日本型雇用の転換で割を食う30代の生存戦略!社会人留学で感じた日本の問題点とこれからできること【JTCで10年以上働いた筆者が考える】

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日本の雇用環境は年々変化を遂げており、そのなかでも特に30代は賃金やキャリア形成の面で厳しい状況に置かれています。原因は世代間格差や社会情勢の変化など様々。

また、最近では解雇規制の議論もありスキルを重視する傾向が強まる中で、終身雇用の崩壊とあいまって会社主導のキャリア形成をある意味強いられてきた30代はより厳しい現実を突きつけられています。

そしてさらに気になるのが日本自体も国際社会で徐々に存在感を低下させていっていること。日本の国力低下は個人のキャリア形成にも大きく影響していくことは確実です。

スイスとフランスでの留学生活で、日本と世界とのギャップがますます開いていることを日々感じています。

本記事では、各世代の状況を整理し、特に30代が直面する問題を分析しつつ、具体的な解決策を提示します。

目次

日本型雇用と働き方改革の狭間で割を食う30代

まずは日本で30代が割を食う理由を世代間格差を軸に考察します。日本で世代間格差がここまで大きくなるのは、その時々の経済状況に加えて年齢に基づく日本型雇用にあると思います。

世代間格差が固定しやすい日本型雇用

日本型雇用はまだまだ新卒一括採用と終身雇用の組み合わせがスタンダード。途中で正社員になるのが難しい以上、そ就職のし易さは年齢(=生まれ年)によってほぼ決まります。最近はようやく転職が一般的になってきましたが、どの年に就職活動をする年齢になるかはいまだに最も重要なファクターです。

これはまさにロシアンルーレットのようなもので、欧米の雇用形態であれば生まれ年に関わらずスキルの有無で就職の可否が決まりますが、日本では自分が新卒一括採用のステージに上がるタイミング(多くの場合、就職活動を始める大学学部2年~3年)に経済状況が良いことを祈ることしかできません。

生まれ年や新卒一括採用に入る年齢なんて自分では当然コントロールできないので、例えば就職のタイミングで経済危機に当たって採用数が大幅に絞られてしまってもただ「運が悪いだけ」ということになってしまいます。

しかも現在問題になっている就職氷河期世代の場合、まだまだ転職が一般的ではなかったため、空きポストも生じません。つまり、就職活動時に経済状況が悪かった場合、後から正社員になって取り返すという選択肢を取るのも絶望的。

日本企業に採用してもらうという選択肢が厳しい以上、外資系に就職する、起業する、海外就職する、といった道を自分で見つけなければ非正規雇用まっしぐらに…。そして現在の状況になりました。

一方、その前や後の世代は相対的に新卒一括採用で採用されやすい状況でした。

生まれる年によってこんなにも環境が違い、しかも後から個人のスキルや経験を身につけるのが難しい環境に置かれたり、仮にスキルを身につけられたとしても、中途採用から正社員の枠が少ないために正社員になって取り返すという挽回方法を取るのも非常に難しい…。

これまでの日本型の雇用慣行は、ある意味「生まれ年ガチャ」とも言えるのではないでしょうか。

メンバーシップ型雇用の恩恵を享受して逃げ切れる40代の会社員

40代以上の世代(新卒一括採用で正規雇用にたどり着いた人たち)は、この「生まれ年ガチャ」がうまく機能した世代。彼らは新卒で入社し時間をかけて昇進・昇給してきたため、企業内での安定したポジションを持っています。

長年にわたり企業に忠誠を尽くしたため、役職を持っていなくても、最悪求められているパフォーマンスが挙げられていなくても、終身雇用や年功序列の制度の恩恵を享受することができています。

この世代は年功序列の名のもとに若いころに安く買いたたかれてきた労働力に対する補償を得ている状態のため、労者としてのパフォーマンスが高くなくてもそれなりの賃金が保証されているという状況ですね。

いわゆる「働かないおじさん」が大量発生するのは、良い悪いという問題というよりは、それだけ多くの人々が若い時間を会社に捧げてきたという事実を反映しているということです。

この世代の多くは企業内での信頼関係やネットワークを構築しています。特に管理職や役職に就いている層は仮に解雇規制の緩和が行われても、影響を受けることがほとんどないでしょう。おそらく年金もある程度はもらえますし。

いわゆる氷河期世代に当たってしまった世代にはメンバーシップ型雇用の恩恵が受けられない状況に置かれている人も多いので、この項目では40代以上の「会社員」としました。

ジョブ型雇用と解雇規制緩和の恩恵を受ける20代

「生まれ年ガチャ」と対極を成すのがいわゆる「ジョブ型雇用」。

まだ完全に移行はしていないものの、出生数の減少と人材不足を背景に若い労働力を買いたたく文化は少しずつ薄れてきており、部門別採用を行う日本企業も現れました。

そのため、20代はスキルを基にしてキャリアを築く新たな機会に恵まれています。

今の30代以降の世代が当然のものとして受け入れざるを得なかった「配属&異動ガチャ」を避けられる環境が整いつつあるのは良いことかもしれません。

特に、IT分野やデジタルマーケティング、データ分析などの専門性を持つ20代は、この流れの中で早期のキャリアアップや高収入を実現できるチャンスが広がっています。

また、多くの企業が初任給を引き上げており、若手社員は比較的高い賃金でのスタートが可能です。このため、スキルを持った20代は成果を上げることで迅速に評価され、転職市場でも引く手あまたとなっています。

また解雇規制が緩和されればパフォーマンス=給料という図式が完成し、いわゆる「働かないおじさん」問題が解決に向かう(40代以上の「働かないおじさん」は退職というかたちで逃げ切り、今の30代は解雇規制緩和によりローパフォーマーがクビになるので「働かないおじさん」になれない)ので、その意味でも気持ちよく働ける年代と言って良いでしょう。

スキルや能力を正当に認められる社会になるのは良いことだと思いますし、新卒一括採用の慣行が全て無くなるには時間がかかるので、当分はメンバーシップ型雇用によって企業による教育機会を得られる環境を選べるのも良い点といえるかもしれません。

完全なジョブ型に移行することがあれば若者は企業による教育がもはや期待できず、無給のインターンシップなどで職務経験を積むことになります。そのため20代でそこまで厳しくない「日本式ジョブ型」への転換時期を迎えられるのは非常にラッキーなことだと思います。

若い頃に買い叩かれ、これからも報われない30代

一方で、30代はこれらの世代の中で最も不利な状況に置かれています。

我々30代は若い頃に年功序列の制度の下で低い初任給で働き長時間労働を強いられた経験があります。その結果、30代になった現在も賃金が思うように上がらず、特に「働き方改革」や「成果主義」が進む中で、自分の市場価値を感じられない状況に苦しんでいるのです。

また、ジョブローテーションが行われる中で特定のスキルを深める機会が失われ、結果としてゼネラリストとして育てられることが一般的でした。しかもパワハラ&セクハラも多い旧態依然の劣悪な労働環境とセット。

部署を数年おきに転々としただけで市場価値の高い理想的なゼネラリストになれるはずもなく。単なる器用貧乏になっただけです。

このため、30代はキャリアの専門性をアピールすることが難しくなり、転職市場での競争力が低下しています。

また日本は世界的に見ても昇進年齢が遅いことで知られています。30代以降の転職ではマネジメント経験が求められますが、上がつっかえている状況ではそのような経験を積んでいる人材も少ないでしょう。

特に、企業が求める成果主義の評価システムにおいて、スキルを積み上げる機会が少なかった30代は、リストラのリスクにさらされやすい状況に置かれています。

日本型雇用の30代=スペシャリストと言うにはスキルが足りない。でもゼネラリストと言うには深さが足りない。つまりどっちつかずの人材。

賃金面でも、初任給が上昇している一方で、30代の賃金はそれに追いつかず、若手と中堅層の賃金差が縮まりつつあります。しかも年功序列が崩壊すると40代以上の会社員が享受できていたメリットも受けられなくなります。

このため、30代は「割を食っている」と感じることが多く、企業内での安定性が徐々に失われていく懸念があります。

留学で感じた日本の問題点

日本の労働市場や企業文化に関する問題は、欧米で留学生活を送っていると余計に認識させられます。

特に欧米との賃金格差、プロフェッショナリズムの違い、そしてキャリア形成のアプローチの違いなどの問題は留学生にとっては非常に身近なテーマ。これらの課題に対して、社会全体がどう変わっていくべきかについても考察していきます。

この話題はこちらの記事の内容にも関わってきます。

安すぎる日本の賃金と欧米の給与水準とのギャップ

日本の賃金が欧米に比べて著しく低いことは、多くの留学生が留学中に痛感する問題の一つ。

私費の社会人留学によるスキルアップはなかなか厳しい状況ですね。

成果主義が浸透している欧米では、若手社員であっても即座に高い給与が提供され、経験やスキルが正当に評価されます。一方で、日本では年功序列の影響で、若手社員の賃金は低く抑えられ、賃金の上昇も緩やかです。

日本と欧米の賃金格差は、日本で就職する場合はもちろん日本である程度働いても留学するだけの貯えを得るのが難しい(=奨学金に依存せざるを得ない状況になる)ことからも分かります。

欧米で数年働いた20代後半の若者がある程度の余裕資金を持っているのに対し、10年以上のキャリアがある日本人が留学先で金銭的に困窮するのはそのせい。

欧米では年齢によって割引が決まるので、一定以上の年齢になると割引は受けられません。日本の労働者が若いうちに賃金が極端に低く抑えられているという事情も当然ながら考慮されません。

若者限定の弱すぎる留学支援

留学支援制度が若者に偏っていることも日本の大きな問題点です。

欧米では社会人留学生に対する支援や奨学金制度が充実していますが、日本では留学後に新卒一括採用のシステムに乗ることが前提になっていることが多いため、主に学生や20代前半の若者向け。しかも返済が必要な貸与型も多いです。

30代以降の社会人留学生に対するサポートは非常に限られているため、いわゆるリスキリングのために留学するのは現実的な選択肢とはいえないのが現状です。

このため社会人が留学して新たなスキルを習得することが難しく、キャリア形成に制約がかかるケースが多いのです。

外国人留学生の国費留学がたびたび話題に上がるのも、もしかしたらこのような現状が原因のひとつかも。

以上は日本全体にいえる話ですが、この部分にも30代が損をする構造が存在しています。

例えば20代はスキルを磨くことで海外を選択肢に含めることができますし、初任給も現在の30代に比べて高いため留学資金が作りやすいといえます。

40代以上の会社員の場合も、もし留学がしたければ年功序列で高く据え置かれた給料と退職金を使えば留学資金を捻出することは難しくありません。

素人集団の日本企業vsプロフェッショナル集団の欧米企業

欧米企業では、各分野の専門家が集まりプロフェッショナル集団として組織が機能しています。

一方で、日本企業はゼネラリストを育成するジョブローテーションが一般的であり、結果として専門性が不足している「素人集団」になってしまいがち。

従順で組織に依存する社員を育成するのであれば理にかなっている制度なのですが、それで国際競争に勝てるかといえば話は別。これが企業の競争力低下を招き、国際市場での日本企業の地位が相対的に下がる要因となっています。

欧米のビジネススクールで組織論を勉強すると、日本の組織の特異さ(不透明な人事制度やプロが育ちにくい環境など)が分かります。

欧米ではマネジメント層に対する専門の教育があるため、管理職になるべき人物は方法論を学習しますが、日本では外部の知見をマネジメントに活かすことがあまりありません。

欧米式のビジネス教育が全ての解決策になるとは思いませんが、ビジネス手法を学ぶ機会の少なさも日本で人材をうまく活用できない一因になっているのではないでしょうか。

素直に喜べない?ケーススタディーに出てくる日本

海外のビジネススクールで取り上げられる日本企業の事例は、しばしば「問題のある例」として紹介されます。

終身雇用や意思決定の遅さなどがネガティブなポイントとして挙げられ、国際的な経営の基準から見た際に日本のシステムが非効率と見なされることが多いです。このような事例が日本の労働市場における根深い問題を示していると感じざるを得ません。

日本の企業文化がコミュニケーション様式の観点から「極端な例のひとつ」として紹介されることもありました。研究対象として面白いということですね。

語学力も存在感もない日本人留学生?

語学力や自己主張力の欠如が日本人留学生の弱点として指摘されることがあります。

欧米では議論や意見の交換が重要視される一方で、日本人留学生は自信を持って発言しない傾向があり、存在感を発揮しにくいと感じられます。これは日本国内の教育や企業文化の影響も大きく、積極的にリーダーシップを取る文化が育まれていないことが原因です。

また他のアジア各国からの留学生と比較すると、日本人留学生は非常に少ない印象を受けます。

教員の構成を考えても、ジュネーブやフランスでは中国人教授や韓国人教授には会いましたが、日本人教授は見たことがありません。

社会的な解決策

世代間の格差を少しでも減らしていくための根本的な解決策は、日本の労働環境を改善してブラック企業が存続できない日本をつくること。

そのために社会全体として考えるべき項目は以下のとおり。

個々人がスキルを磨き、交渉力を身につける機会を作る

まず第一に、日本社会全体が成果に基づいて個々の能力を正当に評価する体制を整えるべきです。

個々人がスキルを磨くための環境を整備し、企業がそのスキルを最大限に活用する仕組みを構築することで、社員のモチベーションや市場価値が向上します。政府や企業がスキルアップのための支援制度を拡充し、交渉力や自己主張を重視する文化を広める必要があります。

個人が競争力を高めることで会社への依存度合いが減り、会社が労働者(特に若者)を搾取することが難しくなります。

転職が当たり前の社会をつくる

日本社会においても、転職がキャリア形成の一環として当たり前と認識される環境を整える必要があります。

欧米諸国では、転職がキャリアアップのためのステップとして一般的であり、日本でもその風土を根付かせることで、労働市場の流動性を高めることができます。企業も柔軟な採用と評価体制を導入し、転職をポジティブに捉える文化を醸成すべきです。

転職が容易になれば人材の循環が起こり、労働者は常に複数の選択肢を検討することができるようになります。

優秀層がもっと海外で働ける土壌を作る

社会全体として日本の人材が海外で活躍できるような支援を強化することも必要です。

海外留学の奨学金や現地での就職支援を拡充し、優秀な人材がグローバル市場で評価されるような体制を整え、日本社会全体の競争力を向上させるべきです。語学教育も重要な要素です。

日本から優秀な人材が多く流出すれば、政府や企業に改善に向けたプレッシャーをかけることができます。

個人として選択可能な4つの選択肢

このような厳しい状況に直面する30代ですが、個人レベルでもできることも色々あります。

年功序列を既に廃止している日本企業への転職

年功序列が既に存在しない日本企業、特に成果主義を取り入れているベンチャー企業やIT企業への転職は、スキルを評価してくれる環境で働くチャンスです。

こうした企業では年齢や勤務年数に関わらず実力と成果が重視されるため、30代でもスキルを磨きながら高い評価を受けることができます。

副業を通じてスキルと収入を増やす

副業は賃金の停滞を補うための有効な手段です。

働き方改革により副業を解禁する企業が増えており、本業以外の収入源を持つことが可能です。特にデジタル分野での副業やフリーランスの仕事は、スキルアップと収入増加の両方を実現できるため、30代のキャリア形成に大いに役立ちます。

不動産やインデックス投資のような資産運用を通じて資産を防衛するのも有効。

外資系企業への転職

外資系企業への転職も30代がキャリアを再スタートさせるのに適した選択肢です。

外資系企業では、年齢や年功に関係なく、スキルと成果が評価されるため、特に若手と中堅層の賃金差が広がる中で、30代でも新しいキャリアを築くことができます。また、国際的な環境で働くことで、グローバルな視野を広げることも可能です。

大学院留学を経て現地就職する

最後の選択肢として、大学院での学びを経て海外での現地就職を目指すことも有効です。

特に専門性を高めたい分野や国際的なキャリアを築く場合、大学院での学びと海外での経験は、キャリアの大きな転換点となります。海外の企業では日本のような年功序列がなくスキルが重視されるため、30代でも自分の価値を高く評価される環境が整っています。

この選択肢は海外就職のための強力な手段ではありますが、日本企業への就職機会が著しく減少する可能性がある点には注意が必要です。

結論:日本人はキャリアオーナーシップを持って闘うべし!

解雇規制の緩和やジョブ型雇用の拡大は20代にとってスキルを磨きやすくキャリアアップの機会に恵まれる場面の拡大を意味しますが、一方で30代はこれまでのキャリア形成の遅れやスキル不足により、ますます厳しい立場に置かれています。

しかし、自分の市場価値を高めるために、転職や副業、留学といった柔軟な選択肢を活用すれば、30代でも新たなキャリアを切り開くことが可能です。

今こそリスクを恐れず行動を起こす時であり、未来のキャリアのために具体的なステップを踏み出す必要があります。

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