スイス・ジュネーブ留学中のMattです。
留学は英語(もしくは現地語)で専門を学ぶ場。大学院の場合学生の英語力はTOEFLやIELTSなどの試験で証明済みという前提ですが、それらの試験でそこそこの点数を取っていたとしても、英語で課題をこなしたりディスカッションで発言するのは非常に体力と精神力を使います。
そして日常で取り組むべきことの筆頭が専門書や論文を読んで要点を理解すること。量が多い&語学の試験では登場しない専門用語も多いので、読みこなすのは簡単ではありません。
慣れていないと読み終えるだけでも大変ですが、あまり時間をかけてもいられないのも事実です。
ディスカッションベースの授業では、授業開始までにリーディングが終わっていないと割と詰みます。
リーディングは慣れてくると要点が分かってきて一部だけ読んで終わりということもできますが、いつも同じようにいくとは限りませんし、専門用語混じりの英文を読まなければいけない&課題や論文を英語で書かないといけないという事実は変わらないんですよね…そんなときに役立つのが翻訳・校閲ツールです。
留学でツールを使うのはズルをするように感じる方もいるかもしれませんが、生成AIも登場した現代ではツールを使って効率化したり能力を補ったりするのはもはや常識。
課題や論文の執筆を全て生成AIに任せるのは当然NGですが、補助的に使うだけなら基本的に問題にはなりません。
教育機関や授業によっては生成AIや各種ツールの利用に関するガイドラインを策定しているので、事前にチェックしておくとトラブルが防げます。
本記事では、留学中に役立つ翻訳・校閲ツールを5つご紹介します。基本的には無料で使えますが課金すると更に便利ですので、ちょっと触ってみてもし気に入ったら是非有料版の利用も検討してみてください。
DeepL
まずは日本人留学生おなじみのDeepL。
最先端のAI技術を使用した高精度の機械翻訳&校閲サービスで、32言語のテキスト翻訳、PDFやワードファイルの翻訳、DeepL White(校閲)といった機能が利用可能です。
DeepLはまとまった分量の硬質な文章であっても自然な日本語で翻訳してくれるほか、DeepL Whiteは英文の適切な表現を単語・文章単位でそれぞれ提案してくれるので、英作文に非常に役立ちます。
なお現在確認できるデメリットとして、翻訳機能を利用する際に文章の内容が一部抜ける(訳文に反映されない)ことがあるので、DeepLの翻訳機能を利用する際は、指定した文章の内容が全て訳されているかを必ずチェックするようにしてください。
テキスト翻訳とDeepL Whiteだけなら会員登録なしで使えますが、ファイル翻訳が必要なら無料会員登録するのがおすすめ。
大学図書館のwifi経由でDeepLを利用していると数時間で利用上限に達して翻訳機能が使えなくなることが度々ありました。
他のネットワークに接続している時には経験したことがないので、無料版ではネットワークごとの利用上限も設定されていると思われます。
スマホ向けのアプリはこちらからダウンロード可能です。
個人・チーム向けの料金プランは以下のとおりです。
プラン | 金額(月額・年払い) | テキスト翻訳 | 語調の切り替え | ファイル翻訳上限(月あたり) |
---|---|---|---|---|
Free | 無料 | 1,500文字まで | 非対応 | 3ファイル(上限:5MB) |
Starter | 1,000円 | 上限なし | 対応 | 5ファイル(上限:10MB) |
Advanced | 3,167円 | 上限なし | 対応 | 20ファイル(上限:20MB) |
Ultimate | 6,250円 | 上限なし | 対応 | 100ファイル(上限:30MB) |
日常でちょくちょく使う程度であれば基本的にFreeで十分ですが、留学のようにガッツリ文章を読んだり書いたりする場合は文字数制限のない各種課金プランが候補に入ってきます。
翻訳の機能面ではどのプランも大体同じなので、ファイル翻訳をあまり使わないならStarterが無難。ファイル翻訳が頻繁に必要な場合はStarterの4倍以上の文書が処理できるAdvancedやUltimateも検討を。
筆者は論文翻訳を頻繁に利用する一方でファイル翻訳はあまり使用しないので、Starterプランで契約しています。
Grammarly
続いては、AIによる分析によって文法や語法のミスを検出し修正提案をしてくれるGrammarly。
アカデミック向けや一般向けといったニュアンスの指定も可能なので、英文メールを書くときやペーパーを執筆するときなど、利用シーンに合わせてより適切な文章を作成することが可能です。
パソコンにインストールしておけば、メールなど文章を書く際に自動でスペルチェックが働くので非常に便利!文章のトーンも分かります。
Grammerlyの修正提案をそのまま受け入れるのも良いですが、どの部分が間違えているのかをまず自分で考えることで、文法・語法のミスを減らすトレーニングにも使えます。
ただし、正しいのに修正を提案されたり、固有名詞に修正マークが入ってくることもあり、ときどき精度に疑問を感じるときもあります。全て任せるのではなく、自分で最終チェックをすることが重要!
また自動でスペルチェック機能が働くのは便利なのですが、アイコンの位置がちょっと目障りなことも…このあたりは好みが分かれるところだと思います。
スマホ向けのアプリはこちらからダウンロード可能です。
個人向けの料金プランは以下のとおりです。
プラン | 金額(年払い/月額) | プランに含まれるもの(抜粋) |
---|---|---|
Free | 無料 | 文章の修正 トーンの確認 AIプロンプトによる文章作成(100プロンプト) |
Premium | 一か月あたりUSD12(年払い) 同USD30(月払い) | Freeの内容に加えて、 トーンの修正 全文書き換え 意図しない剽窃(盗作)の発見 AIプロンプトによる文章作成(1,000プロンプト) |
Business | 一か月あたりUSD15(年払い) 同USD25(月払い) | Premiumの内容に加えて、 スタイルガイド 分析ダッシュボードの利用 AIプロンプトによる文章作成(2,000プロンプト) |
ちょっと直してもらうだけであればFreeで十分ですが、筆者はアカデミックなトーンの文章を作成する必要があるのでPremiumを契約中です。
2024年3月現在、対応言語は英語(イギリス英語、アメリカ英語といった各種英語)のみ。また日本語によるサポートはありません。
Google翻訳
お次はおそらく最も身近なGoogle翻訳です。
以前は精度に問題があり誤訳も多く見られましたが、最近はかなり性能が向上しており割と自然な訳文が返ってきます。利用はもちろん無料!
上でご紹介したDeepLのサブとしても有用です。
今は画像やドキュメント、ファイルの翻訳にも対応しており、言語の自動検出機能も備えているなどかなりの多機能になりました。取り扱い言語が非常に多い点も優秀です。
またスマホのアプリに入れれば、目の前の外国語を瞬時に翻訳できるGoogleカメラ機能も使えます。いちいち文字を打ち込む必要がないので、外国語で書かれた看板やメニューなどを読むときに大活躍。
Googleカメラはアラビア語やタイ語のような見慣れない文字の言語の翻訳に特に力を発揮します!
アプリのダウンロードはこちらから。
ChatGPT
話題の対話型生成AIであるChatGPTも翻訳・校閲ツールとして非常に有用です。
翻訳・校閲は文章を打ち込んで目的に合わせたプロンプト(命令文)設定すれば簡単にできますが、プロンプトの内容を工夫すれば、文章の要約やニュアンスの指定まで、以下のような様々なタイプの文章作成も可能です。
- 文章の翻訳・校閲
- 文章の要約
- ニュアンス(ビジネス・アカデミックなど)を指定した翻訳・校閲・要約
- 専門用語を使用した翻訳・校閲・要約
- 特定の語句を入れた(もしくは除いた)翻訳・校閲・要約
またプロンプトを記述するときには以下の点に注意すると期待する結果が得やすくなります。
- 簡潔・明確に記述する→具体的なアウトプットを指定することで、望むアウトプットが得られる可能性が高まる。
- 翻訳の文脈を含める→論文や文章の背景や補足情報などを含めることで、適切な語彙の使用が期待できる。
- 対話を何度か繰り返して精度を高める→何度か往復することで機械学習が進み、アウトプットをより洗練したものにすることが可能。
無料版でもかなり使えますが有料版にするメリットも多いので、より高度な機能を使いたいなら課金を検討してみても。
オプションは以下のとおりです。
プラン | 料金(月額) | ChatGPTのモデル | 主な機能 |
---|---|---|---|
Free | 無料 | GPT-3.5 | 対話型AIの利用 |
Plus | USD20 | GPT-4(最新鋭のモデル) | Freeの内容に加えて、 より高精度の対話型AIが使用可能 画像・音声認識が可能 GPTプラグインなど追加ツールが利用可能 無料版よりもレスポンスが早い 優先的にサポートを受けられる |
Team | USD25(一人あたり) | GPT-4(最新鋭のモデル) | Plusの内容に加えて、 複数人で利用できる |
対話を通じた利用のみを行うのであれば、精度はGPT-4に劣るものの、FreeのGPT-3.5で十分利用目的を達せられると思います。
ただしプラグインを使えると活用の幅が格段に増える(簡単に情報が取得できたり、高精度の文章要約ができたりする)ので、文章以外の媒体でChatGPTを使いたい、プラグインで使いたい機能があるといった方には有料版がおすすめです。
筆者は時々思い出したように使うレベルなので、Freeプランを利用しています。
OCR Space
OCR Spaceは、光学文字認識(OCR)技術を利用して画像やPDFなどのドキュメントからテキストを抽出するためのオンラインツールです。
こちらは翻訳・校閲ツールではありませんが、文字データを認識できないPDFファイルなどからテキストを抽出して翻訳や要約にかけるような使い方ができるので紹介します。
使い方は非常にシンプル。
- OCR Spaceのウェブサイトにアクセスし、対象となる画像やPDFをアップロードします。
- アップロードしたファイルからテキストが抽出されます。結果は即座に表示されます。
- 抽出されたテキストを必要に応じて翻訳や校閲します。
無料プランでは処理数に制限が掛けられていますが、有料プランを使えばより多くの文書が処理できます。
詳細はこちら。
利用上の注意点
必ず自分でも内容の確認を
近年はかなりの技術向上が見られるものの、翻訳・校閲ツールは万能ではなく、精度にはムラがあります。
内容が抜けたり必ずしも意図した成果が得られない場合もあるので、成果物のチェックは確実に行う必要があります。
大学(院)の生成AI利用ルールは要確認
用途にもよりますが、生成AIを利用する場合は利用先のルールを必ず確認しましょう。特にアカデミック分野での利用には注意が必要です。
近年、大学(院)では生成AIの利用について独自のルールやガイドラインを定めている場合が多いようです。
秘匿性の高い情報は入力しないこと!
AIによる機械学習に関わるツールは利用者が入力した内容を基に精度を向上させていきます。そのため、ツールを利用する際に機密情報や個人情報を入力してしまうと、それらの情報もAIに学習されることになります。
運営企業はプライバシーポリシーを定めて情報が漏洩しないよう対策を行っているものの、万一に備えて
- ツールを利用する際に、入力情報を学習させない設定をする
- 機密情報や個人情報を入力しない
といった対策が必須です。
まとめ
本記事では、留学中に論文を読んだり書いたりする際に使える翻訳・校閲ツールを5つご紹介しました。
いずれも非常に有用なものばかりなので、まだ利用したことがないものがあれば是非使ってみてください。
以上です。
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