フランスでの長期留学で必要となる書類のひとつが、日本では聞き慣れない「出生証明書(EXTRAIT D’ACTE DE NAISSANCE)」。大学入学手続きなどでフランスの公的機関に書類を提出する際に使います。
しかし、日本とフランスでは出生届に関する制度が異なるため、日本ではこの「出生証明書」に該当する書類は発行していません。
本記事では、フランスで有効な書類として認められる出生証明書の取得方法について筆者の体験を基に解説します。
出生証明書の取得方法
日本人の学生がフランスで有効な出生証明書を入手する方法は大きく分けて2つあります。
- 選択肢1:フランス渡航後に在外公館で出生証明書を取得する
- 選択肢2:アポスティーユをつけ、法定翻訳した戸籍謄(抄)本を出生証明書とする
長期留学でまず確実に出生証明書が必要なのはセキュリテ・ソシアル(フランスの公的健康保険)加入の場面。在外公館発行の出生証明書で足りるので、在外公館へのアクセスが良い場所に居住しているのであれば在外公館での出生証明書取得がおすすめです。
一方、在外公館から離れた場所に居住している場合であったり、フランス国籍の申請のように場合によっては在外公館発行の出生証明書だけでは足りないケースもあります。その場合は選択肢2を取る必要がでてきます。
フランスの在外公館で申請する
まずはフランスにある在外公館で申請する方法です。
最初に必要書類を揃えましょう!以下は在フランス日本国大使館ウェブサイトからの抜粋です。
- 申請書(窓口にも用紙があります)
- 最近6か月以内に発行された戸籍謄(抄)本の原本※
- パスポート
- フランス滞在許可証(申請中の場合は必要ありません)
- 両親、配偶者が外国籍の場合は、パスポート、出生証明書、Livret de Familleなど氏名の綴りを確認できる書類
※戸籍のコンピュータ化、転籍等により、前離婚または前配偶者の死亡の記載が省略されている場合は、改製原戸籍、除籍謄本なども併せて必要となります。
戸籍謄(抄)本だけは本籍のある自治体で申請する必要があるので、手元にない場合は取得までに時間がかかりますが、それ以外は手元にあるはずなのでそこまで待たずに申請手続きが行えますね。
戸籍謄(抄)本の取得には、親族や代理人にお願いして取得してもらう、自治体に郵送による発行依頼を行うといった方法があります。いずれにしても郵送トラブルを覚悟する必要があるので、日本出国前に戸籍謄(抄)本を入手しておくことを強くおすすめします。
必要書類が揃ったら、居住している地域を管轄する在外公館に持参(もしくは郵送)して申請を行います。
各公館の管轄地域は以下の通りですが、詳細は在フランス日本国大使館のウェブサイトで確認を。
管轄公館 | 主な都市(人口トップ10および主要都市のみ掲載) |
---|---|
在フランス日本国大使館 | パリ(75)、ナント(44)、ボルドー(33)、リール(59) |
在ストラスブール日本国総領事館 | ストラスブール(67) |
在マルセイユ日本国総領事館 | マルセイユ(13)、トゥールーズ(31)、ニース(06)、モンペリエ(34) |
在リヨン領事事務所 | リヨン(69) |
在ヌメア領事事務所 | ヌメア(98) |
在外公館によって異なりますが、通常3~5営業日で証明書が完成します。
パスポートを持参して受け取りましょう。
手数料の支払いが必要なので手数料相当の現金の持参も忘れずに。
アポスティーユ付きの戸籍謄(抄)本を法定翻訳する
次に戸籍謄(抄)本にアポスティーユを付けフランス語に翻訳(法定翻訳)したものを出生証明書として使う方法。
まずは出生証明書の基になる戸籍謄(抄)本を取得します。
続いてフランスにおいて日本で取得した戸籍謄(抄)本を公文書として扱ってもらうための手続き(公印確認・アポスティーユ)を行います。
フランスはハーグ条約締結国なので、公印確認ではなくアポスティーユを使用します。
アポスティーユ
「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。アポスティーユを取得すると日本にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができます。
出所:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html
アポスティーユを取得するには、日本の外務本省(東京)か大阪分室で窓口か郵送にて申請を行います(外務省は郵送による申請を推奨)。
参考までに、郵送による申請での必要書類は以下のとおりです。
- 証明が必要な公文書(発行日より3か月以内の原本)
- 申請書(アポスティーユ)
- 委任状(代理人の方による申請のみ)
- レターパックライトなど返送用封筒(返送先要記入)
詳細は外務省の該当ページをご確認ください。
アポスティーユが取得できたら、戸籍謄(抄)本を日本語からフランス語に翻訳(法定翻訳)します。
日本で行う場合は、在日フランス大使館で公開されている翻訳者リストに掲載されている翻訳者による翻訳であれば、在日フランス大使館の査証を付ける必要がありません。
フランスで行う場合は基本的に現地の法定翻訳事務所に依頼することになります。日本語の通じる法定翻訳事務所が在フランス日本国大使館のウェブサイトで公開されているので、参考にしても良いかもしれません。
筆者の体験談
筆者はリヨンに長期留学中ですので、在リヨン領事事務所で申請手続きを行いました。在リヨン領事事務所はメトロ駅の近くにあるのでアクセスも良かったです。
訪問にあたり予約は不要でした。
申請
戸籍謄(抄)本を入手する段階で多少のつまづきはありましたがその他の書類自体は簡単に揃えることができたので、学生の身分を最大活用し平日の午前中に申請手続きを行いました。
パスポートなどの書類を預けるような必要はなく、戸籍謄(抄)本は提出しますが後で返してもらえます。
受取
リヨンの場合、受取は3営業日後から可能とのことだったので、3営業日後の午後に再度訪問しました。手数料(8ユーロ)を現金で支払い、無事に出生証明書をゲット!
当日にはセキュリテ・ソシアルの申請ページにアップロードすることができました。
筆者の住居にはスキャナーやプリンターがないのですが、iPhoneの機能を使って紙の書類からPDFを作成することができました。便利な世の中になりましたねー!
まとめ
この記事では、フランス長期留学で必要になる出生証明書の取得方法についてまとめました。
聞き慣れない用語が色々とあって混乱しますが、ご自身の必要な書類の要件をよく確認のうえ、少しずつ確実に手続きを進めていきましょう!
また繰り返しになりますが、このような制度は変更される可能性もあるので必ずご自身で最新情報を確認してくださいね!
以上です。
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