駐在や海外留学で長期にわたって日本を離れる際に誰もが検討するのが、日本の銀行口座をどうするかという問題。
日本の場合は非居住者になるとほぼ全ての銀行で口座解約が必要になりますが、一部の銀行では所定の手続きを経ることで日本の銀行口座を維持することが可能です。
- 三菱UFJ銀行(グローバルダイレクト)※月額300円
- 三井住友銀行(SMBCダイレクト・グローバルサービス)※月額220円
- SMBC信託銀行プレスティア
- みずほ銀行(海外勤務者向け日本国内送金サービス)
- ソニー銀行
- りそな銀行
本記事では、そのうち筆者が数年来利用しているSMBC信託銀行のプレスティアについて、メリットとデメリットを交えてご紹介します。
海外生活を送るうえで日本の銀行口座をどうするの?と悩んでいる方の参考になれば幸いです。
筆者はシンガポール駐在(2年間)とスイス大学院留学(1年間)に亘ってプレスティアを利用していたので、率直な感想を書いていきます。
メリット
まずは海外利用の際に得られるメリットからご紹介します。なお日本語でサービスが受けられる点もメリットではありますが、ここでは割愛します。
非居住者でも口座維持が可能
最も大きなメリットは何と言ってもコレ。日本の銀行は非居住者になると口座を維持できなくなることが多いですが、プレスティアの場合は所定の手続きを取れば口座を維持することが可能です。
銀行によっては月額利用料がかかる場合がありこれはプレスティアも例外ではありませんが、プレスティアでは条件を満たせば無料にできるのも嬉しいところ。
条件もそこまで厳しくありません。
複数の通貨を保有できる
プレスティアマルチマネー口座外貨普通預金を開設すれば、複数の通貨を保有することが可能。日本円から外貨に換えたり(外貨の購入)、逆に外貨を日本円に換えたり(外貨の売却)するのもウェブサイトやアプリで簡単にできます。
米ドル、豪ドル、ニュージーランドドル、英ポンド、カナダドル、ユーロ、スイスフラン、シンガポールドル、香港ドル、オフショア中国人民元、タイバーツ、南アフリカランド、トルコリラ、メキシコペソ、ノルウェークローネ、スウェーデンクローネ、デンマーククローネ
日本円から外貨を簡単に調達できるので非常に便利。場合によっては口座維持手数料がかかる海外銀行で保有するよりも有利です。
外貨による決済や引き出しができる
プレスティアの多通貨Visaデビット一体型カードGLOBAL PASS(後述)を使えば、マルチマネー口座にある該当の通貨で直接支払いができたり、ATMで現地通貨を引き出すことができます。
GLOBAL PASSを使うようになってから海外で両替所に行くことがなくなりました。
外貨フルバックを使えば対象外通貨の支払いも可能
また対応する外貨が口座になかったり、プレスティアで対応していない通貨の支払いの場合でも、外貨フルバックという機能を使えば日本円の口座から自動で両替して支払いをすることが可能です。
機能を停止する設定もできるので、勝手に両替されて…という心配もありません。
レートに事務手数料が上乗せされるので割高になる点には注意が必要ですが、非対応通貨でも物価の比較的安い地域に渡航する分にはそこまで気にならないレベルです。
デビットカードの海外利用で特典が受けられる
プレスティアの多通貨Visaデビット一体型カードGLOBAL PASSは海外利用により特典を受けることが可能です。
GLOBAL PASSは利用金額に対するキャッシュバックが魅力的。
ANAマイレージクラブ GLOBAL PASSはANAマイルに関する特典が充実しています。
それぞれの特典をまとめると以下のような感じ。
GLOBAL PASS | ANAマイレージクラブ GLOBAL PASS |
---|---|
海外のVisa加盟店での利用金額に応じて日本円でキャッシュバック (ステータスによって)海外ATM利用料のオーナー手数料無料 | 新規口座開設で300マイル 外貨預金額の増加額に応じたボーナスマイル 海外利用(買い物・ATM利用)でマイル (ステータスによって)海外ATM利用料のオーナー手数料無料 |
外貨積立サービス利用で為替手数料が無料になる
海外生活に外貨が必要な場合その都度外貨を購入するのも良いですが、外貨積立サービスすると為替手数料が無料になるので、レートが同じであれば外貨積立サービスを使った方が得。
大学院留学生が受けられるサポートプログラムが便利
所定の条件に当てはまる大学院留学の場合、各種手数料の優遇が受けられる「大学院留学サポートプログラム」の利用が可能です。特に海外送金手数料はバカにならないので非常に助かります!
詳細は後述します。
デメリット
海外利用は日本での利用とは異なるためデメリットもあります。
海外送金に時間がかかる&為替レートが不利&手数料が割高
銀行を通じて海外送金を行う際は、中継銀行を経由するため時間がかかります。中継銀行を経由するごとに手数料が上乗せされるので最終的にかかる手数料も割高になりがち。しかも手数料を引かれたうえで着金するので着金額に影響が出ます。
また日本円を外貨に換える場合も、海外送金で使えるwiseのようなサービスと比較すると為替レートが多少不利ですし為替手数料もかかります。
家賃や学費のように先方に着金すべき金額があらかじめ決められているようなタイプの支払いには正直使いづらいです。
筆者は一度プレスティアの海外送金で家賃を支払ったことがあるのですが、着金額が微妙に家賃に足りず、追加で送金するハメになりました。
住所変更が郵送か窓口でしかできない
海外に転居した場合や日本に本帰国する場合の住所変更の手続きは自署が必要となるため、郵送か窓口でしかできません。
本帰国の場合は日本に居るので窓口に行けますが、問題は海外に転居する際や海外で転居する場合。日本に帰国しない限り窓口には行けないことを考えると取り得る手段は郵送一択。
ウェブサイトに掲載されている様式をダウンロードし、印刷&記入&郵送することになるのですが、まずこの段階でインターネット環境の他に印刷環境が必要になるのがネック。
海外では日本のようなコンビニプリントは存在しません。
もちろん郵送するのにも国際郵便を利用することになるため、滞在国の状況によっては料金が非常に高額になったり、日本に書類が到着するまで時間がかかったり、悪いと書類が紛失したりするリスクも考慮しなければなりません。
外国口座への送金には送金先口座登録が必要
プレスティアでは、海外送金を行うにあたって送金先の口座を登録する必要があります。口座登録の承認に1週間程度かかることから、未登録の口座に早急に送金したい場合には使えません。
解約系の手続は電話・郵送・来店のみ
外貨積立サービスのようなサービスはウェブ経由で簡単に申込ができるものの、解約はウェブではできず電話・郵送・来店のみ。海外在住者にとってはどれも日本国内から行うよりも高額な費用がかかるものばかりなのでかなり不便です。
電話であればリアルタイムに手続きができるものの、待ち時間は発生しますし割高な料金がかかります。一方で郵送の場合は先述のようなリスクがあります…。
また外貨積立サービスの金額変更についてもウェブで行うことができず、既存の契約を解約したうえで改めて希望する内容で契約するという手続きが必要。増額したい場合は追加分をウェブで契約すれば済みますが、月々の積立額を減額したい場合は解約の手続きを電話・郵送・来店のどれかで行う必要があり、かなりストレスがたまります。
口座維持手数料がかかる(無料にできる方法も一応あります)
プレスティアでは原則月2,200円の口座維持手数料がかかります。海外だと割とスタンダードな仕組みではありますが、通常はこのような手数料を徴収されない日本の銀行に慣れていると地味にストレス。
条件を満たすと口座維持手数料が無料になるので、条件を満たせるかを考えて口座を開設するのも一案です。
以下の条件のうち一つ以上を満たす場合は口座維持手数料が無料になります。
- 前月の月間平均総取引残高の外貨部分が20万円相当額以上
- 前月の月間平均総取引残高が50万円相当額以上
- 前月末時点でローン商品のお借入れがあること(プレスティア マルチマネークレジットは除く)
- 前月最終営業日の当行所定の時点でプレスティア マルチマネークレジットのお借入があること
- 前月25日(25日が土・日・祝休日の場合は前営業日)時点でSMBC信託銀行の提携クレジットカードの会員であること
- 外貨積立サービスの初回引落しがあった月の翌月以降、一定の積立がされていること
デビットカードの切り替えに手間&費用がかかる
GLOBAL PASSの種別を切り替える場合は、書面で行う必要があり、かつ再発行手数料1,100円がかかります。しかもその間はカードが使えなくなるので別の決済手段を用意しておく必要があります。
一度選択したら海外に居る間は切り替えを行わない!くらいの心構えが必要です。
もし切り替えを行う場合は、利用できない時間を考慮してバックアップを用意しておくと安心です。
筆者は初回発行時はANAマイレージクラブのGLOBAL PASSを選択しましたが、その後GLOBAL PASSに切り替えました。日本帰国中に行ったので不便はありませんでしたが、海外在住中だとちょっと面倒だと感じました。
デビットカードをApple Payに追加できない
2024年10月現在、GLOBAL PASSはApple Payに対応していません。
スマホの機能を利用して決済することができないため支払いの際には毎回カードを取り出す必要があり、その点を不便に感じる人がいるかもしれません。
大学院留学するなら「大学院留学サポートプログラム」が便利!
プログラムの概要と特典の内容
条件を満たす海外大学院への進学者向けに各種手数料の優遇を提供するサービス。店頭か郵送で申し込みができます。
- 国内のATM手数料無料
- 口座維持手数料無料
- 海外ATMオーナー手数料無料(ひと月当たり100回まで)
- 海外送金手数料無料
- 国内振込手数料割引
プログラムの対象
海外大学院(ビジネススクール、ロースクール、メディカルスクール)に進学する人。
大学院留学なら何でも良いというわけではなく大学院での専攻分野に縛りがありますが、奨学金にありがちな年齢制限などその他の条件はありません。
一見対象者に含まれていなくてもチャレンジしてみて!
対象の大学院には挙がっていない領域であっても、選択科目や学科のコンセプトに対象となる大学院としてカウントされる要素があれば利用できる可能性があります。
実際筆者の留学先はビジネススクール、ロースクール、メディカルスクールのどれにも当てはまりませんが、選択科目に対象大学院の内容が少しだけ含まれていたので、窓口で交渉することでプログラムの適用を受けることができるようになりました。
チャレンジする価値は十分にあるといえるでしょう。
説明が必要になるので郵送よりも店頭での申し込みがおすすめ!
詳細は公式ウェブサイトの該当ページからご確認ください!
まとめ
本記事ではSMBC信託銀行プレスティアを使っていて便利に感じた点と不便に感じた点をそれぞれご紹介しました。
多少のデメリットはあるものの、筆者にとっては無視できるレベルだったり他のサービスと組み合わせることである程度緩和できるため、個人的にはメリットが多いと感じているので現在も利用を続けている感じです。
筆者の場合は日本円による決済と海外利用や海外ATMでの現地通貨引き出しにはプレスティア、海外送金はwiseのような感じで使い分けています。
なお2024年8月現在プレスティアでは「紹介プログラム」を実施しています。
当ブログ限定の紹介者コード(02917192)を用いて新たに口座を開設し、かつ条件を満たす外貨定期預金を契約すると、紹介を受ける方は3万円相当または10万円相当のカタログギフトがもらえます。
駐在・留学の予定のある方は検討してみてはいかがでしょうか。
本記事が少しでも参考になりましたら幸いです。
以上です。
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