パリに限らず住宅事情が非常に厳しいフランス。
自前の大学寮を持っていたり優先して入居できるようなシステムを持っているような学校でない限り、家探しはかなり厳しい状況。
家賃も毎年かなり上がっているとのことです。
この記事では学生がフランスで家探しをする場合の注意点について(失敗談も含めて)筆者の体験をもとにご紹介します。
主に交換留学で来る方向けの体験談にはなりますが、フランスの住宅難の話なので正規留学で来る方にもある程度は参考になると思います。
フランスの大学院は専用の寮がない(場合が多い)
まずはフランスの高等教育機関の学生寮の状況を簡単にご紹介します。
独自の学生寮はない場合が多い
まずは地方にあるフランスの大学(院)の特徴として、大学が独自の寮を持っていることがあまりないことが挙げられます。
そのため、たとえ入学許可証を持っていたとしても学生寮への入寮は確約されることはなく、毎年一定の時期(新学期は始まる前)になると学生が一斉に学生用の住居やホテル、エアビーといった住居を探し始め、争奪戦の様相を呈することになります。
留学生の場合、フランスの住居の有無は学生ビザの申請にも関係するため死活問題。エアビーを住居が見つかるまでの繋ぎとして使う人はいますが、ビザを取得するための住所地としては使えない点に留意する必要があります。
なおパリの場合は「国際大学都市」という学生寮群があるので、探すのは比較的容易かもしれません。
フランスでは年齢によってはねられることはないみたいなので、そこは安心材料かも。
大学提携の仲介サービスが紹介してもらえる
とはいえ大学のサポートが全くないというわけではありません(もちろん大学によって親切さは違うかもしれませんが…)。
代表的なのは、学生向けに住宅探しやビザ申請などをサポートするサービスとの提携。
筆者が交換留学をしている大学が提携しているサービスは以下のとおり。
- LivinFrance
- Studapart
特定の大学の学生向けのページにアクセスすることができ、直接相談することもできる点が心強いです。
ただしそれで好条件の住居が見つかるかと言うと話は別。
提携大学の学生としてどの程度の優遇が受けられるのかは不透明なため、あくまで自分なりの相場観を持つことが大切です。
なかには相場よりも非常に高い値段の物件もあるので「大学と提携しているから大丈夫!」と全て任せっきりにしてしまうのは危険です。
学生寮を直接運営している団体もある
また上記のサービスのように物件の仲介を行うのではなく、Cruosのように学生寮を運営している団体もあります。
Crousの運営する学生寮は抽選方式で、毎年一定の期間に設けられる募集期間に申込を行い、当選すれば住むことができるというもの。
募集期間は通常毎年1月から5月の間に行われるようです。
交換留学生の場合、交換留学が本決定するまで待っているとタイムオーバーになってしまう場合があるので、決まっていなくても早め早めに動く必要があります。
筆者の部屋探し体験談
次に筆者の体験談をシェアします。
フランス・リヨンでの体験談です。
とにかく早く、とにかく多く動く!!
フランスの大学から受入許可証を受け取ったら、すぐに動き始めましょう!
特にCrousの締め切りは早いので受入許可証を受け取ってからすぐに応募プロセスに入らないと間に合いません。
交換留学が本決定でなかったとしても、住居探しの流れには乗りましょう!
筆者の場合は7月にならないと所属機関(ジュネーブ国際開発研究大学院)側の交換留学GOサインが出なかったため、その時期まで住居探しをしていませんでした。そして見事に乗り遅れる結果に。
先方の受入許可が出た段階(5月)に動き始めればCrousの寮に入れたかもしれません。
スイスの大学院が割と大変だったので、交換留学に必要な単位が取れるか分からないという不安もあったんですよね(言い訳)
そして、早さもさることながら行動量も重要なようで。
筆者の場合、数件のアプリケーションを出し、全てリジェクトされた段階で相場より高いところを選ぶことになりましたが、それでは甘かったみたいで。
大学で聞いたところ、物件の申込についてもある程度の数をこなすことが必要だそうです。
フランスでの物件探しは最近は特に厳しく、リジェクトは当たり前。最低でも数十件は申し込みのメールを送るのが普通なのだとか。
日本はもとよりスイスでもここまでのことをしたことがなかったので、かなりのカルチャーショックでした。
好条件は長期の賃貸が多い
学生用住居に関して言えば、専用のバスルームと専用のキッチンを備えた部屋はかなり少ないので、それこそ争奪戦になります。
一方でバスルームやキッチンを他の学生とシェアする物件については供給が少なくは無いものの、需要が多いのでやっぱり争奪戦になるとか。
そして好条件の学生用住居は長期貸し(9ヵ月~12ヵ月以上)が条件になっているところが多く、6ヵ月程度の期間しか滞在しない交換留学生はその時点ではねられてしまいます。
賃貸期間が短めなんですが…というメールを何度か送ってみましたが、全てお断りされました。やっぱり厳しい。
うかうかしていると、高額の物件や極端に条件の悪い物件ばかりになってしまうので、とにかく物件を確保!
フランスの保証人というハードル
大学が所有する寮やCrousのような寮を独自に運営している機関でない限り、基本的にフランス国内の保証人が必要になる場合が多いです。
保証人が求められる場合は、前述のプラットフォームに手数料を支払って保証人になってもらったり、保証会社に保証人をお願いすることになります。
プラットフォームや保証会社による保証を認めないパターンもあるので、各物件の条件をよく確認してください。
筆者の場合はStudapartに手数料を支払って保証をしてもらうことにしました。
住む場所が見つかれば御の字!諦めも重要
筆者のもう一つの敗因が、(フランスでの家探しという条件のもとでは)必須の事項が多すぎたこと。
筆者は専用バスルームと専用キッチン付きという条件で探していたのですが、色々と頑張って探してみた結果、この条件だと短期貸しでは基本的に1,000ユーロ以下の物件は見つからないと考えた方が良いという結論に達しました。
長期の賃貸であれワンチャン…?
リヨンの学生用住居の相場は大体400~800ユーロ程度らしいのですが、正直バスルームとキッチンを両方シェアにしてもその枠で収まる物件が見つかるかどうかは怪しいと思います。
契約内容の注意点
次に契約内容について注意すべき点をご紹介します。
筆者の自戒も込めた項目です。契約してから後悔しないように確認していってください。
事前に相場を確認。相場を上回る物件は考慮から外す!
基本的に大学側から「この都市の相場はこれくらい」という情報が提供されるはずなので、何度リジェクトされてもめげずに必ず範囲内で探すようにしましょう。
ビザの取得などの関係で早めに決めなければならないときも、焦って契約すると後で痛い目を見ます(筆者のように)。自分から高い物件を契約するのではなく、学校や仲介プラットフォームのサポートに相談しましょう。
リヨンの相場を考えると、1,000ユーロを超える物件はぼったくりに近い超高級物件!相場の範囲内で希望の物件が見つからない場合は、希望条件を再考するか学校などに相談すべきでした。
相場を上回る物件であっても良い物件とは限らないので、相場感覚にはシビアにいきましょう。
価格と質が釣り合わない(と日本人には感じられる)ことは、フランスでは普通です。
アロカシオンが利用できない物件に注意
フランスでは、住居を賃貸する場合に家賃補助を受けられるアロカシオン(APL, CAF)という制度があります。金額は条件によって異なりますが、外国人留学生も対象になるのでうまく利用すれば金銭的な負担を抑えることができます。これは物価の高いフランスでは嬉しい!
ただこのアロカシオンが契約によって利用不可になっている物件が存在します。
多少賃料が高い物件であってもアロカシオンを利用できれば多少お得に住むことが可能ですが、その手段が封じられてしまうのはかなり痛い!
アロカシオンの受給を申請したい場合は、契約前に必ずアロカシオンが利用可能か確認しましょう。
アロカシオンが認められない理由として、家主が住居として届けていない場合(家主起因)に対象外になる他、申請者が奨学金を受け取っている場合(テナント起因)にも認められないなど、色々な場合があるようです。
月額家賃?分割家賃?デポジットは?
住居の中には、毎月賃料を支払うパターン(月額賃料制)もあれば、全期間を何回かに分けて賃料を支払うパターン(分割払い制)もあります。
日本では後者のパターンは少ないですし、後者の場合でも月額賃料のように毎月支払い期日が設けられているパターンがあり、混乱しやすいです。
筆者はアパートメントホテルタイプの施設に居住。後者のパターンでした。
両者の違いは、月額賃料制は対応する居住期間(月単位が多い)に対してお金を支払い、分割払い制は居住期間全体のいくらかの割合に対してお金を払うという点。
月額賃料制の場合は毎月必ず支払いが必要ですが、分割払い制の場合は居住期間全体に相当する賃料を支払ってしまえばそれ以上支払う必要がなくなります。ただし、月額払いよりも多めの金額を先払いするため、中途解約をすると月額払いと比較して損をするシステム。
またデポジットが設けられているパターンもあれば、そうでないパターンもあります。
契約内容に記載されているので、契約時に必ず確認しましょう!
分割払い制の場合は中途解約が認められない契約内容になっている場合もあります。もし途中で契約を打ち切る場合は、月額賃料制よりも多めに賃料を支払っているため損をしやすくなります。
中途解約の規定についても要確認
また中途解約の規定にも注意が必要。通常であれば一定期間を空けて告知すれば契約を解除できるようですが、契約内容によっては中途解約が認められないことも。
契約するときには中途解約なんて考えられないかもしれませんが、万が一に備えて考えておきましょう!
契約時にはこのような条項について必ず確認し、必要に応じて削除や変更を求める必要がありそうです。(どこまで受け入れられるかは分かりませんが…)
表札が出せるか?も重要な要素
金額や賃貸期間といった事項と比較すると意外に盲点なのが、表札が自分の名前で出せるか?と言うこと。
これは銀行口座の開設や郵便物の受取の際に非常に大きな影響を及ぼします。
自分の名前の表札が出せなくても契約をしない方が良いということにはなりませんが、その場合はどうすれば確実に郵便物が受け取れるのかをしっかり確認しておく必要があります。
銀行のキャッシュカードやセキュリテ・ソシアルのカードなど、郵送で受け取ることになる重要書類は多いです。
まとめ
ここまでちょっと愚痴っぽくフランス・リヨンの住居探しについてご紹介しました。
まずは筆者の失敗から。
そして自省も込めて理想のスケジュールを以下に示しておきます。
時期 | イベント | 具体的な行動 | 希望条件をどうするか? |
---|---|---|---|
5月 | 受入許可証が出る | Crousの学生寮に応募する 並行して各種プラットフォームでも物件探し | 専用バスルーム&キッチンを死守 →条件に合う物件があれば確保する! |
6月 | 期末試験 | (もしCrousに外れたら) 各種プラットフォームで物件探し | 専用バスルームか専用キッチンを諦める →条件に合う物件があれば確保する! |
7月 | 交換留学が本決定 夏休み | (もしこの時点で物件が見つかっていないなら) 引き続き各種プラットフォームで物件探し | 専用バスルームと専用キッチンを両方諦める →条件に合わない物件でも900ユーロを切っていたら確保する! |
8月 | 夏休み | (もしこの時点で物件が見つかっていないなら) 引き続き各種プラットフォームで物件探し フランスに移動後エアビーに滞在しながら物件探し (もし物件が見つかっていたら) アロカシオンの申請 | 専用バスルームと専用キッチンと立地を諦める →予算重視でとにかく物件確保! |
ここまでやれば1,000ユーロを切る物件に住める…はず。
結論:フランスでの住居探しは戦略が全て。
現在もっと賃料の安いところに移れないか画策しているところです(難しそうですが…)。もし成功したらそのことも記事にしたいと思います。
フランスに交換留学に来る方が希望通りの物件に住めますように!
以上です。
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