【アジアの国際都市】シンガポールと香港を比較してみた【似ているようで全然違う】

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アジアの経済ハブとして名を馳せるシンガポールと香港。旅行先として日本人にも大人気ですね。

両方とも国際都市が強く中華色強め、そして思い出す景色は高層ビル。ということで、日本人からすると割と似通っているように感じられるかもしれません。かくいう筆者も両者は同じような場所というイメージを持っていました。

今回香港に滞在する機会が得られたので、東京勤務時代に月1回は香港に渡航していたことがあり、過去シンガポールに居住したことがある筆者が、それぞれ似ているところや全く異なるところを比較していきたいと思います。

今回の記事では、税制やGDPといった統計情報よりも、生活者として肌で感じることを中心にご紹介します。

目次

生活物価

まずは様々な物の値段から見ていきます。シンガポールも香港も日本より物価が高いことは知られていますが、細かい違いが色々とあります。

物価は全体的に日本よりも高い。物価の傾向も似ている

先に述べた通り、両者とも全体的に日本より物価が高いです。体感1.5倍~2倍といったところでしょうか。物価の傾向としてはいずれも住居費が非常に高く、外国人の場合は部屋を借りたりホテルを予約する際に影響を大きく受けます。ちなみに香港の方がシンガポールよりも2倍ほど高いです!

香港の狭小住宅はときどき話題に上りますね。

食品や食材の値段については、シンガポールでも香港でもかなり幅広く設定されています。どちらもちゃんとした食事からデザートまで食べ物のバリエーションが非常に多いのが理由でしょう。

ただ細かい点として、価格設定はホーカーセンターのあるシンガポールではある程度のレンジに抑えられており、非常に高級なものからひたすら安いものまで選べます。一方香港では個人店が多く全体的に高くつく印象。

例えばシンガポールの場合、マクドナルドなどのファストフードやホーカーセンターの簡単な料理であれば8SGD(800円)程度で食べられます。アイスコーヒーも場所によっては1.5SGD(約150円)出せば飲めたりします。

一方香港では茶餐廳(チャーチャンテン、いわゆる香港式カフェレストラン)でもちゃんと食事すると60HKD(1,200円)以上はかかります。朝食セットも40HKD(約800円)はするので安くないです。さらにカフェの値段も5SGD(500円)程度のシンガポールと35HKD(700円)かかる香港。小さな違いでも回数を重ねると大きな違いに…。

シンガポールのホーカーセンターがここまで安いのは、住民福祉的な意味合いもあると思います。シンガポールは貧富の差がすさまじいので…。

香港で気軽に外食しているとお金がどんどん飛んでいきそうです。

交通費はいずれも安め

ちなみに交通費に関してはどちらも日本より安めに設定されており、どちらも300円もあればかなりの距離&時間乗ることができます。

ただこちらも香港の方がちょっと高く、例えば香港のバス路線は均一料金なので距離の長い路線を利用するとその分高くつきますし、従距離制のMTRであっても路線と距離によっては40HKD(800円)程度かかることも。唯一トラムは3HKD(300円)と格安ですが、香港島の移動にしか使えないので恩恵を受けられる人は限られます。

香港の路線バス(二階建てバス)は定額制なので、乗りたい区間に対応するバスを選ぶのがミソ。短い区間しか乗車しないのに長い区間を運転するバスに乗るとちょっと損をする場合があります。

一方でシンガポールは端から端まで移動しても3SGD(300円)くらいで済むのでありがたいです。

初乗りで200円弱する日本と比較するとかなりお得感がありますね。

嗜好品はシンガポールが高い!

ここまでの情報だと何だかシンガポールの方が住居費以外で色々と安そうな印象を受けますが、お酒やたばこのような嗜好品については独自ルールを課すシンガポールの方が高くなる傾向があります。

特段規制のない香港では日本よりも普通に物価が高いと思えるレベル(2倍とか3倍とか)で収まりますが、嗜好品に高い関税をかけるシンガポールではびっくりするような値段になることもザラ。特にストロングゼロのような「比較的安価なアルコール度数高めのお酒」は、シンガポールでは約10倍の値段に!非常に高級なお酒です。

日本で日常的にストロングゼロを飲んでいる人は、シンガポールでは習慣を見直さないといけないかもしれません…。

お酒といえば、シンガポールでは酒類の販売や公共の場での飲酒にも厳しいルールがあります。これは以前リトルインディアで起きたお酒絡みの暴動がきっかけとなって制定されたもの。

ここまでの情報を総合すると、生活物価はシンガポールよりも香港の方が圧倒的に高いということになりそう。どうしても家賃が大きいですね…。

街並みと公共インフラ

次に街並みや交通機関などの公共インフラを比較していきます。

どちらも日本では見られないような奇抜な高層ビルが林立していたり左側通行だったりとかなり似通っている印象ですが、詳しく見てみると結構違うところも見つかります。

いずれも面積が小さく人口密度が非常に高い

シンガポールと香港はいずれも非常に面積が少ないのが特徴。厳密にいうと多少誤差はありますが、シンガポールの面積は東京23区ほど、香港はさらにその半分ほどの面積しかありません。十分な居住スペースや必要なビジネス空間を確保するため、建物が必然的に縦に長くなります。

日本人の視点だと不安になるレベルのペラペラな建物が多いのは、おそらく地震の心配がなく耐震強度を考えなくても良いのが理由でしょう。

険しい山にへばりつくように高層ビルが連なる香港島や、シンガポールのCBD(中心ビジネス街)とマーライオンのコントラストといった美しい風景は、観光のハイライトとして挙げられます。夜景スポットとしても非常に人気で、観光バスのルートが組まれていたり、夜景をテーマにしたショーが行われたりします。

代表的な夜景ショーとしては、香港はシンフォニーオブライツ、シンガポールはスペクトラがそれぞれありますね。

さらにシンガポールも香港も、建物が縦に長いだけでなく、奇抜なデザインが多いのも特徴です。シンガポールのマリーナベイサンズはCMにも使われて大人気!

なぜここまで奇抜なデザインの建物が多いのでしょうか。先ほど述べた耐震強度の面もあると思いますが、両方とも中華圏に属する場所なので、風水もひとつの理由になるでしょう。例えば尖っている建物から発せられる敵意を曲線で受け流してみたり、気の流れを阻害しないように空洞を作ってみたり、建物の中心に滝を作ってみたりと、建築デザインを超えた意味が込められていることも多いです。

長い歴史を持つ香港であれば風水との関連が簡単にイメージできますが、比較的歴史の浅いシンガポールでも、サンテックシティーの「富の泉」やシンガポールフライヤー(観覧車)の回る方向など、多くの建造物が風水に基づいて設計されています。巨大な建築プロジェクトの際には風水師を雇ってアドバイスをもらうとか。

交通インフラもそっくり?

交通ルールや使える交通機関の種類も似ている点があります。

例えばシンガポールも香港も地下鉄が主な交通手段ですし、道路は左側通行&右ハンドル。これはいずれもイギリスに統治された時代があったからですね。この点は日本と同じなのでちょっと安心。二階建てバスも両方の都市で運行しており、二階の最前列に座れば特等席で風景を楽しむことができます。

またいずれも郊外ではライトレールが地下鉄を補完する役割を担っている点もそっくり。

シンガポールはMRT(Mass Rapid Transit)、香港はMTR(Mass Transit Railway)なので呼び方が微妙に違いますが、使い方はほぼ一緒です。

ただし香港はさらに赤や緑のミニバス、トラム、フェリーなど、シンガポールよりもかなり多彩な交通機関が発達しています。ミニバスは観光客だとちょっと利用が厳しいものもありますが、香港の地理的条件(アップダウンが激しい&狭い道が多い)に上手く対応するために良く考えられていると感じます。市街地が香港島と九龍半島に分かれている点も特徴的。

これは国土が全体的に平坦で一つの島でほぼ全て完結するシンガポールとは全く異なる点ですね。

なお自動車の流通量については、シンガポールが高額な維持費用を課しているため香港の方が多そう。香港では交通渋滞がありますが、シンガポールはそこまではない印象です。

街並みは…結構違うかも

人口密度が高く縦に長い建築物が多いシンガポールと香港ですが、中心部を除く街並みは結構違います。

シンガポールは住宅の供給が政府によって行われており、ほとんどの国民が公営住宅(HDBと呼ばれる)に住んでいます。中心部では高層ビル群やショップハウス(低層の伝統的な家屋)が多く見られますが、少しCBDから外れると同じようなデザインの建物が延々と連なるいわば東京のニュータウンのような風景に。

シンガポールのチャイナタウン周辺の風景です。オレンジ屋根がショップハウス群。

公営住宅がどこまでも整然と並んでいる姿は圧巻ですが、起伏があまりないため、どこまで行っても風景はほぼ同じ。Google Mapなどで確認しないと、どこに居るのか分からなくなりそうなレベルです。

なおシンガポールにも一軒家はありますが、かなり少ないです。かなりのお金持ち限定ですね。

またシンガポールのもう一つの特徴が緑化政策が進んでいること。一定以上の面積を緑化することが義務付けられているため、建物や敷地の緑の割合が非常に多いです。公園や緑地帯も多いので、トロピカルな植物を存分に楽しむことができます。

一方で香港といえば高層の建物!巨大な建築物が連なる様子は日本でもおなじみですが、実は郊外には一軒家も結構あります。さらに客家の伝統的な家屋が残るエリアもあり、シンガポールと比較すると非常に多彩。

一目で香港と分かる風景です。

そのなかでも香港島の急斜面や郊外に高層住宅が立ち並ぶ姿は絵になりますし、目抜き通りの華やかな看板やネオンはこれぞ香港という感じで訪問するたびにテンションが上がります。政府が全てを管理している整然としたシンガポールとは異なる、エネルギッシュでちょっと妖しい香港を感じられる街並みが古今東西多くの人々を魅了してきたのもうなずけます。

ただしその自由の結果というべきか、古ぼけているというか老朽化している建物が目立つのもまた事実…。お世辞にも綺麗とはいいがたい場所も正直多いです。

また香港の街並みと言えば映画にもよく登場した道路にせり出している看板が有名ですが、近年(特に国家安全維持法の制定以後)はかなりの数が撤去されてしまい、お馴染みの風景も少しずつ変わっていっています。

水回りはどっちもどっち

シンガポールと香港ではいずれも清潔度はそこそこといったところ。日本人でも割と耐えられるレベルだと思います。シンガポールでも香港でも無料で使えるトイレが多く、しかも洋式がスタンダードなのも嬉しいところ(中国大陸はしゃがみ式が多いです)。

シンガポールと香港では、大型ショッピングモールの多いシンガポールの方が無料トイレが見つけやすいです。雑居ビルが立ち並ぶ香港中心部ではテナント専用のトイレも結構あり、飲食店のトイレしかほぼ選択肢がないことも。

ただし住宅事情を反映して、同じ価格の住宅やホテルでもシンガポールよりも香港の方が狭いことが多く、シャワーを使うとトイレが水浸しになるタイプの部屋に遭遇する可能性も香港の方が高いです。

このあたりはお金で解決可能でありシンガポールの2倍くらい出せればちゃんとしたホテルに泊まれますが…これは個人の価値観によるところが大きいでしょう。

言語・多文化・エンタメ

成立の歴史や政治体制の違いを除けば、シンガポールと香港で最も対照的なのがこの項目でしょう。生活するうえでかなり重要です。

英語のシンガポールと広東語の香港

シンガポールと香港はいずれも国際都市!どちらも外国人居住者が多く英語がかなり通用します。いずれも公用語が複数あり、そこに英語も含まれているので当然かもしれません。

シンガポールの公用語は英語、中国語(標準中国語)、マレー語、タミル語の4つ(国語はマレー語)、香港の公用語は英語と中文(広東語と標準中国語の両方を指す)の2つ。日常的に様々な言語に触れるので多言語話者もかなり多いです。

広東語は話し言葉と書き言葉がかなり異なるのでちょっと複雑。

ただし英語の立ち位置は両者でかなり異なり、シンガポールは英語がメイン。公式に表記する際は英語が最初に来ますし、多くの人が日常的に英語を話します。自分の属する民族の言語は学校で学習するため、例えばマジョリティーである中華系シンガポール人は標準中国語をある程度操れるものの、最近は家庭内でも英語だけを話す割合が増えているようです。

なおシンガポールの英語はそれ自体もちょっと特殊で、マレー語や中国語に由来するボキャブラリーがあったり、他の言語の影響によって文法も一部異なったりします(いわゆるシングリッシュと呼ばれるもの)。発音も若干独特なので、完璧に聞き取るには慣れが必要。

一方で香港は広東語がメイン。英語は通じるものの、日常的に話される言語は基本的に広東語ですし、様々な表記も広東語が先に来ることが多いです(記載方法は状況によって話し言葉だったり書き言葉だったりとバリエーションがある)。どこでも英語が通じるシンガポールと比較すると、香港における英語の通用度にはちょっとムラがあります。

あまり英語が話せない香港人も多い(それでも日本人よりは話せるけれど)ですし、外国人があまり訪れないような場所ではお店であっても怪しくなります。少し複雑になっただけで途端に通じなくなることも。ただし広東語をメインに話す人であっても語彙に英語が混じることもあります。

シンガポールは英語で話しかけられますが、香港ではこちらが何も言わないと広東語で話しかけられることがほとんど。

ただし香港で使用される英語はシンガポールと比較して独自の借用語は多くないので、多少なまりはあるものの、シンガポールの英語と比べれば取っつきやすいとも言えます。シンガポールの英語話者と香港の英語話者とでは、おそらく香港の英語の方が聞き取りやすいはず。

またいずれも標準中国語を使えると言っても、シンガポールは簡体字、香港は繁体字を使うという違いもあります。繁体字は日本語の漢字に近いので、中国語が分からない日本人にとっては香港の方が色々と分かりやすいかも。逆に中国語を学習している日本人(標準中国語を学習する割合が多い)にとっては、シンガポールの方が便利だと思います。

シンガポール政府は公式には標準中国語&簡体字という組み合わせを使いますが、中華系シンガポール人は南方ルーツの割合が多いため、日常では広東語を始めとする方言を使う人もいます(高齢者が多い)。

このように同じ中華系と言っても英語や中国語を取り巻く環境はかなり違うのが面白いですね。

多様性の概念の違い

シンガポールと香港はいずれも多文化が共存する場所なのですが、それぞれの成立の経緯の違いから、多様性の扱いも全く異なります。

シンガポールの場合、マレーシアから突然切り離されて独立することになったため、寄せ集め状態の人々を国民としてまとめ上げる必要がありました。つまり多様性を包摂して共生を図らないと国そのものが崩壊してしまうという危機的な状況にあったわけですね。またマレーシアやインドネシアといった非中華系の国に囲まれているため、例え中華系が多数を占めるとしても中国的な文化を前面に押し出すのはリスクが高いということもあります。どの民族の母語でもない&今後シンガポールが発展するために重要な英語がメインになったのにはこんな背景もあります。

一方香港の場合は何の問題もなく中国文化をベースにすることができます。この状況では多様性を全く受け入れなくても国家の存亡に直結するわけではないので、どの程度多様性を受け入れるかについては、状況に応じて取捨選択ができる立場にあると言えるでしょう。

また多様性の一端として、多くの外国人労働者を受け入れているのが家事労働者(いわゆるメイドさん)産業。シンガポールと香港はいずれも共働きが普通の社会なので家庭に住み込みの家事労働者が居ることは珍しくありません。

いずれの場所でも土日になると外国人労働者の集団がピクニックをしているのは全く珍しくない光景。日本ではなかなかお目にかかれない一種異様な雰囲気です。

さらにいずれも東南アジア諸国からの受け入れが多く、ムスリムもかなり含まれます。シンガポールはマレー系シンガポール人も多いですし歴史的な経緯もあるのでハラル対応が徹底していますが、香港はそのあたりどうなんでしょう…。あまりハラル対応を明確に謳ったレストランは多くないように感じます。このあたりはムスリムをもっと積極的に受け入れるべきと各商店が判断するなどすると増えていくんでしょうね。どこまでも市場経済的な香港です。

以上をまとめると、多様性を社会システムに組み込む強い必要性があったのがシンガポール、多様性を発展のための力に変換しつつ成長してきたのが香港、といったところでしょうか。

エンタメ傾向の違い

エンタメといえばやっぱり香港でしょう!映画や音楽といったポップカルチャーは様々な国に輸出されており、広東語のものが多いにも関わらずかなりの人気を博しました。特にアクション映画は大人気でブルース・リーやジャッキー・チェンなど誰でも知っているような世界的大スターも多数輩出。非常に層が厚いですね。

筆者はイーソン・チャン(陳奕迅)の音楽が大好きでカラオケでも歌います。いずれ特集記事を作る予定なので乞うご期待。

ドラゴンシリーズやキョンシーシリーズなどは日本でも大ヒットしましたし、逆に香港の歌手が日本の曲をカバーしたことも。エンタメを通じた交流はかなり盛んに行われており、両国に互いの文化が流れ込んでいました。

そういえば武侠小説の人気に火が付いたのも香港の新聞からでしたね。

そんな香港と比較すると、シンガポールは正直エンタメ砂漠…。メディアが政府によって統制されているので、風紀の乱れを招くようないわゆる芸能界の空気は生まれにくい土壌がありそうです。

もちろん国民的タレントもいますが、香港のように国外でも大人気!とはいきませんね。テレビ番組はほとんどニュース番組かドキュメンタリー、ときどき映画があるといった感じ。しかも言語別に異なるチャンネルがあるため、国民みんなで楽しむタイプのエンタメも正直思いつきません。

そのためシンガポール国民が楽しむエンタメは専ら輸入物。以前は中国や日本が人気を得ていましたし、最近は欧米や韓国発のエンタメが大人気。

英語の楽曲をそのまま受け入れる環境には、英語の通用度が高いことが影響していると思われます。

なお国産エンタメが全くないかと言えばそうでもなく、例えばcnaの制作するドキュメンタリーは国際的に高い評価を得ており、真面目なトピックについてはかなり強いことが伺えます。

合理性を追求してきたシンガポールらしいかも?

日本ブランドの強さは共通

エンタメの土壌はかなり異なりますが、シンガポールと香港は異なる文化を受け入れる柔軟さが高くビジネスにも貪欲であるという点は共通しています。

最近は「ちいかわ」がどちらでも爆発的に人気!

そしていずれのエリアでも日本が大人気!日本資本のお店が続々と進出しています。その程度は日本の漫画が大人気のヨーロッパとはけた違いで、もはや日本と全く同じ生活が送れそうなレベルの充実っぷり。

以前も日本文化は人気でしたが、日本企業の進出が進んだことでかなり状況が変わっています。

以前は中国製の商品に間違えた日本語が堂々と書かれていることが多かったですが、最近はそんなパチモン感のある商品はあまり見かけなくなりました。とはいえ「の」を多用するのは今も変わらないみたいです。笑

さらに香港の飲食店では日本の楽曲(主にあいみょん)がかなりの頻度で流れています。おしゃれなカフェからマクドナルドまでとにかくどこでも!シンガポールでは欧米の楽曲が多いので、日本のコンテンツの浸透度は香港の方が上かもしれません。

香港の朝マックにはあのちゃんがいました。メニューも日本と共通の物が人気みたいです。

なお以前別記事でシンガポールで日本の商品が買えるお店を紹介しましたが、ほぼ全て香港にも出店しています。シンガポールと香港は同じ中華系メインの土地なので、マーケティング戦略も似ているのでしょうか。

日本人にとってはシンガポールも香港もかなり住みやすくなったと言えるかもしれません(もちろん十分なお金があれば、ですが…)。

気候の違い

気候はシンガポールと香港で結構違う感じがしますね。どちらも日本より暑い気候で高温多湿という共通点がありますが、それぞれ違う気候帯に属しています。

シンガポールは熱帯性気候で年中暑いです。常に30度くらいあります。雨季と乾季に分かれており、乾季はたまに涼しい日もあります(とはいっても27度くらいはある)。またたまにスコールがあるので注意しないと(注意しても?)ずぶ濡れになります。

ちなみにシンガポールは雷雨の割合が世界一らしいです。以前チャンギ国際空港でやっていたマーベルのイベントで書いてありました(雷を操るマイティ・ソー絡みで)。

毎日の暑さでうんざりしますが、メリットは気温が安定しているので逆に極端に暑くなることもないこと。35度を超える日本の夏よりもシンガポールのほうが涼しいくらいです。

一方の香港は亜熱帯性気候。日本よりも全体的に気温は高いですがほんのりと四季があり、寒いときは(ある程度ですが)寒いです。こちらも雨季があり、台風シーズンが夏から秋と日本よりも長いです。多めの降水量が予想される際にはテレビで警報が流れるので、特に雨季にはテレビをチェックしておく必要があります。

寒さが苦手な人にとっては、いずれも過ごしやすい場所と言えるかもしれませんね。また暑さが苦手な人にとってはシンガポールはちょっと辛いかも。

食文化・食生活

ここも両者で似ているようで結構違う項目。比べてみると結構面白いです。

多様性と独自路線

香港といえば飲茶や広東料理が非常に有名!グルメが香港旅行の目的という人も多いのでは。

香港での日常食はやっぱり香港料理であり、各国料理は日常的に食べるファストフードかちょっとおしゃれして行くようなレストラン、はたまた宗教上の制約のある移民が行く食堂のどれかといった感じにざっくり分かれています。日本料理は諸外国と同様に高級路線です。

最近は東南アジア料理が食べられるお店も増えてきましたが、あくまで独自の店舗というか、シンガポールの有名店が続々と進出して来ているという感じではなく、例えばマックスウェルフードセンターの有名店である天天海南鶏飯が数店舗展開しているくらい。

トレンディーな中環街市にあるシンガポール料理のお店。

なおシンガポールで多数の店舗を展開するヤクンカヤトーストは香港ではなく深圳にあります。

天天海南鶏飯はローカルなホーカーセンターの小さなお店というイメージしかなかったので、香港で見つけたときは驚きました。

打って変わってシンガポールでは、中華系と並んでマレー料理やインド料理も豊富です。ホーカーセンターやフードコートには大抵の場合中華系・マレー系・インド系のお店が一通り揃っており、そこに日韓料理の屋台が入ってくる感じ。

なおそのようなところの中華料理は中華系シンガポール人の多くが中国の南部にルーツを持っていることを反映して南方系(潮州料理など)がメイン。食の好みが香港と近い(というかほぼ同じ?)からか、譚仔三哥や泰昌餅家といった香港のお店がかなりの数進出しており、疑似香港トリップが簡単にできます。

最近は中国からの移民も多いので東北料理などの他の地方の中華料理も良くありますね。

お互いの食文化がお互いに影響を与えて、じわじわと同じような感じになっていっているように感じます。

ホーカーセンターと茶餐廳

シンガポール名物といえばホーカーセンター。日本語では公営屋台村と訳されることもあり、様々な料理を安価に楽しむことができます。似た業態としてコーヒーショップというものもあり、こちらはホーカーセンターを小さくしたようなローカル色強めのフードコート。ホーカーセンターは専用の敷地を持っていることが多いですが、こちらは公営住宅の一角に設けられています。

こうした業態の飲食店群は元々街路に並んでいた屋台を政府が一か所に集めて管理するようになったのが始まりなので、低所得者層でも利用しやすいよう提供価格が低めに設定されているのが特徴。

ホーカーセンターは物価の高いシンガポールにおいて安価に食事ができるありがたい場所ですが、近年はミシュランガイドに掲載されるお店も登場するほど、安い屋台街という枠を超えて独自文化の象徴としての地位を確立しています。

ホーカーセンターのフィッシュスープ。

ミシュランガイドに掲載されるほどの美味しい料理があそこまで安く食べられるなんて…なんて素晴らしい場所なんでしょう。

ホーカーセンターの難点は大体の場所がほぼ屋外のため暑さの影響をもろに受けること。扇風機も設置されていますが、ある程度シンガポールの暑さに慣れていないと、食べているだけで熱中症になりそう…。

一方で香港のローカル食堂といえばやっぱり茶餐廳!

一つのお店で朝から晩まで中華料理から西洋料理までバリエーション豊かな凄まじい数のメニューを提供しているのが特徴の、いわば香港式カフェレストラン。雰囲気は全く違いますが、何となく日本のファミリーレストランを彷彿とさせる業態です。

こちらは香港の朝ごはんメニュー。

ホーカーセンターとは異なり完全なビジネスなので価格設定は高くなりがちですが、ちゃんとエアコンの効いた屋内(当たり前?)であり、朝から晩まで時間帯に応じた様々なメニューが楽しめるのが特徴。なお似たような業態に冰室がありますが、こちらはどうやら茶餐廳の前身となった軽食店を指すようです(メニューの数に違いがあり茶餐廳が多く冰室はシンプルらしいですが、筆者個人としてはそこまでの違いは感じられません)。

他には飲茶の専門店があったり、ローストの専門店があったり、麺やお粥の専門店があったり…香港料理のジャンルは本当に多彩です。しかもそれぞれの専門店の数が面積に対してとにかく多い!特徴的な個人店が多いので同じ料理でも無限にバリエーションがあります。

シンガポールは異なるモールに同じお店が入っていることも多いので一通り食べる(たような気分になる)のはそこまで難しくない(この料理といえばこのレストランというのが大抵ある)ですが、香港はお店が多すぎて毎日違うお店で食べても一生コンプリートには至らなそう。

ちょっと極端な物言いにはなりますが、シンガポールよりも香港の方が純粋に食を楽しんでいるような気がします。

食のマナーや習慣の違い

シンガポールの食のマナーは香港と比較すると日本に近いと感じます。

具体的には、香港では食器を使う前に洗う習慣が残っていますし、鶏肉の骨などをテーブルにそのまま吐き捨てる光景がまだまだ見られます。同じ料理を食べる場合であっても、シンガポールではこれらはあまり見られません。

また飲食店の営業時間はシンガポールのホーカーセンターが大抵深夜まで営業しているのに対し、香港は23時くらいにはほぼ全て閉まってしまいます。シンガポールにある24時間オープンのカフェは香港では見かけません(マクドナルドくらい?)。

以前は香港ではかなりの飲食店が深夜2時や3時まで営業していました(筆者も深夜便で到着した際は利用していました)が、コロナ禍を経てそのようなお店はすっかり無くなってしまったようです。

香港のドキュメンタリーで政府がナイトタイムエコノミーの復活に向けて色々とイベントを打っているのを知りました。夜の消費を抑えてその分を旅行に充てる人も多いのだとか。日本旅行熱の高まりが香港の夜の賑わいを奪っているという側面がありそうです…。

さらにレストランで食べ終わった食器を片づけるかどうかも両者で結構違いがあり、具体的にはシンガポールは片づける文化ですが香港ではそのまま置いておく文化です。

なおこの点については以前はシンガポールも香港と同じ置いたままスタイルでしたが、政府がホーカーセンターで食器の片づけを義務化した2021年あたりから変わってきました。マナーとして定着している日本とルールで義務付けているシンガポールでは背景が異なるものの、結果として日本と同じような感じになりましたね。

教育とビジネス

シンガポールも香港も日本とは比べ物にならないほど教育熱心かつビジネスマインドが強い!子育て環境としては良さそうですが、当の子供は非常に大変そう…。

超学歴社会と熾烈な競争

先に触れたとおり、中華系は本当に教育熱心というか競争意識が高いです。それもそのはず、いずれの場所でも教育の各段階で厳しい選別が行われることになっており、しかもそれが将来に直結するからです。

この事実を反映して、シンガポールでも香港でも街中のいたるところに塾の広告がありますし、各教科のスター教師?が腕組みをしているのも特徴的。一生を左右する重要事項なので教師もしっかりと分かりやすくランク付けされています。

一回失敗してしまうと挽回が難しいのも、競争に拍車をかけています。

また塾の前にはどこどこの学校に合格したとかランキングで良い成績を取ったとかの実績が割と詳しめに示されていることが多いです。合格した学校名だけを公表する日本と違い、いずれの場所でも合格者の実際の成績表を掲示(さすがに名前は隠している)していることも結構あるので非常に生々しい…。

さてそんな感じの激しい学歴社会であるシンガポールと香港の違いですが、筆者個人の感覚としては将来の学歴を左右するPSLE(小学校の卒業試験)のあるシンガポールが香港よりもより苛烈だと思います(香港も日本と比較すると十分厳しいですが)。

毎年PSLEの時期になるとニュースで取り上げられますし、良い成績が取れなくて自殺してしまう子供もいるとか…。大学進学への道がこの段階でほぼ閉ざされてしまう可能性があることを考えると、重く考えてしまうのも不思議ではないかもしれませんが、小学生の子供がここまで思いつめるなんて尋常ではありません。

高校までの成績を問わず全員がトップ大学を受験できる日本って、つくづく恵まれているなぁと感じます。

さらにシンガポールのショッピングモールの高層階はほぼ確実に塾や教育関連のサービスフロアになっていますし、優秀な生徒は顔写真と成績が普通に掲出されています。香港も似たような場所はありますが、シンガポールほど露骨に子供を区別している感じはありません。

シンガポールのあるモールで見かけた、アニメのヒーローやプリンセスの衣装を着た子供たちの写真。最初は「スタジオアリスみたいなコスプレ写真館かなー。微笑ましいなー。」なんて思って見ていたのですが、後でそれが成績優秀者の子たちを表彰する目的であると知ったときには軽く戦慄しましたね。

ちなみにシンガポールでそのような場所に掲出されている子供たちや教師集団はほぼ全員が中華系。マレー系やインド系は記憶にないので、そのあたりは民族による考え方の違いがあるのかも。

シンガポールや香港で生まれたら確実にバイリンガル以上になれる&日本よりもキャリアの選択肢が広がりますが、自分がこのプレッシャーに耐えられるというと、自信は正直ありませんね…。

伝統金融とデジタル金融

このように厳しい選別を行いながら人材を育成するシンガポールと香港ですが、強みを持つ分野は微妙に異なります。

具体的には、古くから富が集まる金融ハブとしての香港、デジタル技術を活用して成長する若いシンガポールといった感じでしょうか。いずれの場所も税率を低く抑えており投資が集まりやすいようになっています。

国家安全維持法を契機として香港からシンガポールに資本の移転が進んでいるという状況があるので、この構図は今後変わっていくと思われます。

なお市井のデジタル化はシンガポールの方が圧倒的に進んでおり、シンガポールの銀行口座を持っていれば専用のアプリで紐づけを行うことでほぼ全ての商店やレストランでキャッシュレス決済が可能です。香港は現金だけのお店や現金かオクトパスカードしか受け付けないお店が非常に多いですね。

公共wifiの整備状況や商店でのwifiや電源の利用のしやすさもシンガポールに軍配が上がります。香港はスターバックスのようなカフェであってもwifiの利用に30分程度の時間制限を設けていることが多く、しかも電源が利用できる座席も非常に少ないため正直かなり不便です。

シンガポールならすぐに作業場所が見つかるのに…なんてフラストレーションが溜まることも結構あります。

またシンガポールであれば路線バスでスマホのUSB充電ができますが、香港ではできません。このあたりも地味にストレス。

国民性

国民性はシンガポールと香港ではベースとなる思想は似ているものの、人々の気質が結構違うというのが筆者の感覚です。

共通しているベースとしては、シンガポールも香港も東洋的(中国的と言っても良いかもしれません)で、家庭や血のつながりを重要視し、仕事では効率や高い生産性を求めます。そして日本のような「能ある鷹は爪を隠す」ような感覚は全くなく、持っているスキルや富(高級な物とか)は存分に誇示する(時に派手に見せびらかす)感じの人が多いです。

さらに時間の感覚も似ており、シンガポール人(主に中華系)と香港人は常に時間に追われてせかせかしている場面が多いです。香港のエスカレーターが異様に早いのはその証拠かもしれません。

同じシンガポール人でも中華系以外(マレー系やインド系など)だと、また全く違いますね。

また女性の地位が高いのもシンガポールと香港に共通する特徴でしょう。いずれの国においても、バリバリ働いてキャリアを積み上げていく女性が多いです。その影響か一歩引いて男性を立てるものとして描かれることが多い日本人女性に憧れ(妄想?)を抱く男子が一定数いる様子。

シンガポールでタクシーを利用した際、「日本人の女って(うちの国と違って)男に尽くすんでしょ?」と言われたことがあります。

シンガポールの場合、そこに競争社会から出てくる強烈な負けず嫌い気質「キアスー」(由来は福建語)が加わってきます。香港も同じ文化圏なので似たような傾向がありますが、シンガポールはもっと露骨。人気の物は誰よりも先に手に入れたい、絶対に損をしたくない、といった意識が常に見え隠れしています。

なおシンガポールは民族によって生活様式も考え方もかなり異なるので、シンガポール人として括るのは無理があるという点も一方であります…。筆者個人の感覚としては、マレー系やインド系は中華系よりももっとのんびりしていると言うか、身内のことに関心の中心が置かれている感じかなと。

その他色々

貧富の差はいずれも相当激しそう

シンガポールと香港では両方とも物乞いは(ヨーロッパと比較すると)かなり少なめ。ただし肌感覚としては香港のほうがホームレスが多そうです。

またシンガポールでは、CBDなどで電動車いすに乗った高齢者がポケットティッシュを売っている姿をよく見かけますが、香港ではボードを持った物乞いや街路に跪いている物乞いが繁華街に一定数います。

さらに、いずれの都市でも高級な物と安価な物の差が激しく、特に香港でその傾向が顕著だと感じました。もちろんシンガポールも物価は高いですが、香港のようにエッグタルトが500円近くするようなお店に大行列ができるのはちょっと考えづらいです。

美男美女が少ないシンガポール?

ファッションについては男女ともに香港の方が気を使っている人が多い印象です。シンガポールのようにビーチサンダルやラフすぎるスポーツスタイルで歩き回っている人はほぼいませんし、筋肉を見せつけてくるような布面積が少ないタイプのファッションの人も見かけません。

ヘアスタイルも決まっている人が多く、香港には日本とはタイプが異なるオシャレさんが結構います。

さらに香港の方がシンガポールと比較すると美男美女が多いような気がします。

シンガポールには美男美女が少ない(美男美女は南下する途中で結婚したり召し抱えられたりしてシンガポールまでたどり着かなかったという説がある)ということも良く言われますが、理由はともかくとして実際に街中を見ていると、正直同意せざるを得ません。香港スターも美男美女だらけですし…。

まとめ

この記事ではシンガポールと香港について比較してみました。

改めてまとめると以下のような感じ。

シンガポールと香港で似ている点
  • 世界トップレベルで生活物価が高い
  • 住居費が非常に高く交通費は安い傾向がある
  • 面積が小さく人口密度が非常に高い
  • イギリス統治時代の交通ルールや交通機関が残っている
  • いずれも水回りはそこそこの清潔度
  • 日本の商品やサービスが大人気
  • 厳しい競争社会・学歴社会である
  • 金融に強みを持っている(ただし内容は結構違う)
  • 基本的にせっかちで負けず嫌い
シンガポールと香港で異なる点
  • シンガポールでは嗜好品に対する規制が非常に厳しい
  • シンガポールでは公営住宅が多く、香港では民間住宅が多い
  • シンガポールは手入れされた緑が多いが、香港は少ない
  • シンガポールは英語と他言語、香港は広東語と英語
  • 多様性に関するルールはシンガポールの方がしっかりしている
  • エンタメは香港の圧勝

こうして振り返ってみると、ベースというかスペックは似ている点が多く、細かい点や社会制度に多くの違いがありそうですね。

個人的な意見としては、以下のような感じになります。

住むなら…シンガポール!
  • 日本食を含めて食のオプションが豊富
  • どこでも英語が通じる
  • デジタル化が進んでいて色々と便利
旅行するなら…香港!
  • 飲茶や中華デザートの本場である
  • 観光地や文化施設が充実している
  • 美しい風景とカオスのギャップが面白い

また何か思い出したら書くかもしれません。以上です!

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