給水機や自動販売機では使い捨てカップが提供されないため、マイボトル持参が必須です。

マイボトルは入学手続きをすると学校からもらえます。

学生団体のイベントは定員制

EMリヨンビジネススクールには様々な学生団体があり、スポーツイベントやスキーツアーなど色々な企画を運営しています。交換留学生であってもそのような機会が得られるのは嬉しい限り!

ただ一点問題なのが、それぞれのイベントに厳格な定員が設定されており、参加したいイベントを見つけたらすぐに申込手続きを行う必要があること。

イベントによっては支払いまで済ませる必要があり、支払いが完了するまで参加確定になりません。

なおイベントの参加枠を狙いに行く行為はショットガン(Shot gun。SGと約される)と呼ばれ、チャットグループで多用されます。

最初にSGをという単語を見たとき「シンガポールがどうしたの?」と思ってしまった筆者でした。

学校主催の交流イベントも多彩

学生団体以外にも学校主催のイベントで交流を広めるという手もあります!

定期的に学生向けのネットワークイベントやキャリアイベントが開催されているので、同じような趣味や将来展望を持っている学生と出会うことができますし、ビジネススクールらしくコンサルや銀行といった分野でのキャリア形成についても知識を得ることができます。

また2024年の秋学期に行われた取り組みとして、学生とEMリヨンビジネススクールの職員をマッチングしクリスマスシーズンを一緒に過ごすというものがありました。

クリスマスシーズンは実家に帰る学生が多いですし、交換留学生は母国に帰ってしまったりするため、フランスに残る学生は孤独になりがち。

クリスマスシーズンもリヨンに残っている自分にとっては非常に嬉しいイベントでした。

フランス人の家庭にお邪魔するのは初めての体験でしたし、お互いに料理を作ったりして非常に楽しい交流になりました!

筆者は餃子を作りました!

筆者の年齢的に他の学生よりも職員の方が色々と話しやすいので、その意味でも楽しかったです。笑

授業の特徴

続いては授業の特徴をご紹介。

非常に実践的な内容が多く、グループワークが多め

EMリヨンビジネススクールの授業ではグループワークが非常に重視されており、多かれ少なかれ誰かと共同で課題に取り組むことになります。

授業の中ではプロジェクトベースの学習が多く取り入れられており、学生はリアルなビジネスケースを題材にしてグループで問題解決に取り組むことで、卒業後に企業内でチームプロジェクトに取り組むためのトレーニングを積んでいきます。

グループワークはチームマネジメントを学ぶ他にも、異なるバックグラウンドを持つ仲間とのディスカッションや意見交換は視野を広げる貴重な機会。他の優秀な学生とのコネクション作りの機会としても非常に有用です。

フリーライダー問題や理解度の齟齬といったよくあるグループワークの課題に向き合う良い機会になります!

筆者が受講した科目は以下のとおりです。

  • Leading Strategic Change
  • Systems Thinking and Sustainability
  • Climate Strategies for Organisation
  • Strategic Networks
  • Managing international teams
  • Organizing Social Innovation
  • Français B1 – Avancé
  • Badminton 7

それぞれの授業の内容や感想についてはいずれ別の記事にまとめたいと思います!

フランス語の授業は半分くらい。基本的に英語だけでOK

EMリヨンビジネススクールでは英語とフランス語の授業が約半々で設置されており、フランス語が話せなくても英語で問題なく授業を受けて学位を得ることができます。

ただし英語で行われる授業は基本的に非フランス語圏からの留学生(交換留学生を含む)の割合が多く、フランス人が極端に少ない場合も。

ドイツ、イタリアからの学生が非常に多く、筆者の周囲はなぜかボッコーニ大学(イタリア)からの交換留学生が多いです。

もしフランス人と交流したいのであればフランス語で行われる授業を取るのが近道ですが…ハードルは決して低くありません。

フランス語クラス(語学学習)について

EMリヨンビジネススクールでは、フランス語を学びたい学生向けにフランス語を学ぶクラスも開講されています。レベルはA1からB1まであり、交換留学の協定内容にもよりますが受講は任意のことが多いようです。

フランス語クラスの受講を希望する学生は事前にクラス分けテストを受け、受講するクラスが決定します。クラスの曜日や時間は選択することができず、自動的に割り振られます。

フランス語クラスの授業では日常的なシーンで使われるフレーズや表現を学び、実際の会話を通じてフランス語を使ったコミュニケーションスキルを磨いていきます。

クラス内でのディスカッションやロールプレイも取り入れられ学生同士で積極的にコミュニケーションを取る機会が提供されているほか、各自の習熟度を測るため試験もあります。

筆者はB1クラスを受講中。こちらは特にイタリア人が多く、授業前後にはイタリア語が飛び交っています…。

スポーツクラスについて

EMリヨンビジネススクールはスポーツクラスも充実しています。競技スポーツからレクリエーション目的のスポーツまで様々な選択肢が用意されており、学生は自分の興味に合わせて参加することができます。

入学プロセス(準備学級から入学する場合など)によってはスポーツクラスは受講必須ですが、交換留学生はその対象ではないため受講はオプショナル。

ジムに通うにしても高額な費用のかかるヨーロッパのため、筆者は運動不足解消目的でジム代わりにスポーツクラスを使っています。

現在バドミントンのクラスを受講しているのですが、ただ楽しむだけでなくトレーニングや技術指導もちゃんとあって満足度が高いです。

個別に指導をしていただけたこともあり最近は上手くサーブが入るようになってきました。日本の体育でここまでしっかり技術的な指導を受けた記憶は正直ありません。

キャンパスの設備について

新(しすぎる)キャンパス

EMリヨンビジネススクールの新しいキャンパスは、ガラス張りの近代的なデザインの建物。

最新の教育設備が整っているとともに、広々とした共有スペースやグループワーク用スペースが豊富に用意されており、学生は自分のスタイルに合わせて学ぶことができます。

ただ新しすぎることはちょっとした問題も引き起こしています。

例えばwifiが安定しないこと。学生用のwifiにアクセスしても度々接続が遮断されてしまい、授業中に必要な資料が見られないことがあります。

他にも色々ありますが、システム面の問題は学生はおろか教授でも対応しきれない場合があるほど。

ややこしい建物構造

新しいキャンパスの設計はスタイリッシュですが、エスカレーターは設置されておらずエレベーターの使用は制限されています。そのため学生は移動の際に自らの足で階段を上り下りする必要があります。

開放的な新キャンパス。階段の構造がなぜか異常に複雑です…。

しかもそれらの階段は割と不規則に設置されているため、非常に分かりづらいです。学生はもちろん教授も迷っている様子なのでどうにかしてほしいところ。

目的の教室になかなかたどり着けなかったり、建物から出られなかったりします…。

カフェテリアはジャンクフード多め

キャンパスのカフェテリアでは学生の多様なニーズに応えるために様々な食事が提供されていますが、なぜかピザやハンバーガーのようなジャンクフードが多め。

カフェテリア。注文は外にある機械で行います。

このような食生活は学生にとって便利ではありますが栄養バランスを考えると注意が必要ですし、価格も学校にしては高め(選択肢によっては10ユーロくらいする)です。そのためカフェテリアで食事している学生はそこまで多くない印象。

筆者も午前と午後に授業が詰まっている日でなければ家に帰ったり別の場所でランチを取っています。

ちなみに上階には素敵なカフェがありますが、目につくような案内もないため教授に連れられて行くまで知りませんでした。もったいない。

なぜ社会科学系の大学院がビジネススクールと提携しているのか?

EMリヨンビジネススクールはIHEIDと2022年に覚書(Memorandum of Intent to develop academic, pedagogical and cultural activities)を締結しており、今年度から学生の派遣が始まりました。

この提携はEMリヨンビジネススクールが強みを持つ実践的なビジネス教育とIHEIDが強みを持つ国際関係や政策に関する専門知識を掛け合わせて学生により充実した学びの場を提供することで、領域の垣根を超えて解決策を提案する能力を持つ人材を育成することを意図しています。

実際にEMリヨンビジネススクールで授業を受けていて、ビジネス分野とは全く異なるはずの政治学や国際関係学といった分野と共通するトピックがビジネス分野にもかなりあることが分かりましたし、双方の授業を受けてみて学際的な掛け合わせの面白さを感じています。

にわかにビジネススクールに興味が湧いてきました。

まとめ

本記事では、日本ではあまり知名度はないけれど実は意外と凄い?商業系グランゼコールのひとつEMリヨンビジネススクールについて色々とご紹介しました。

ビジネススクールに元々興味があればパリしか考えていなかったかもしれないことを考えると、交換留学で全く違う分野を(フランス国内ではそこそこ)有名な学校で勉強できたのは良い収穫だと言えそうです。

ここでの学びをこれからどう生かすか…考えるのが楽しいです。

以上です。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


このサイトは reCAPTCHA によって保護されており、Google のプライバシーポリシー および 利用規約 に適用されます。

reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。

目次