2024年も気づけばもう12月。
最終試験を一通り終え、筆者のフランスでの交換留学ももうすぐ終わりです。
これまでずっとフランスで留学してみたかったこともあり、今回のリヨン行きは願ったり叶ったりでワクワクしていました。ただ一方で、交換留学先ではジュネーブでの専攻とは異なる分野を学ぶことや、ジュネーブと違いフランス語しか通じない環境&悪名高いフランスの行政手続きに挑むという、初めてのフランス生活特有の緊張感があったのも事実。
そんなこんなで期待と不安が入り混じる交換留学でしたが、蓋を開けてみると、半年というとても短い期間であったにも関わらず色々と貴重な経験ができたというのが率直な感想です。今後に繋がる学びや出会いもありました。
この記事では、筆者の体験を元に交換留学を少しでも有意義にするためのヒントをご紹介します。
交換留学を検討している方や現在交換留学をしている方の参考になれば嬉しいです。
交換留学が意味ないと言われる理由
交換留学があまり意味がないと言われる理由(いわゆるデメリット)としては、正規留学との違いを考えると分かりやすいです。
期間が短い
交換留学は半年間から1年間と比較的期間が短いのが特徴。
少しだけ海外生活を体験してみるにはちょうど良い期間ではありますが、現地の言語を習得したり現地の文化にどっぷり漬かりたいならやっぱり足りませんし、現地人にしか分からないようなちょっとした闇を垣間見ることもあまりありません。
現地で交友関係を広めたいと思っている人は多いと思いますが、短期間だとどんなに積極的に動いてもある程度までしか関係が深まらないということにもなります。
一方正規留学であれば、学士なら3年から4年、修士なら1年(イギリスの場合)から2年程度と、交換留学と比較すると長いため、かなり濃い経験をすることができます。
期間が固定されている
また交換留学は派遣元と派遣先の協定に基づいているので、学生の都合で交換留学のタイミングをずらしたり延長(&短縮)したりといったことはできません。
交換留学制度を利用するためには定められた時期に定められた手続きをパスする以外に方法がないため、もし交換留学に行きたいのであれば、メンタル面や費用面などの準備が整っていない状況でも様々な手続きを行わなければなりません。
また半年間の交換留学であれば、交換留学先にいられる期間は泣いても笑っても半年間しかありません。もし交換留学先が非常に理想的な環境だったとしても、交換留学というかたちで滞在を延長することは不可能です。
一方で正規留学の場合は自分で出願するプログラム期間を選べますし、正規の学生なので学習の進度や学生の都合に応じて修学年限を延ばすことができる場合もあります。
交換留学の学位が得られない
交換留学はダブルディグリー制度とは異なるため、残念ながら交換留学先において学位(学士・修士・博士)を得ることはできません。
もちろん履歴書に交換留学の実績を書くことはできますが、キャリアや学歴という意味ではどうしても学位を得られる留学よりも劣ってしまうのが現実。交換留学によって世界的な名門校で学ぶ機会を得られたとしても、その点は変わらないことがほとんどです。
また交換留学の協定内容によっては、成績証明書には交換留学先における成績が表示されない(単位を取得できたかどうかしか分からない)ことがあるので、その意味でもアピール材料にするのは難しいと言わざるを得ません。
さらに交換留学は基本的に単位交換が可能ですが、科目によっては派遣元で単位認定されなかったり、換算方法が異なったりすることで、帰国後に余計に科目を履修しなければならなくなるケースもあるようです。事前に対策が可能な点ではありますが、ちょっと怖いですね。
正規留学であればこのあたりの問題は一切生じません。
交換留学先の学生と同じ待遇は受けられない
交換留学の場合、交換留学先の正規学生なら履修が必須の科目が任意履修だったり、交換留学先で提供されているサービスが受けられなかったりと、扱いが異なることが往々にしてあります。
EMリヨンビジネススクールでは、例えば交換留学生は体育科目が任意履修でした(正規学生は必須)し、キャリアサービスが一部受けられないことがありました。
また正規の学生であれば(国によって)プログラム修了後に一定期間その国に滞在して職探しをすることが可能だったりしますが、交換留学生はそのような制度の対象にはなりません。
交換留学生は学生生活やキャリアの面で正規の学生との溝を感じることが意外と多いかもしれません。
それでも交換留学に行くべき理由
先の項目で交換留学のデメリットについて触れましたが、これらのデメリットがありつつも、行く機会があるのなら行った方が良いと筆者は考えます。ここではその理由(交換留学のメリット)について触れたいと思います。
多角的に学問を捉えられるようになる
交換留学では、単位交換の都合上派遣元と派遣先で似たような科目を履修することになるケースが多いと思いますが、国や地域が変わると同じトピックでもベースとなる考え方が全く異なったり、見慣れない教授法や評価メソッドが用いられていることがあります。
また派遣元とは異なる科目を履修することで、これまで学んできた内容が違って見えたり、新しい視点を得ることができるかもしれません。
良質なトレーニング機会が得られる
日本の大学から海外の大学に交換留学するなら、英語力の向上が見込めます。
海外の大学は授業の予習復習や課題が基本的にかなりハード。それなりに良い成績を修めたいならどうしてもリーディングをしっかりこなしたり、授業中に発言したり、課題にフルコミットする必要が出てくるため、個人差はあるものの、嫌でもリーディング速度は上がりますし英語で発言することにも慣れていきます。
またグループワークを行うことで、日本とは異なる考え方に向き合うことになったり、多様性の塊のようなチームを引っ張ったりすることになったりして、自然と調整力や異文化理解力が高まっていくかもしれません。
多国籍チームのグループワークは大抵トラブルだらけになるので、トラブル対応力を磨くのにも良いかもしれません。
これらの経験を学生の間に積めるのは非常に大きいです。
筆者は大量のリーディングとディスカッションが課されるアカデミックな環境(ジュネーブ)から、大量のプレゼンテーションとグループワークが課されるビジネススクール(リヨン)に交換留学しました。隣国でも学校が違うと学習内容はこれだけ違います!
コスパが良い
交換留学の場合、学費は基本的に派遣元の学校に支払えばよく、交換留学先には支払う必要がありません。交換留学先の学費がかなり高額な場合はかなりの費用が浮くことになるので、その点では非常にコスパが良いと言えるでしょう。
学位は得られないかもしれませんが、現地の学生と同じ授業を格安で経験できるのはかなり貴重な機会なので、それだけで素晴らしいメリットだと思います!
また学校にもよりますが、交換留学生用の支援(奨学金など)が受けられることもあります。このようなケースの奨学金の金額はそこまで高額ではないので、それだけで余裕のある学生生活を叶えるのは難しいかもしれませんが、正規留学で奨学金を得る難しさを思えば最高の制度だと言えるでしょう。
交換留学の学内選考は簡単ではありませんが、金銭的な意味でも挑む価値があります。
IHEIDのセメスターあたりの学費は4,000フラン(約68万円)、一方EMリヨンビジネススクールの学費は年間21,400ユーロ(半年に直すと10,700ユーロ、約173万円)。かなり得です。
人間関係が広がる
海外は日本と比較すると学生同士の関係はオープンですし、学生と教授の距離も近いです。
他の学生と交流したいのであれば、学生団体が企画するイベント(割と頻繁にある)に積極的に参加することで交友関係を広げることができますし、授業中に積極的に発言することで一目置かれる存在になれるかも。
海外の大学(院)生は成績を非常に気にするので、デキる学生だと思われればメリットがいっぱい。
また教授に自分の興味のある分野をシェアすることで良い関係が築けたり、同じ分野に関心のありそうな人を紹介してもらえることがあるかもしれません。
将来的に進学を考えている人にとっては、アカデミックの世界で有用なコネクションを作るチャンスです。
卒業を延期せずに留学できる
交換留学は交換留学先の大学で取得した単位を派遣元大学で取得した単位に変換することができるので、そのあたりの手続きさえしっかりできれば、交換留学に行く場合でも修学年限を延ばす必要はありません。
この点は日本の新卒就活に臨む学生にとってはメリットですね。
正規留学の場合は留学先の大学のスケジュールにどうしても左右されます。入学と卒業のタイミングが9月になることが多く、日本の就活イベントなどに参加しづらかったりします。
ただしこのメリットは現地就職が目的なら関係ないかもしれません。
交換留学を活かす方法
これまでに交換留学のデメリットとメリットを紹介しましたが、ここからは先に述べたメリットを最大化する方法についていくつかご紹介したいと思います。
語学力は事前にできるだけ上げていく
まずは何と言っても語学力。交換留学の経験を左右する最も重要な要素であると言っても過言ではありません。
語学力はプログラム開始までに最低でも交換留学先のプログラムに正規で出願できるレベルまで上げておくことをおすすめします。そのレベルに達していれば他の学生と同じように授業についていくことができます。
もし自分がそのレベルに達していないなら、学内選考をパスしても気を抜かずに自己研鑽に励みましょう。
語学力は日々の授業や課題をこなすだけでもある程度の向上が見込めるのも事実ではありますが、語学力が低い間は授業を受けても内容を習得することが難しくなりますし、グループワークでは周囲の足を引っ張ってしまうかもしれないので、「行けば何とかなる」精神は危険です。
また英語圏以外に行く場合、学校の授業が英語であっても生活は現地語になります。こちらも抜かりなく準備していきましょう!
語学力をある程度磨いておいたおかげで、自分の専門領域以外のディスカッションにも楽しく参加することができました。
リンクトインのアカウントを作っておく
海外の学生の間では、キャリア構築のためにリンクトイン(ビジネス用SNS)のアカウントを充実させておくのが常識。連絡先交換ではWhatsAppやインスタグラム、LINE(東南アジアには多い)といったアプリももちろん使いますが、リンクトインで繋がることも多いです。
特に職務経験がある学生も多い修士課程以上ではほぼ必須と言っても良いでしょう。リンクトインのアカウントを持っていない人を探す方が難しいレベルです。
日本ではそこまで流行っていないリンクトインですが、この機会に是非アカウントを作ってみてください。交換留学前の段階である程度アカウントを充実させておけば、交換留学先だけでなく学外でのコネ作りにも役立つはずです。
この利用目的では日本語で書いてもあまり意味がないので、是非英語で書くことにチャレンジしてみてください!
交換留学先の学校・国・地域を徹底リサーチ
続いては情報収集!交換留学先の特色をとにかく調べてから行くのがおすすめ。
学校の特色やシラバスの記載内容をしっかり調べてから行くと、その学校が強みを持つ分野を効率よく学習することができ、交換留学先の学校の強みを(ある程度は)自分のものにすることができるはずです。
また学校が立地するエリア情報(交通手段、名物、治安…)や国民性(喜ばれるお土産、タブー、コミュニケーション方法…)なんかも調べていくと、現地の生活を楽しむことができ、有意義な滞在にすることができます。
筆者の場合、リヨンの地理的な条件や自治体の構造あたりを調べておいたおかげで最終プロジェクトのトピック選びが非常に簡単でしたし、フランス語の試験でもその知識を使うことができました。
イベントには積極的に参加する
学校や学生団体が主催するイベントに積極的に参加することで、正規の学生の輪に入ることができたり、教授に顔を覚えてもらえたりと、正規学生と似たような恩恵を受けることができます。
また交換留学生や国外からの留学生(正規学生を含む)向けに地元を案内するようなイベントも良く企画されます。そのようなイベントに参加することで、学校のある地域の魅力を発見したり、勉強に疲れたときに自分を癒せるスポットを見つけたりすることもできます。
イベント情報は交換留学先が作るグループチャットで流れることが多いので、興味のあるグループにはなるべく参加して機会を逃さないようにしましょう。
教授とも積極的に絡む
海外の大学は教授と学生の関係が日本と比べてフラットなことが多いです。
交換留学先の授業スタイルにある程度慣れてきたら、授業内容に関する質問をしてみたり、卒論の構想について話をしてみたりするのがおすすめ。
もちろん対応は教授にもよりますが、筆者の経験上、結構しっかりアドバイスしてくれることが多いですし、質問内容にもっと適した他の教授を紹介してくれることもあり、シンプルに非常に勉強になりますし、将来のキャリアにも役立つこと請け合いです。
この機会に教授とリンクトインで繋がっておくのも非常におすすめ!
筆者の場合、交換留学先で卒論のメンターになってくれそうな教授と出会ったり、日本人の教授(別の学校)を紹介してもらえたりしました!
「まず聞いてみる」「ダメ元でやってみる」は正義
日本では「聞く前にまず調べましょう」と教わりますが、それは情報が事前にしっかりとしたかたちで共有されているという前提があるから。
海外ではそこまでしっかりとした情報リソースがない場合があるほか、情報リソースがある場合であっても交渉してみてナンボというスタンスも割と一般的です。
そのため、もし分からないことがあればまずは質問してみましょう!
そしてもう一つ重要なのが「ダメ元でやってみる」精神!
日本人はルールを事前に確認してそこにダメと書いてあれば交渉せずに諦めることが多い(ダメなものはダメと言いますよね)と思いますが、海外では交渉次第で覆せることが結構あります。
日本だと交渉することは時として図々しいこととして嫌われますが、海外ではその感覚はあまりないのでガンガンやってOK。むしろ割と皆普通に交渉しているので、交渉しない分、相対的に不利な立場に置かれることすらあります。
法律関連はさすがにダメですが、それ以外のローカルルールは割と柔軟に変えられるのが欧米流といったところでしょうか。
筆者はスポーツクラスの選択で(大人気の)バドミントンに外れた際、担当の部署に相談(交渉)。結果として枠を勝ち取ったことがあります。
日本だと色々言われそうですが、海外では誰も気にしません!
まとめ
この記事では、交換留学のメリットやデメリットと、交換留学を意義深いものにするためのヒントをご紹介しました。
交換留学はどうしても正規留学と比較すると学歴やキャリアにおいてはっきりとしたメリットを発揮しづらい面がありますが、過ごし方を工夫すれば、その後の学業やキャリアに大いに活用できるポテンシャルを秘めているというのが筆者の見解です。
もし交換留学を迷っている方がいれば、この貴重な機会に一歩踏み出してみることをおすすめします!
本記事が少しでも参考になれば幸いです。
以上です。
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